第39話 続 畑作業…の前

わしは、いつものようにソファに寝転がりながら、満点堂SDでレトロな3DRPGをプレイしておったのだが。

そんな、わしのささやかな楽しみを長身の筋肉質の男、つまり瑛三郎が邪魔をしてきた。


「この前の畑の周囲に作った用水路なんだがな」


「なんじゃ」


「川の下流の方に作りすぎたみたいでな」

「全ての用水路に水が回らん事が判明した」


「ほぅ」


「だから、もう少し上流から引き込めるようにしたいと思っているのだが」


「ほぅ」


「もう、言いたいことは分かるよな」


「ほぅ」


「おい」


「ほぅ」


「………」


次の瞬間、わしはソファから体が浮き上がった。

やつ瑛三郎が体重を掛けてソファに腰を掛けたからだ。


「うおっ!?」


程なく、ぼふんとソファの元の場所に落ち着いたのだが、その時の勢いで満点堂DSの操作を誤ってしまった。


「はっ!?うぎゃあぁーーーーーーっ!」


もう少しで勝てるというところであったのだが間違った呪文を選んでしまった結果、捜索隊のパーティが地下9階で全滅してしまったのだ。


「何をしてくれるのじゃっ!」

「三日三晩、睡眠時間3時間で育て上げた捜索隊じゃというのにっ!」


どかっと座った瑛三郎の大腿部を、ソファに寝転がり足をバタバタさせながらポクポクと叩き非難した。

瑛三郎は自分に非があったと理解したのか、何も言わずに目を瞑って腕を組んでいるだけであった。

そんな中、部屋の入り口からキャリーの素っ頓狂な声が聞こえてきた。


「はわっ!?ニーニャさん!?」


わしは、その声に起き上がりキャリーの方に顔を向けた。


「おぉ、キャリー殿」

「どうしたんじゃ?顔が赤いぞ?」


「えっ!?あ、いえ…私の勘違いでした…」


キャリーは、頬を人差し指で掻きながら言う。


「ん?そうかや?まぁいい」

「それより、何か用かや?」


「あ、そうでした」

「昼食の用意がそろそろ出来ますので、ゲームを一旦終了して貰おうかと思いまして」


「うむ。ありがたいことじゃが、もう少し早く来て欲しかった」


「それは、どういう?」


「いや、いいんじゃ。全てはこの筋肉達磨瑛三郎が悪いんじゃ」


わしは親指で瑛三郎を差すが、瑛三郎は目を瞑ったままさっきと同じ格好であった。


「あぁ、先ほどのは…そういう…」


キャリーは、全てを察したようであった。


「ま…まぁ…ともかく、テーブルを拭いたりとかお願いしますね」


そう言って、そそくさとキャリーは去って行った。


「と、言うわけじゃ。用意するぞ」


「…あぁ…」


食事が届くまでの間、黙々と作業をするわしと瑛三郎であったが、作業が終わろうとした頃に小声で話しかけてきた。


「…すまん…」


「もう、ええわい」

「また、育てればええんじゃ」


「…うむ…そうか…すまん…」


それから、食事中をしたあと追加作業のため廃城へと向かっていったのじゃが、それはまたの機会にするかも知れんし、しないかも知れん。

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