第37話 畑を作りに行った
そういうわけで、わしらはかつてデーモンロードが暗躍していた廃城までやって来ている。
何でやって来ているか分からんだと?
お主、ちゃんとわしの物語を読んでおらんな?
いいから、最低でも34話の後半くらいは読んでくるが良い。
「おい、そんなメタな事をまた言って、ただでさえ読みに来てくれる人が少ないのに、その人まで逃げたらどうするんだ」
「お主も同じではないか」
そんな、わしらのやり取りをスルーして麟とキャリーは黙々と城の周囲の草刈りを行っていた。
「とにかくお前も手伝え、このぐうたらエルフ」
「わしは手伝わんと言うたのに、無理やり連れて来たのはお主じゃろ」
「いや、マジで手伝ってくれ…」
瑛三郎は、それはもう体中汗まみれでわしに懇願してきおった。
そんな目で見つめられたら、まるでわしが本当の駄目エルフみたいではないか。
いや、実際そうなんだが。
まぁ、しかし、奴がそう言うのも無理はなかった。
何せ、デーモンロードが居なくなったせいで、城を管理する者も居なくなり、そこいらじゅう一体が草で生い茂っているのじゃからの。
「仕方ないの」
わしは、よいしょっと立ち上がると、呪文を唱え始め(唱える必要ないけど)それを放った。
「エアーカッター!」
本来は、敵を攻撃する風属性魔法なのだが、こうやって草刈りのために利用する事も出来るのだ。
わしが、一番最初に覚えた魔法。
1万年ほど前に、家の周囲の草むしりを母様に言いつけられて困っていた時に、頭の中に思い浮かんだ魔法なのだ。
どうだ、すごかろう。
見る見るうちに草は刈られて行き、数分後には見えているところは全て刈り終えた。
「ついでじゃの。エアーストーム!」
この魔法は、結構後になってから頭の中に思い浮かんだ魔法。
これも本来は敵を複数攻撃出来るエアーカッターの上位魔法なのだが、刈り終えた草をかき集めることにも使う事の出来る、とても使い勝手のいい魔法なのだ。
ちょっとコツはいるがの。
「この辺でええかの」
そう言って、わしは周囲の草を一カ所に集めた。
そんなわしを、瑛三郎をはじめとして、麟とキャリーもポカーンとした顔をして眺めておった。
「凄いじゃないですか、ニーニアさん」
「流石、ニーニア様」
麟とキャリーはそう言って、わしを褒めたたえた。
「いやぁ、それほどでもあるんじゃがのぅ」
「どうじゃ、瑛三郎。お主も存分に褒めたたえてもええんじゃぞ?」
「む…確かに、お前のおかげで助かった…」
出来れば、わしの顔を見ながら言って欲しかったところだが、まあ良かろう。
ともかく、それ以後も川までの道のりと畑として使う平野を、この魔法でことごとく草を刈り取って行った。
「この大きな岩はどうしましょう」
キャリーは、畑として使う平野に唯一邪魔となる大岩を差して言う。
「俺が天空破斬改で粉々にして、小さな石に変えれば普通に移動出来るが…」
「数が多くなって面倒だが、仕方ないか」
「大丈夫じゃ。わしに任せい」
わしはそう言うと、再び呪文を唱え始め(再度言うが唱えなくてもいい)それを放った。
「アースゴーレム!」
その瞬間、周囲の土が見る見るうちに一カ所に固まって行き、それは出来上がった。
アースゴーレムは、その大岩を持ち上げると邪魔にならない端の方へ持っていき、そこへ置いた。
「まぁ、ついでに用水路も作っておくか」
「
この魔法は、本来床を沼のように柔らかくして敵をぬかるみで動きを封じたりするものなのじゃが、これで柔らかくなった箇所をアースゴーレムの大きな指で削っていく。
すると、どうじゃ、見事なまでの溝が出来上がったではないか。
この溝を、川から畑候補地までと、畑の周囲、区画の周囲に作っていく。
「ふぅ、こんなもんじゃろ」
「ご苦労じゃった、アースゴーレム」
「キャンセルマジック」
こうして、ゴーレムは再び土へと戻って行った。
そして、全ての下地が整った。
「本当に凄いですね、ニーニアさん」
「この本気を毎日見せてくれたら、どれほど楽になるか…」
「あははは…」
これで、わしの仕事は終わりじゃ。
「後の事は、お主らで自由にするがええ」
そう言って、後ろを振り向かず手を振りながら優雅に去ったわしは、馬車に戻って奴らが戻ってくるまで満天童SDでゲームを楽しんだのであった。
「うげっ…地下迷宮10階で全滅してもうた…」
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