第36話 雪王
と言うわけで、わし等は緊急集会という名目でMMORPGメガカオスオンラインRebootに最近実装された、氷の洞窟の最深部にいるボスに会いに行くことになった。
そして、全滅した。
「何なんですか、父様」
「父様の情報と全然違うじゃないですか」
「あれぇ、おかしいなぁ」
氷の洞窟に実装されたボスが
父様の情報では雪王大して強くないが8回復活し、復活の度に周囲に浮いている雪玉が一つ減るのと同時に
ところが、
「ともかく、父様のガセ情報は完全リセットじゃ」
「ニーニャ、酷い。父さん悲しいよ…」
父様の言葉は無視して、ネットで検索しようとしたのだが、既にキャリーがWikiの情報サイトを開いていたようで、それを読み始めた。
「雪王、属性氷、HP36万、攻撃力1800~3200、防御力3000、攻撃回数1秒間に1回、1分に1回の
「特に復活するようなことは書いていないようです。」
「私たちが戦った時と同じような内容ですね」
「ふむ、ありがとうなのじゃ、キャリー殿」
「ともかく、問題は凍らせる確率が80%という点だな」
「じゃのう。このゲームは状態異常の確率を減らす装備は存在せんから、属性攻撃で受けるダメージを減らす装備で固めるしかないか」
「まぁ、装備なら持っているが」
「ちなみに、父様は今何を装備しているのですか?」
「俺の装備を見たいと?見せてやろう。とくと見るがいい」
父様は、そう言って自らの装備を誰にでも見られる状態に設定を変更した。
「なになに…武器は両手剣の漆黒王の剣ユーグチェル(闇属性)、頭装備は漆黒王の兜(闇属性)、体装備は漆黒王の鎧(闇属性)、足装備は漆黒王の臑当(闇属性)、アクセサリー類は漆黒王の指輪(闇属性)…」
「どうだ、格好良いだろ?」
「………」
「母様、剣は炎属性、防具は全部氷属性耐性のものに変えて下さい」
「分かっているわ」
「ちょっ!おいっ!リリにティラミス、何をする、放せっ!」
「
ビデオ通話の画面に突如として二人が現れ、それぞれが父様の右腕と左腕を掴んで拘束し、その間に母様が父様のPCをいじって装備の変更を始めた。
「うぉーっ!やめろーっ!やめてー、ねぇ、お願い母さんっ!」
ビデオ通話でのやり取りはスルー。
「しかしながら、雪王の周りに浮いている雪玉は何なんでしょうね」
「ただ単に雪の王っぽくみせるためだけのものなんじゃないのか?」
「瑛三郎の言うとおりかも知れんな」
「でも、愛嬌が出て可愛いですよね」
「一応、
キャリーの胸に挟まって、お風呂に浸かっているかのようになっているリョク姉はそう言った。
「そうなのかや?」
「そうなんです。ニーニャ様は引きこもっておられたので一度も会っておられませんが、この世界に実在するボスなんですよね」
「ほぅ」
「リョクの言うとおり、実在するわ」
「だからと言って、ゲームで同じように実装するわけが無いのだけれど」
「…これで終わったわ。もういいわよ、リリ、ティラミス」
装備変更後の父様の装備を見ると、それはもう伝説級の装備でガチガチに固められていた。但し、中二病装備は存在しないのであるが。
「おぉ…俺の闇夜之眷属ル=シファの装備がぁ…」
そう言って泣いている父様をスルーして、わしらは再びボスと相まみえ、父様の騎士はボスを最前線で常に引き付け、ボスの通常攻撃の間だけ瑛三郎の侍と母様の暗殺者も攻撃に加わり、キャリーは父様に防御増幅、瑛三郎と母様には攻撃増幅をし続け、麟は父様の回復と物理攻撃を防ぐ盾を展開し続けていた。
ちなみに、わしは画面の隅っこで座ってボスが倒されるのを待っており、その間、現実の世界でぷてちをもっしゃもっしゃと食べながらキャリーの胸の中に浸っているリョク姉とおしゃべりを楽しんだ。
そして、雪王は倒されたのであるが、後になってこの雪王が【雪王の髪飾り】という装備品を落とすことを知った父様は、それから毎日のようにビデオ通話で土下座をして来て、わし等はその装備品が手に入るまでボス討伐に付き合わされたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます