第34話 ルーツ
リョク姉が口を滑らせてしまったので、この際、全てを話すことにした。
本来は、各本家の連中が継承するに値する人間であると認めた場合のみ先祖に関することを話すことになるのじゃが、まぁ、こやつらなら大丈夫じゃろう。
「なるほどな、ただの淫乱妖精じゃなかったのか」
「もう、瑛三郎さんは失礼ですね、ぷんぷん」
「話のとおり、瑛三郎さんが尊敬している
「少しは敬って下さいよぉ」
「確かにニーニア様がリョク姉、っていつも言われてますもんね」
「ですよー、こう見えて私の方が年上なんです」
控えめの胸を張りながら、リョク姉はそう言った。
「それにしても、私達の先祖があの伝説上の方々だったとは…確かに姓が同じでしたけど、彼女にあやかって名乗ったと聞いておりましたし」
というキャリーに対し。
「それに関しては、俺も驚いている。俺に至っては姓も違うからな」
「ニーニャが、魔王討伐の旅を始めた当時に空の上の人だと思っていたら、どうしようも無くぐうたらな奴だと知った時以上に驚いている」
「おい」
詩子の前だというのに、もう既に隠す気もないらしく、普通に呼び捨てに戻っていた。
「そうですね、僕も驚いています」
「しかし、だからこそ、ニーニア様の従者として選ばれたのでしょうね」
「正直、いち村民に過ぎない僕が何故選ばれたのか、と何度か考えたことがありましたし」
「そうだな。それは俺も考えた」
「そう言う事なら、全ては納得できる」
「まぁ、お主らが選ばれたのはそれもあるが、適正も含めて審査に合格した上でじゃぞ」
とまぁ、話が完全に反れてしまったな。
とりあえず、話を戻すことにしよう。
はて、なんだったっけ?
「和国に帰らなくても、ここでも完全に味を再現出来ますよってことですよ」
リョク姉は、それはもう完結に説明を行った。
「まぁ、こんな辺鄙なところで店を開いても、誰も来ないでしょうけどね」
と、余計な一言も忘れない。
「いえ、儲け等々は構いません」
「重要な事は味を守る、という事ですので」
「それに霧乃のお相手の方が、我々一族と所縁のある方というのも分かり、更に安心いたしました」
そう言って、詩子は麟の方をちらりと見た。
「それでは、私は準備もありますので、これにて失礼させて頂きます」
「もう帰るのかや?」
「一泊ぐらいしていけば良いものを」
「お心遣いだけで十分で御座います。久遠の賢姫様」
そう言うと、詩子は来た時同様、大兎の馬車に乗って颯爽と帰って行った。
「それで、私は引き続きここに居ても良いのでしょうか」
「ですよー。これで、心置きなく引き続き堪能出来ます」
そう言って、リョク姉がキャリーの胸を見ながら、互いに笑顔で話をしている。
「おい、もしかして…あの淫乱妖精…」
「みなまで言うな」
「じゃが、リョク姉のいう事は恐らく本当じゃ」
「わしは、遥か昔の事で味は全く覚えておらんが、リョク姉は全てを覚えておる」
「この地で不死身饅頭を作っていた、というのも事実じゃからの」
「でも、どうしましょう」
「材料となる小豆やもち米を作る場所とか」
「そうだな…あそこなんかどうだ?デーモンロードが居た廃城のあたり」
「あそこの近くに川が流れてただろ?」
「それに近くに村もあるしな」
「うむ、あそこの周囲一帯は王から土地貰った場所だしの」
「そこで作ってみるかの」
勿論、わしは作業をする気はないのだが。
その後、2か月ほどして、機材と共にとても鮮やかな朱色を基調とした立派な着物がキャリーの下に送られて来たのだった。
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