第30話 古のゲームをクリアした
「おおっ!やったぞ、とうとうマンティコアの仮面を手に入れたぞ」
「これで勝てるっ!」
「おい」
「さぁ、あとはラスボスを倒すだけじゃ」
「おい!今何時だと思ってるんだ」
「なんじゃあ、今いいとこなのに…」
振り向くまでも無いが、一応振り向くと瑛三郎であった。
わしは、何をしているかというと、前話をちゃんと読んでおれば分かるであろうが、
あえて教えてやろう。
前回、デーモンロードを倒したおまけの報酬で、知る人ぞ知る「エターナル=クリムゾン」というゲームを手に入れて、それをプレイしているのである。
1万年以上前にかつて存在したゲーム会社が作ったもので、一部の界隈ではその名が知られていたゲームである。
版権はとうの昔に切れているので、リメイクして再販されたのである。
以上、説明終わり。
「で、何の用じゃ」
「今、もう夜の2時なんだが」
「そのようじゃの。これからが本番じゃ」
「言っとくが、眠たいからと言って、今日の月見の準備しないとか言わせないからな」
「わしを誰だと思うておる。2日くらい寝なくても平気じゃ」
「ったく…」
瑛三郎は、そう言うとわしに背を向けて部屋を出て行った。
「なんじゃ、えらくあっさりと引き下がったの」
「まぁ、ええわい。それより続き続き」
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「くーっ!なんじゃ!相変わらず攻撃が当たりにくいし、当たってもダメージのブレ幅が大きかったり、全く、なんちゅうゲームじゃ」
と、文句を口にしながらも、あともう少しでクリア出来そうなので、今更止めるわけにもいかない。
「んー、ここまで当たらんという事は、レベルが足りないのかのぅ」
「もうちょいレベル上げするか…」
そういうわけで、最後のボスの城の近くでちまちまとレベル上げをしていたところ、再び背後から足音がしてきた。
その足音の主は、テーブルの上にコーヒーとぷてちを置いた。
「おぉ!気が利くではないか」
コントローラを置き、ぷてちの袋を開けると、もっしゃもっしゃと食いだした。
「それ、面白いのか?」
コーヒーをすすりながら瑛三郎は訊いてきた。
「ん、まぁ、そこそこじゃの」
「つか、リメイクするのはいいが、システム面くらい見直せ、と言いたい」
「攻撃が当たらなすぎる」
「ほぅ」
「興味があるならやってみい」
わしはそう言って、コントローラを瑛三郎に渡した。
それから、数分して。
「よく、こんなのを続けられたな」
と、言ってコントローラを置いた。
「酷いじゃろ。最悪10ターンお互いカスリもせんのじゃぞ」
「古の勇者たちは、これを我慢してゲームクリアしたらしい」
「父様も、その一人と自慢しておった」
「マジかよ…」
「らしい。んで、先日メールで1万年越しで再クリアしたぉ(*´▽`*)って来た」
「母様も今回初めてプレイしてクリアしたらしくての」
「え~wまーだクリア出来ていないのぉ?(´∀`*)ウフフ、っていうメールが来た」
その母様からのメールを見た瑛三郎は、なるほどな、と一言つぶやいた。
「と、いうわけで、今晩中にクリアするのじゃ」
わしは、食べ終えたぷてちの袋をくしゃくしゃと丸めてゴミ箱にポイっと投げると、再びコントローラを手にプレイを再開した。
そして、パーティのレベルを3上げたところで、ボスの城を探索し遂にボスとの戦闘が始まったのであった。
「くぅ!相変わらず攻撃が当たらん」
特に、主人公以外。
そして、大して何も出来ずに仲間2人は、あえなくボスに倒されてHP0となった。
だが、主人公だけは伝説の最強装備であったため、ボスの攻撃にも普通に耐えている。
そして、HPを削っていき、ついにボスを討ち果たしたのだった。
「ふぅ、ついにやったぞ!」
こうしてエンディングを迎え、無事にゲームクリアとなった。
「それにしても、なんじゃな」
「仲間…必要なかったの」
「それを言ってやるなよ…悲しくなるだろ」
「それは、ともかく、これでわしも古の勇者達に仲間入り出来たというわけじゃな」
こうして、ゲームクリアしたわしは、父様と母様にエンディングの画像付きでメールを送り、満面の笑みを浮かべながら布団に入ったのであった。
そして、次に目が覚めた時には、何故か馬車の中だった。
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