第24話 クーラーが手に入った
ジェンヌの街に着いたわしらは、早速ボッタクルゾン…ではなく、ギルドへと立ち寄った。
まぁ、理由は言うまでもなく、山賊らの引き渡しである。
どうやら、移動中に瑛三郎が何やら取引を持ち掛けていたらしく、他の山賊の仲間の居る場所をギルドにあっさり白状しておった。
そして、ボッタクルゾンに行く途中。
「あ奴らと何の取引をしたんじゃ?」
「いや、なに。あいつらの命を保証する代わりに、罪を償ってこいって言っただけだ」
「一応、ここの王には顔が利くしな」
「成程の」
魔王を倒した功績が、このようなところで役に立とうとは。
「まぁ、元々は奴らも根っこが悪いわけでも無さそうだしな」
と、瑛三郎は付け加えた。
確かに、その気なら、わしらを殺しに来るだろうしの。
最も、そうだった場合、逆に奴らの命はとうに尽きておるのだが。
そうこうしているうちに、ボッタクルゾンの店舗に到着した。
「ゆん姉はおるかや」
扉を開けて早々に、わしはそう声を張り上げた。
「はいはーい」
と、軽快に現れたのは、ゆん姉…ではなく、ゆん姉の娘である
娘と言っても、彼女もわしほどではないが相当な年齢である。
「あ、ニーニャさん。話は母から聞いてますよー」
「どぞどぞ、こちらにー」
そう言って、店の一角にある、くつろぎスペースに案内された。
「あ、飲み物用意しますねー。くつろいで待ってて下さい」
そういうと、店の奥に消えていく。
わしと瑛三郎は、向かい合うように座った。
店舗は、相変わらずこじんまりとしており、とても世界に股を掛ける大手のネットショップには見えない。
「どうやって、品物を用意してるんだろうな」
事情を知らない瑛三郎は、そう言った。
「さての。一応、企業秘密らしいから、わしは黙秘するわい」
「その口ぶりだと、何か知ってるだろうが、まぁ、企業秘密なら仕方ないか」
腕を組み、背中を椅子にもたれかけた瑛三郎は、そう言った。
「お待たせしましたー」
そう言って、お盆に紅茶と大皿一杯にクッキーを乗せて彼女は現れて、テーブルの上に置いていく。
「それはそうと、ゆん姉はどうしたんじゃ?」
「あー、それがですね。ニーニャさんが来られる直前にギルドから連絡がありまして、そちらの方に行っちゃったんですよ」
「あー」
と、わしと瑛三郎は、同じ言葉を同時に放った。
「え?何か知ってるんですか?」
わしは、ここに来るまでの経緯を凛凛に説明した。
「あー、そうだったんですね」
「でも、こちらとしても助かりましたよ」
どうやら、わしらが購入していたクーラーもそうだが、最近、よくボッタクルゾンの購入者から商品が届かないという苦情が相次いでいたらしい。
「これで、安心して商品が送れます」
「そういうわけで、今回は特別に【ひんやり風送君】をもう一台提供させていただきます」
「え?いや、一応お母さんに聞かなくていいのか?」
と、瑛三郎はそう言った。
「あ、そか。えーっと…あの…その…ですね」
急に凛凛が手をわきわきさせながら、しどろもどろになったので、わしは助け船を出すことにした。
「瑛三郎。これも企業秘密というやつじゃ」
「なるほど」
瑛三郎は、あっさりと納得した。
ふむ、これもわしの年の功のなせる業か。
「ともかく、助かるわい」
そう言って、凛凛に感謝の意を伝え、紅茶とクッキーを美味しく頂いたあと、【ひんやり風送君】二台を荷台に載せて、一旦ギルドに向かい、ゆん姉と会ったあと帰路に就いたのだった。
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