第23話 山賊が現れた。どうする?

山賊たちは、連携が良く取れており、あっという間に馬車を囲んだ。

正直、瑛三郎は知らんぷりして轢いてしまうのではないか、と思ったが、流石に馬車を止めたようだ。

まさか、まだ魔王城の近くだから止めたのではないだろう。

そう思う事にした。


「二人だけで良いんだよな?さ、降りてきな」


恐らく、山賊の頭なのだろう。

男は、そう言って馬車から降りるように促してきおった。

とりあえず、従って降りることにする。

何気に瑛三郎がわしの前に立ち、後ろに居れと言わんばかりに左腕を後ろにやって、わしを囲った。


「安心しな、お前の娘には手は出さねぇよ」

「俺たちは、ガキには優しい山賊だからな」


いや、優しい奴は、そもそも山賊などせんだろ。

と、心の中で思った。


「言うとくが、わしはお主達の数百倍は生きておるぞ」


そう言って、頭にかぶっていたフードを脱いだ。


「エルフだ!エルフだぞっ!」


と、周囲の声が聞こえる。


「ほぉ、年齢は知らんが、中々の美少女じゃねーか」


山賊の頭はそう言った。

おう、もっと言っても良いんじゃぞ。

なんせ、瑛三郎こやつは、そういうこと全然言わんからな。


「確かに見てくれは良いが、ロリババァな上に、働きもしないし偉そうだし、で良いところは、そこしかない」


おい、余計なこと言うでない。


「へっ、その割に大事に守ろうとしてるじゃねーか」

「まぁいい。そんな事より、とりあえず、有り金全部と馬車を置いていきな」

「そしたら、命は助けてやるよ」

「なんて、俺たちは良い山賊なんだ」


山賊の頭の言葉に、他の仲間が全員大声で笑う。

しかし、山賊たちは知らないのだ。

そう、瑛三郎こやつが魔王を打ち倒した者の一人である、ということを。

そんなことを思っているうちに、瑛三郎は剣を抜いた。


「お?お姫様を守る勇者様がやる気になったか?がはははははは」


山賊たちは引き続き大声で笑う。

おい、お前らもうその辺でやめておけ、死ぬぞ。


「分かっておるだろうが、殺すでないぞ?」


瑛三郎にだけ聞こえるように、小声でそう言った。


「分かっている」

「ここは、まだ魔王城の近くだからな。後始末が面倒だ」


やっぱり、それが馬車を止めた原因か。

まぁ、山賊達こやつら、現れたのが魔王城の近くで良かったな。

少なくとも命は助かったぞ。有難く思うが良い。

そうこう、わしが考えているうちに、山賊の頭以外が全て打ちのめされていた。


「な、なんだ!お前はっ!」


「あー…最初に言うてなかったが、瑛三郎こやつは魔王を打ち倒したパーティの一人じゃぞ?」

「お主らが敵うはずもあるまい」


「な…ん…だとっ…」


山賊の頭は両ひざを地に付け、持っていた剣を捨てた。

こうして、山賊達を全員捕縛した瑛三郎は、山賊が乗って来た馬車に放り込む。


「ニーニャ、馬車の運転は出来たよな?」


「安心せい。わしは基本的に全ての事は大抵出来るからの」


そう言って、わしらの馬車はわしが、山賊達を乗せた山賊の馬車は瑛三郎が運転をして、再び街へと走り出したのだった。

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