第22話 あつーい、クーラーもう一台

7月になると、流石に暑さも厳しくなってきおった。

しかし、それは城の外での話であり、城の中はひんやりと気持ちがいい。


「ニーニャ、流石にそれはどうかと思うぞ」


そう言う瑛三郎を無視して、わしは壁を大の字で抱きながら、そのひんやりとした感触を楽しんでいた。


「あぁ…気持ちええわい」


「ただいまです。わっ!」


そう言って驚いたのは、中庭の菜園スペースでの作業を終えて帰って来た麟であった。


「どうしたんですか?麟さん、えっ!?何してるんですか?ニーニアさん」


麟に続いて程なく入って来たキャリーは、そう言った。


「ニーニャ様、相変わらずですねぇ」


これはリョク姉。


「気にするでない。ただ、涼んでおるだけじゃ」

「それにしても、【ひんやり風送君】は何時になったら届くんじゃ」


そう、これから暑くなることは想定済みであったため、移動式クーラーの【ひんやり風送君】を ボッタクルゾン で購入手続きをしたのだが、2週間たった今もまだ来てなかった。


「そろそろ連絡入れた方が良いかもな」


そう言う瑛三郎に、今度はわしも同意して、ノートパソコンからゆん姉に連絡を入れた。

連絡を入れて間もなく、音声チャットが届いた。


「はいはーい、こちらボッタクルゾンのサポート担当ゆんゆんでーっす」


「もしもし、ゆん姉かや?」


「あ、ニーニャさん、いつもありがとうございますぅ」

「今日はどういったご用件ですか?」


「いやの、2週間前に購入した【ひんやり風送君】がまだ来んのじゃ」

「予定では1週間前に届いておるはずなのじゃがの」


「え!?本当ですか!?ちょっと待って下さいねー」

「えーっと…あれ?もう配達済みになってますよ?」


「なんじゃと!?そんなはずはないぞ」

「誰か、受け取ったかの?」


わしは、一応念のために全員に訊いたが、誰も受け取っていないという。


「じゃあ、もうちょっと待って下さいね。受け取りサイン見ますので」

「ほぅほぅ…あ…これは…」


「どうしたんじゃ、ゆん姉」


「いやぁ…これ、サインが誰のものでもないですねぇ」

「そちらに今おられるのは、ニーニャさん、瑛三郎さん、麟さん、リョクさん、キャリーさんだけで間違いないですかね?」


「うむ。間違いない…というか、なんでゆん姉はキャリー殿の事を知っておるんじゃ」


「やだなぁ、私、元上司ですよ?外注とは言え、契約を結んだ人の事は全部知ってますよ」


キャリーの方に視線を向けたが、手を左右に振って言ってませんというジェスチャーをしていた。

という事は…リョク姉じゃの。

リョク姉に視線を向けると、一瞬だけビクッとした直後視線を逸らした。

分かりやすい。


「まぁ、ともかく。キャリーさんの後に契約した人がやっちゃった可能性大なので、お店まで直接受け取りに来てもらえませんかね」


「別に良いぞ」


「じゃあ、そう言う事で、宜しくお願いします」


ぷちっ。


「というわけじゃ、【ひんやり風送君】を取りに行くぞ」

「一応、麟とキャリー殿は念のため城に残っておいてくれ」


「分かりました」


「行ってらっしゃいませ」


こうして、わしと瑛三郎とリョク姉の三人で、ジェンヌの街に向かったのだった。

そして、移動後間もなく10人の山賊に出くわしたのだった。

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