第21話 新しいものに限る

わしと瑛三郎が固まっている間に、麟達が戻って来た。


「あれ?どうしたんですか?お二人とも」


麟は、てっきりソファでテレビでも見ながらくつろいでいるであろうと思ったのだろう。首を傾げていた。


「麟…これ…」


「ニーニャ様、どうしたんですか?あれ?これって」


「これは、OSのサポート終了ですね」


と、麟の後ろから見ていたキャリーが付け加えた。

麟は、持って来ていたお盆をソファの方にあるテーブルの上に置いた後、自分のパソコンの方を見に行き、そして溜息を吐いた。


「僕のも駄目ですね…」


「はっ!?まさか、わしのも?」


わしは自分のパソコンに駆け寄り、システム設定画面を開くと、案の定、わしのもサポートが切れていた。


「あちゃあ、これは駄目ですねぇ」


画面を覗き見ていたリョクは、そう言った。


「そうじゃ、キャリーはどうじゃ?」


「あ…私は、去年買い替えたばかりなので…」


と、左手の人差し指で頬を掻きながら、申し訳なさそうな顔をした。


「そういえば、わしがこれを購入したのは7年くらい前じゃった」


「俺もそのくらいだ」


「僕のはもう10年くらいになりますね…」


「よし!とりあえず、新しいOSを買うぞ」


わしはそう言って、右手に拳を作り天に突き上げた。


「あ、ニーニアさん、待って下さい」


「どうしたんじゃ、キャリー殿」


「えっとですね。新しいOSを入れるための最小スペックがですね、結構シビアになってしまってまして」

「恐らく、ニーニアさん達のパソコンは満たさないんじゃないかと…」

「私も、それで買い替えたくらいですし」


「そうなんですか?キャリーさん」


「ええ。でも一応確認してからでも遅くはないと思います」


キャリーは、そう言うと自分のパソコンからOSを出しているMegasoftのウェブページを開いて、そこから更に現在の最新OS、MadowsDT 11のページを開いた。


「えっと、ここに条件を満たしたパソコンかどうか調べるソフトがありますので、これをダウンロードっと…」

「ニーニアさん達にメールで送りましたので確認してみて下さい」


わし等は、早速キャリーから送られてきたソフトで調べてみて、そして全員落胆したのだった。


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「さて、これから会議を始めるのじゃ」


既に冷めていた珈琲を温め直して、ホカホカの珈琲を前にわしは高らかに宣言した。


「会議っつっても、ただ新しいパソコンを購入するだけだろ」


ソファの肘掛けに肘を付いて、足を組みながらだらけている瑛三郎はそう言った。


「知れ者が。これだからニワカは駄目なんじゃ」


わしは、瑛三郎に指を差してそう言う。


「さいですか。好きにしてくれ」


「おぅ。好きにするぞ」

「ところで、キャリー殿はどんなスペックなんじゃ?」


「おい、人を知れ者だとかニワカ呼ばわりしておいて、真っ先に人に聞くのかよ」


「まぁまぁ。キャリーさんは去年購入されたようですし」


「そうですねぇ。一応、私が購入したのは…」


要約すると、キャリーが購入したパソコンは、それはもう高スペックで値段もかなり高いものであった。

70万エルという、意味不明な値段であった。


「あ…う…」


「これは参考にならんな」


「そうですね…流石に」


「キャリーさん、後で触らせて貰っていいですか?」


というのが、わしらのキャリーのパソコンのスペックを聞いての反応である。


「…まぁ、とにかく、20万エルくらいのを後で皆で探そうかの」


「だな。メーカーはどうする?」


「わしはMECじゃな。お主たちはどうする?」


「僕はOSと同じMegasoftにします」


「俺はそうだなぁ…Ringoにしようかな」


「お、なんじゃ?顔に似合わずミーハーかや?」


わしは若気た顔をしながら、瑛三郎を指差した。


「あ、瑛三郎さん。Ringoは今、MadowsOSが動く機種は製造してないんですよ」


「え?そうなんですか?残念ですね」


「やーい、やーい、ミーハー気取りの瑛三郎さーん。残念でしたー」


「うーん…だとすればVanasonicにするかな」


わしの煽りを受け流して、瑛三郎はそう言った。


「そう言えば、キャリーさんってどこのメーカーの製品なんですか?」


ふと疑問に思ったのか、麟がキャリーに尋ねる。


「あ、私のは自作なので」


わし等は、目を輝かせているリョクを除いて、全員あんぐりとさせていた。

まさしく、キャリーは本物のつわものであった。

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