第20話 えらいこっちゃ

さらに1週間後の6月下旬。

もう恒例行事となったメガカオス・オンライン週末狩集会。


「いやぁ。流石にバフ持ちが居ると狩が捗るなぁ」

「霧乃ちゃん、サマサマだよ」


父様はそう言った。


ちなみに、今回からチャットでの会話ではなく、ボイスチャットを採用している。

そうそう、霧乃というのはキャリーの本名である。ちなみに、姓は宇佐うさと言うらしく、それを知った父様と母様は非常に喜んでいた。


「いえいえ、まだまだですよ」


そう言ってキャリーは謙遜した。


「ともかく、これからも頼むよ」

「なんせ、俺たちには今までそういった職種が全く居なかったからなぁ」

「踊り子も良いけど、舞闘家も中々いいねぇ」

「狩りの途中で見かけることは何度もあるけど、いやぁ、やはり近くに居てると尚良い」


「そうですね。見すぼらしい暗殺者なんて選んでごめんなさいね。お父さん」


「ひっ!」


わし等には全く見えないが、恐らくはこれから実家では修羅場が待っていそうであった。


「じゃあ、わしらはこれで失礼させていただきます。父様、母様」


「えっ!?あ、待って!ニーニャ。父さんを見捨てないで!」


「はい、それでは、体に気を付けて生活するのですよ。皆さんも、来週もよろしくお願い致しますね」


わしと皆は、母にそれぞれお別れの挨拶を交わす。


「それでは、ごきげんよう」


そう言って、母様はログアウト、父様も程なく同様となった。


「良いのですか?ニーニアさん」


心配そうにキャリーが訊いてきたが、そもそも近くに居ないしどうしようもないので「大丈夫、大丈夫じゃ。多分」とだけ答えた。

どうせ、最終的にはイチャコラが始まるだけなのだから。


「さて、今日も堪能したし、そろそろお開きとするかのぅ」


「それじゃあ、僕は飲み物と何かお菓子でも持ってきますね」


「あ、私も行きます」


そう言って、麟とキャリーの二人は席を立ち台所へと向かい、更に小さなこぶつきリョクが付いて行き、この場には、わしと瑛三郎の二人だけとなった。


「そういえば、お主、今日もえらい大人しかったのぅ」

「集会の時はいつもそうじゃが」


「いや、大人しくしてるわけじゃなくて、俺が倒す前にお前の母親が倒してしまうんんだよ」


「あー…なるほどのぅ」

「ああ見えて、戦闘になると狂人化するからのぅ」

「現世でも、元々は忍者であったしの」


「そうなのか?」


「うむ。じゃが、さらに元を辿れば運動音痴だったらしいぞ」

「階段で少しつまづいただけで、骨折するくらい盛大にこけたらしいからの」

「他にも50mも走れなかったり、泳ぎで息継ぎが出来なかったり、とにかく、あらゆる運動が苦手じゃったらしい」


「むしろ、そっちの方がしっくりくるな」


「じゃな。じゃが、父様のために200年練習を積み重ねて父様と同レベルになるまでになって、更に1万年経って今では恐ろしいくらいの戦闘狂になったんじゃ」


「なるほどな」


「というわけじゃから、間違っても母様を怒らせるでないぞ」


「怒らせてるのは、大抵お前とお前の父親だけどな」


「確かにそうじゃった」


わしはそう言ってカラカラと笑った。


「ん?」


「どうした、瑛三郎」


「いや、俺のパソコン、危険な状態だとか表示された」


「何じゃとっ!」


わしは、瑛三郎の方に向かって、その画面を見た。


「パソコンのOSのセキュリティが最新じゃないんじゃろ」


そう言って、瑛三郎のマウスを手にして、システムの設定画面を開き、更新ボタンを押した時、わしらはそれに気付いた。

OSのサポートが終了していることに。

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