第16話 縁その1
「うーむ…こうも雨が続いては憂鬱じゃのう」
わしは、居間にある窓に両肘を付け、両の掌の上に顎を乗せながら言った。
今週に入ってから、ずっと雨は降っている。
とは言っても、ざぁざぁと降り注いで雷がしきりに鳴っているわけではなく、小雨が延々と続いているだけなのだが。
「俺は、結構この梅雨は悪くないと思っているのだがな」
そう言って、何時ものようにわしの傍まで来て壁に体をもたれている瑛三郎は、わしと真逆に雨を季節を味わう風流なものだと言った。
「そりゃあ、お主はせいぜい20数年足らずじゃからの」
「わしなど、既に1万年以上も見てきたからの。もう飽きたわい」
「言っても、お前は何千年も家に引きこもってたんだろ?」
「そっちの方が飽きそうなものだがな」
「分かっとらんのぅ。家にはゲームという娯楽があるから、飽きぬのじゃ」
「もし、今やっているゲームに飽きたとしても、別のゲームがある」
「そんなもんかね」
「そういうもんじゃ」
そんな他愛もない事を二人で話をしていると、檸檬の良い匂いが漂ってきた。
麟が温めたレモネードを持ってきたからだ。
麟の隣には、既にそのレモネードを両手に持ちながら楽しんでいるリョクが飛んでいた。
「どうですか?お二人とも」
レモネードを乗せたお盆を、わしらに向けて差し出してきた。
「おぉ!済まぬな麟」
「ありがたい」
既にある程度温かくなっていたが、流石に雨が続くと気温も下がって来ていた。
そこに温かいレモネード。
そして、四人でほっこりしながら、外の梅雨を眺める。
「そう言えば、ちょっと前に頼んだ荷物が出荷になっておったな」
「悪い事をしたのぅ」
わしがそう言っていると、街の方角の道から何やらやって来てくるのが分かった。
「どうやら、その荷物とやらが届くみたいだぞ」
「ねぇねぇ瑛三郎さん、あのおっぱいの大きい人ですかぁ?」
「…まぁな。というか、いい加減名前で呼んでやれよ」
「本人の前では言いませんから安心して下さい」
「ともかく、行くとしよう」
わしは、カートを引きながら城の外へと足を運び、何時ものように二人も付いてきた。
城の外まで来た時には、彼女、キャリー・キラーラビットもちょうど間近までやって来ていて、程なく止まった。
いつもの最終破壊兵器並みの胸の膨らみを上下に揺らせながら、彼女は降りて荷物を取りに荷兎車の後ろに回り込む。
瑛三郎と麟は、荷物を引き取るために手伝いに彼女の傍に寄っていった。
「いつもありがとうございます」
彼女はそう言うと、荷物を瑛三郎と麟に手渡した。
二人は、わしが持って来ていて雨の当たらない場所に置いていたカートにそれを乗せる。
「それよりお主どうしたんじゃ?びしょ濡れではないか」
彼女はフードもかぶっていたが、顔も含めて雨に濡れていた…というか泥交じりであった。
「いえ、ちょっと同業者の馬車と交差した時に跳ねた雨水が当たっちゃいまして」
照れながら彼女はそう言った。
「時間は大丈夫か?」
わしがそう言うと、彼女はここが一番最後だという。
「なら、風呂に入っていくがよい。ついでにそれらも洗って乾かすと良い」
「え、いえ、悪いですし」
「遠慮するでない。年上の言う事は聞くもんじゃ」
「はい、それでしたらお言葉に甘えて」
「麟よ。お主は先に風呂の準備をしておれ」
「瑛三郎は、兎も濡れておるから洗って、たき火の所で温めさせてやるが良い」
「承知しました」
「了解」
二人はそう言うと、それぞれ自分の仕事に走って取り掛かる。
「じゃあ、わしに付いて来るがいい」
そう言って、カートを持ちながら彼女の案内を始めた。
リョクは、彼女の胸に秘めている最終破壊兵器をまじまじと見ているが、既に慣れてしまったのか気にしていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます