第9話 これは凄い ※下ネタあり

「お、来た来た」


「そのようだな」


今、わしは瑛三郎と二人で窓の外の様子を見ているところだ。

城の外では麟が待機しており、ジェンヌへと続く道の先に土煙が丁度見え始めたところだった。


「瑛三郎…あれ…」


「あぁ…うさ…ぎ…なのか?」


わし等はてっきり馬車で来たのかと思っていたが、荷車を引いているのは兎であった。

兎と言っても、馬ほどの大きさのある兎であるし、人力車の車夫しゃふように走っていた。

しかも、馬より速かった。

程なく麟のところまでやってきたが、麟自体はそれに驚いた様子は無かった。

そして、降りて来た配達員もこれまた凄かった。

動くたびに胸の部分がたぷんたぷんと、それはもう別の生き物がそこにいるのではないかと思うほどに。


「おおっ!なんじゃ、あの【ぼっきゅんぼん】な配達員は!?」


「あぁ、凄いな。あれほどの人は俺も初めて見る」


真っ白なTシャツにデニム生地のハーフのズボンで、体形が良く分かる。


「ん?なんか配達員の人が胸を隠すようなしぐさをしたぞ。どうしたんじゃ?」


「お前のところの淫乱妖精がちょっかいを掛けてるんだよ」


「あぁ…なるほどの」

「しかし、この位置から良く見えるのぅ」


「俺の視力は5あるからな」


「マジかっ!初耳じゃぞ」


「今まで言ったことないしな。そのくらい無いと剣士職なんてやってられん」


「成程の。わしなんて、そのうち眼鏡を買わねばと思うておるくらいなのにのぅ」


そう言いながら、望遠鏡を取り出して見る。


「確かにリョク姉がちょっかいかけとるわ」

「大方、助兵衛な事言って困らせとるんじゃろ」

「次から来んようにならんと良いのじゃが」


そんなことを言っているうちに受け取りが完了し、配達員は逃げるように去っていった(ように見えた)

その直後、麟がこちらを振り向いて手を振って来た。


「ただいま、戻りましたー」という麟に対し。


「いやぁ、凄い物を堪能させていただきましたー」というリョク。


「えっと…この箱は重いので、恐らく饅頭と僕達が希望したお菓子が入っていると思います」

「で…この残りの二箱は比較的軽いのでニーニア様の大好きなぷてちじゃないかと思います」


麟はそう説明しながら箱を荷台から下す。


「うむ、ご苦労様なのじゃ」


早速開けてみると、麟の言うとおりであった。


「じゃあ、このひわい饅頭だけ取って…っと」


わしはひわい饅頭の箱を、自分のぷてちの箱の上に置く。


「どうする?自分の部屋に持っていくかいの?」


「いや、俺は一箱でいい」

「残りはここに置いておけばいいんじゃないのか。好きな時にみんなで食えばいい」


「僕もそう思います」


そう言って、二人は一箱ずつ手に持った。


「本当に欲の無い奴らじゃの」


わしは両手を腰にやって、少し呆れまじりに鼻息を漏らした。


「とりあえず、お茶にしませんかぁ」とリョクが言い。


「じゃあ、僕が淹れてきますね」と麟が食堂へ向かった。


その後、送られてきたお菓子と共に美味しくいただいたのであった。



------ 「え…っと…賞味期限…3年後か」

------ 「賞味期限までに食べられるといいが…」

------ 「食べる…っ!」

------ 「あ、強く叩きすぎて鼻血が出た…」

------ 「あの、淫乱妖精のおかげで変な想像してしまったじゃねーか」

------ 「ったく…」

------ 「…成程…だからあいつは耐性が出来たのか」

------ 「俺も耐性を付けなければな」

------ 「…何アホな事言ってるんだ…寝よ寝よ」

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