第4話リアルで知り合いだった、そして父は息子の意外な一面を知る

ピン!と言う音が頭に響き、目の前にウインドウが出て来て、運営から今月のイベント衣装が表示された。


ログアウト出来ないのに、こっちからは連絡も取れないのに今月のイベント衣装等は一方的に来る。


バレンタインが近いから、空を飛ぶハートを虫取り網でゲットして合計1000個で可愛い系衣装が来る。


内訳は250個毎に背中アクセ、衣装を好きな色にチェンジできるグッズ、衣装1種類目、2種類目だ。


「こ…これは!」


「ほしい!」


ガタッと、座っていた椅子から立ち上がる僕とヨミ兄とウィーくんとユイくん。


羽の付いたハートを持ったうさちゃんのリュック、カラチェングッズ、ショコラカラーのロリータ衣装一種類目はジャンスカで、2種類目は、ジャンスカと似ているが下がかぼちゃパンツになっている衣装だった。


「これ絶対僕のアバターに似合うもん。」


「僕のアバターもきっと似合う。」


「すーちゃんに着せたい!俺は絶対に合わないけど!」


「僕は似合いませんが、お父さんには絶対似合います。」


「そ…そう?お父さんには若すぎる気がするけどなぁ。」


「いや、ぶっちゃけ貴方が、一番ロリロリしい見た目ですからね?」


「えー、私おじさんですよぉ。」


「お父さん、現実でもロリロリしい見た目してるせいで桃夜ちゃんからこの服着て!とかよく桃夜ちゃんのロリータ服着せられそうになってるでしょ。」


「んっ?ロリータ服…桃夜ちゃんって桜小路桃夜ちゃん?」


「え?私の母方の姪を知ってるんですか?」


「間違ってたらごめんなさい、雫さんって、九州の〇〇大学の薬学科の雫石星磁さんですか?〇〇町のあまつか医院って知ってます?僕そこの息子なんです、ついでにエールは、僕の従兄弟で併設されてる保育園の病児担当の保育士です。」


「…と言うことはあなた方は天使雪兎さんと、翼くん?結が赤ちゃんの頃は何度かお世話になりましたね。」


「はい、実は僕ジャングルジムの話で何となくそうかなとは思ってたんですよね…僕も翼も当時はまだ学生だったから直接知ってるわけではないんですけどね。」


「そうだったんだ…」


「うーん僕は覚えてないや…」


「まだ小さかったからね、結が幼稚園に入れる年齢になる前は、近所の無認可の託児に行ってたんだけど、お熱がある子とかも座薬で誤魔化して預けに来るお母さんとか結構いたんだ、それでよく移されちゃってたんだよね。」


「え?うちのお母さん専業主婦だったよね?お母さんも僕が小さいときは働いていたの?」


「…うーん、働いてはかったよ?ただちょっとね…」


遠い目をする雫。


これは何かあったなと、察するエールとツクヨミとウィステリア。


ユイが、ハッ!とした顔をして


「あ!思い出した離乳食とか言ってスナック菓子にお湯かけてスプーン突っ込んでほれ食えとか言って出すタイプだったもんね、そんな人に任せられないよね。」


「やはり覚えてたんだね。」


「不味くてどうしても食べたくなくて、わざとこぼしたらすごい形相でキレられたからね…僕はそれ以来お母さんに逆らってなかったよ…でも流石に今回のは頭にきたって言うか…今更だけど本当お父さんよくあのお母さんと続いたよね?」


憐れんだ顔で雫を見るユイ。


「アハハ…慣れてるから。」


「慣れって怖いね…」


「…ソウネ。」


雫は笑って誤魔化していたが、泣きそうな目をしていた。


おう、またまた、ダークな話が…まぁ、失礼だけどやっぱりあの派手な人…愛美花(あみか)さんが結くんのお母さんかぁ…失礼ながらお察しだなぁ…パツキン、バービーのような蛍光色のサイケ柄のボディコンミニワンピに、ショッキングピンクのピンヒールの長身の白人女性が頭に浮かんだ。


うちの母は僕が子どもの頃は現役の保育士として、今は園長として働いている。


自分の務める保育園で自分の子は見られないから、自分は自宅に併設された保育園には行ってない。


母親と過ごした記憶は薄いが、その代わり母の妹である叔母…翼のお母さんの七海さんがまだ結婚してなかったから、僕の面倒を見てくれていた。


しかし…愛美花さんは専業主婦って言っていいのかこれ?


僕にとって専業主婦のお母さんと言うと翼のお母さんだけど、いつ行っても家をきれいにして、料理やお菓子も上手で、近隣の老若男女相手に手芸の先生とかしてる優しくていい匂いのお母さんだったからな。


「それはそーと働かないといけないのわかるけど、座薬でごまかすのはやめてほしいよね…触ればすぐに分かるし、しっかりした保育園とかだと定期的に検温とかあるからすぐバレるし、他の子まで罹ってしまうし、何より子供が可哀想。」


「なんで、あまつか医院の保育園に預けないの?」


「保育園にも定員があるからね全部の子見てあげられるならいいんだけどそうも行かないんだ…まぁ、訪問型の病児保育とかもありはするんだけど、お金かかるからねぇ。」


「そうなんだ…たしかに子供一人でも相手するとしんどいもんね…春くんとか、春くんとか。」


「あぁ、春くん甘えん坊さんだもんね。」


「春くん…青いインコのぬいぐるみ抱っこしてる?」


顔立ちが結によく似ている小麦肌の坊ちゃん刈りの5歳程度の男の子を思い出す雪兎。


「あっ、やっぱ知ってましたか?妻の姉の子供なんですよ。」


「来恋(らいら)さんですね、と言うことは、結くんもエジプトの血が入ってるんですか?…あれ?でもどう見ても愛美花さんは…」


「あぁ、義両親どちらもエジプトと日本のハーフなんですけど、義母は有色コーカソイド系で、義父はギリシャ系なんです…そしたら、愛美花と一番下の義弟だけ義父の血を受け継いだようで。」


「そうなんですね、かくいう僕らも曽祖父がイギリスのロンドン出身なので色素薄めなんですよね実は…。」


「え、貴方方もですか?私も海外の血入ってます。

父親がスコットランドのグラスゴー出身なんですよ。」


「え、マジ?俺達父親がオランダ人!父さんが日本の寿司職人に憧れて来日して、長崎旅行中にグラバー園で、寿司屋の一人娘の母さんと出会ったんだ!で、婿入りしたの!」


はいはーいと、手を挙げるウィステリアとすーちゃん。


「実はこのゲームのプレイヤー海外の血が入ってる人結構多いんだよね!えーと、あのエルフだけで構成されてるギルド何つったっけ?」


「ストロベリー・フィールド?ポメキチさんがギルマスしてるとこ?」


「そそ!あそこのポメキチさんも海外の血が入ってるって言ってたよ。」


「えーとたしかね、ロシア系アメリカ人のお祖父ちゃんが沖縄でポメキチさんのおばあちゃんに一目惚れして、日本に帰化して沖縄に全員で住んでたらしいんだけど、お父さんの仕事の都合で、3歳の時沖縄から家族全員で佐賀に越して来たって言ってたよ、つかあそこのギルド主力の三人は親族なんだよ。」


「えっ!そうなの!」


「だよ?ポメキチさん(未婚)…藍花さんが男と蒸発した双子の妹さんの子供二人引き取って育ててんの、あん人ああ見えて38やけんね?」


「え?同世代やと思っとった!…めっちゃ若く見ゆーね、

じゃあいつも一緒にいるアーチャーとヒーラーが妹さんの子供?」


「だよ。」


「ヘェ~幾つなんだろ?男の子の方は見た感じ俺らくらいだよね?」


「さーねー?」


「あ、それはそうと話し戻りますけど、春くんかわいかですよね〜人懐っこくて、この間も折り紙で作った薬玉くれたとですよ、小さいのに器用かですね。」


「ふふ、そうですか、ありがとうございます。」


ちょっと誇らしげな顔の雫に


伝授したのは彼かと、ほっこりした気持ちになった。


「僕は、春ちゃん苦手です、僕のお父さんに僕のお嫁さんになってって言うから、僕のお父さんなのに、僕の方がお父さんをお嫁さんにしたいんだからね!」


ぎゅう!と雫に抱きつくユイ。


「もー、甘えん坊なんですから。」


ニコニコと微笑む雫さん。


「…ねぇ、ヨミ兄…ユイくんって…。」


「…だねぇ…。」


ユイくん、お父さんっ子ってより、恋愛感情でお父さんの事好きなんじゃないかと気が付いてしまった。


恐らく気がついてないのは父親である雫だけであろう。


「雫さん、モテモテだ。」


「えー?お父さん困っちゃうなぁ。」


雫さんが困ったように笑っていた。


「しっかし今回のドレスは神ってますね!」


「ベリキューですベリキュー!」


「このゲーム服に種族とか性別の決まりが無いからいいよね!たまに筋骨隆々でブルマの体操着の人やバニーちゃんの人をイヤだって言う人もおらすけど、そげんとは人の自由やもんね。」


「俺が罰ゲームで〇コレとコラボの〇風の衣装着てた時は何故か良いぞもっとやれ!って言われてたっけ?」


「ウィーくんのアバターは細マッチョだからかな?」


「ウィーくんはそもそもアバターを元の顔に似せてるけど、そもそもウィーくんベニスに死すのタッジオとか、パイレーツ・オブ・カリビアンのエリザベスに似で美形だから女装でも何でも行けると思うとよね。」


「うーん…俺はもっと男らしい顔に生まれたかったっちゃけど。」


「どーかん…」


と微妙な顔をするエール。


「エル兄も可愛系だから前に患者さんに言い寄られたんだっけ?」


「あー…それ違う…古き良きBLが好きな腐男子の人に、お二人は付き合ってるんですか?って詰め寄られたっつー世にも不思議な話だから…。」


「…オウ…」


「…マジか…」


「それはそうと今回の衣装かわいいよね~チョコーって感じ僕チョコ好き。」


「わかる~」


「僕的には去年のバレンタインのハートの鞄とか、ホワイトデーのビスケットのポシェットとかにも合いそうだよねーっ!」


「いいねいいねー。」


「みんな結構かわいい系好きなんだね。」


「何か分かんないけど、かわいいのって滾らん?」


「…そだね、僕もお父さんに着せたら可愛いと思うものを見ると滾るよ。」


「えっ?ええ?私に?」


「僕は可愛い系じゃないからね。」


「どっちかというと綺麗系だよね」


「僕はクール系そして、お父さんを護れる男を目指してるんですけどね。」


雫の小さくて細い顎に手を添えるユイくん。


「えー?そうなんですか?お父さん困っちゃうなぁ。」


ホニャらと笑う雫。


「僕は小さい時からお父さん一筋ですから!」


清々しい笑顔で小6の自分より小さな父親を抱きしめるユイ。


その見た目はお父さんと息子と言うよりは


鈍感な姫と黒騎士のようであった。


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