第2話ルックス再設定そして錬金術師拾った。

「よっこいしょぉ!」


ドスン。


すーちゃんは自分で歩けないので台車に載せた。


パラディンの甲冑重たいな…。


すーちゃんは重くないのかなと思ったけど自分たちも自分の装備を重たく感じないので職業とレベルが合っていれば重たくないのかもと思った。


ウィステリア姿の菫麗が指をくわえて二人を見上げて視線が合うとにこーっとする。


この愛想の良さと人懐っこさ、姿は違ってもすーちゃんだなぁと二人は思った。


「…と、とりあえずすーちゃんのルックス再設定しないと。」


「なんで?」


「赤ちゃんサイズにしておかないと面倒見られんやん。」


「そっか、このままじゃ重たくて満足に抱っこしてあげられんし、ウィーくんの姿で※しかぶったら事故やし、すーちゃん離乳食上手く行ってないもんね。」


※お漏らし


「そうなんだよね〜ミルクプリンと米麹の甘酒と人参グラッセは喜んで食べるんだけどね。」


「要は甘いのだけ好きってことかもね。」


「多分ね」


というわけでルックス再設定ができるサロンに行くと長蛇の列が出来ていた。


「列すごかー、みんなルックス変えるとやか?」


と、列をつま先立ちになって見回すとリアルでもよく知っている古参プレイヤーが居た。


「あっ、ポメキチさん。」


「よっす、エールくん…てか何かリアルの方の翼くんやね…ゲームの3Dのエールとは違うね、目元が優しくなっとーし。」


ポメキチさんとは同郷で、彼女は小児アトピーで子供の頃から頻繁にあまつか医院に通ってるので自然と顔見知りになった。


「確かにそうだね、ポメキチさんもアバターは大人っぽいキツネ顔だったのに今は藍花さんらしいポメ顔になってるし。」


「ふふ、ポメ顔かぁ~…あれ?ウィーくんどがんしたと?」


運ぶために台車におすわりしているウィステリアに気が付いて覗き込むポメキチ。


にこーっとするウィステリアに?となっている彼女に、ウィステリアのルックス再設定をすることになった背景である事の顛末を簡潔に告げる事にした。


「あのさ、ポメキチさんも光に包まれたらここだった感じ?」


「うん。」


「どうもその時ウィーくんちのゲームの前にいたのが妹の菫麗ちゃんだったみたいでさ…」


「うわわ…事故やん、菫麗ちゃんまだ1つになったばっかりやなかったっけ?ウィーくん、きみの所の主力やったとに。」


「それなぁ…。」


「考えないようにしてたんだけどね…何が起こるかわかんないからちょっと不安だよね。」


もはやお葬式のような2人に、ポメキチは話題を変えてきた。


「なんか、うちは地に足が付かない感じがして身長に慣れなくてさぁ…ほらうちって、本来はちびやけん…10cmプラスしとったのが仇になったね。」


「僕フェネギー族だから大きさは最大で140までしか設定できなかったんだけど割と平気かなぁ?」


「僕も割と平気かな、ルナールもフェネギーと一緒で小さい種族だけどさ。」


「うーん…人によるのかな?」


「それはあるかもね。」


うちは慣れないなーと、160cmあるかないかの体でポーズをとるポメキチ。


「次の方どうぞー。」


「あ、呼ばれてる!じゃ、お先にね~。」


順番が来て、サロン内に入っていくポメキチを見送り、自分達にも順番が来たので、ウィステリアの体を赤ちゃんのアバターにした。

何故赤ちゃんのアバターがあるのかって?赤ちゃんになりたい人だっているんですよ…うん。

単にネタキャラで赤ちゃんやってる人もいるしね。


ウィステリアには悪いが、性別はすーちゃんに合わせて女の子に変えさせてもらった。


しかし…問題は山積みだ。


体をちっこくできても、すーちゃんはリアル赤ちゃんだ。


「おむつと、ミルクと哺乳瓶…どうしようか?」


「薬局でも行ってみようか?」


まぁ、分かちゃいたけど…怪しげなポーションしかない。


赤ちゃん用品等ある分けなかった。


この世界の子持ちのNPCに赤ちゃん用品を売ってる店がないか聞くと、おむつは布で作るのがこの世界の常識らしく、うちの子は卒業したからあげるよと、おむつをくれて布おむつの当て方を教えてくれた。


…が、当然布は布…。


「オウ…」


「紙おむつって優秀だったんだな…知ってた。」


「ソウネ」


「はーこの辺に錬金術師でも落ちてないかな…錬金術師が居たらおむつに使うような不織布や吸水ポリマーとか作れそう…な分けないか!ハハッ!」


ドサッ…


何かが落ちる音が聞こえたので振り返ると、ネコ耳族のおかっぱの小さな子が倒れていたので、慌てて抱き上げるとか細い声で…


「…おなか…空いた。」


と呟き気絶したので、料理人が作ったわけではなく、テイマーが作る体調不良の従魔用の食べ物だが大丈夫だろうかと、コカトリスの卵で作ったおじやを食べさせると


「あちっ…あち、ふう…うぅ…」


と、慌てながら食べている。


そして猫耳の、おかっぱくんが泣き出してしまった。


「何があったの?お兄ちゃん達に話してくれん?」


と言うと


「す…すみません…久方ぶりの温かくて美味しい食事だったものでつい…。」


小さな見た目とは違い、ダンディで甘く低い声に驚く。


「すみません、大人の方でしたか?」


「あ…はい、すみません。

私…私ぃ…。」


ボロボロと涙を零す彼の背中を撫でた。


「その…昨日仕事から帰ってきたら愛する息子と妻が出て行ってしまって…息子とよくやってたゲームなら息子と会えるんじゃないかって…そこにこれでしょう?もう限界で…。」


「おっ…おお」


いや、激重だな!初対面で聞く話じゃねーぞ!と内心思ったが吐き出したほうがいいと思った僕たちは話を聞くことにした。


話を聞けば彼…ゲーム名星野雫さんは愛しい妻と、やっと生まれた一人息子のために薬剤の研究職をしながら、薬科大学の、教授になって忙しい日々を過ごしていたが、当時3歳の息子が幼稚園で乱暴な子からジャングルジムから突き落とされ怪我をした際に、妻に聞いていた血液型と違う、妻と自分の息子であれば生まれない血液形だったと知り問うと妻は…


「許して…4年できなかったでしょ?私の方が君より大分年上だし、今しか産めないと思って…どうしても子供が欲しかったのよ…私に問題がなかったから…君が原因かもって思ったけど君はまだ若いから傷付けるんじゃないかって…言い出せなくて…」


「と言われまして、私は息子を心から愛していたので、許しました…そして何事もなく9年経って来年は中学校入学だと思っていつ卒入学のスーツを買いに行こうかなんて息子の12歳のバースデーケーキ片手にウキウキで帰ったら…これですよぉ…。」


(結の本当のパパが、結も一緒に暮らしていいって言ったから出ていくね。)


「という内容の手紙が置いてあって…居なくなってました。」


「ひ…酷か!流石にそれは酷かよ。」


「妻はもうどうでもいいので、息子だけでも帰ってきてほしいです…」

「だよねぇ…」


とえぐえぐ泣く彼を抱きしめていると…


「お父さん!」


と言う声とともに、ネクロマンサーの衣装を着た長身で黒のロングヘアの黒い犬耳の美少年が走って来た。


「結くん?」


「うん…ゲームの中ならお母さんの目から逃れて会話できるかなって思って…そしたら出られなくなっちゃったんだ。」


「僕たちと同じか…」


「お父さん…僕のお父さんは血が繋がってなくてもお父さんだけだからね!あんなの絶対僕のお父さんじゃない!いくらあいつの顔が僕にそっくりでも血が繋がっていたとしても僕のお父さんはお父さんたけだからね!」


と、泣きながら抱き合っていた。


二人の名前を見ているとどちらもギルドに入ってなかったので、誘ってみるか…だってなんか心配なんだもんこの人達。


星野雫とユイ・ナイトメアをギルドに誘いますか? 


→YES


 NO


二人共選んだ職業柄ソロは難しいと感じていたらしく二つ返事で入ってくれた。


あとミラクル起こった!


雫さん、錬金術師の頂点に立つポーションマスターだったのだ、しかも結くんがが生まれた事を切っ掛けに薬の研究以外にも紙おむつや、母乳に近いミルクとか、赤ちゃんが飲みやすい形の哺乳瓶とか企業との共同開発で色々やってたんだって!


錬金術師落ちてないかなーとか言ってみるもんだなーと思ったよ。


僕も色々頑張ろう、こうなった原因がわからない今、健康的に楽しく過ごす事が大切なんじゃないかと思うからね。


ザ…っと、ボロボロの聖騎士装備の男性がペガサスに乗ってサーガにたどり着いた。


「…すーちゃん…にいに今会いに行くからねぇ!」


ウィステリアによく似た金髪の美青年はきゃっほーい!とサーガへと足取りも軽く入っていくのであった。















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る