昆布
QR
昆布
海中・・・そこにゆらゆらと揺らめく一枚の緑の物体がいた
「こぶお・・・!!こぶお!!」
「むにゃむにゃ・・・やったー・・うどん出汁だー・・・・・」
「こ・ぶ・お!!」
「ふがっ!」
「やっと、起きた・・・また出汁になる夢でも見てたのか?」
「あぁ・・・」
出汁になる夢を見ていたこぶお・・・彼は昆布である
「で?今日はどの料理の出汁になってたんだ?」
「ふふふ・・・聞いて驚くな?」
「いや、おどろかねぇし・・・さっさと教えろよ」
「なんと、今日はうどん出汁だ!!しかも隠れ家の名店ときた!!」
「へ~、それは良かったなー(棒)」
「なんだよーもっと驚けよー」
「いや、驚くつったって・・・どう驚けと?」
「そりゃ・・・わー!名店の出しだなんてすごいね!!とか・・・お前だったら良い出汁取れそうだ!!とか・・・」
「俺がそんな事言うやつに見えるか?」
「見えん!」
「よろしい」
「しかし、長い海中生活・・・退屈しのぎに聞き始めたお前のくだらなくて退屈で、聞いてるこっちが眠くなるような夢の話もいい加減飽きてきたな」
「こぶたろうさん・・・あんたサラッととんでもないこと言うね・・・」
こぶおに容赦ない言葉を浴びせるこぶたろう・・・・・彼もまた、昆布である
「じゃぁさ、お互いに収穫されたら何の出汁になりたいか言い合おうぜ」
「あっ?お前じゃあるまいし・・・俺は別に何の出汁でもいいよ」
こぶおの申し出をこぶたろうはバッサリ切り捨てる
「えぇ~!いいじゃねぇか~減るもんじゃねーんだから~!!」
そう言いながらこぶおが体を激しく左右にふる
「わかった!わかったから、止まってくれ!!水流でこっちまで振り回される!!!」
「そうだな・・・俺は強いて言うなら漬物かなー」
こぶたろうが話し始める
「漬物?」
「そうそう、熱々のご飯と一緒にかき込んでもらうのが俺の理想だな・・・」
「へぇ~・・・こぶたろうも結構マニアックなところいくな~」
「すまんが・・・俺にはお前の基準がようわからんから、何をどうもってマニアックなのかわからん・・・・・」
「俺はやっぱり割烹料理だな!!高級料亭の!!」
こぶおがこぶたろうの問いかけを無視して話始める
「お前らしいなー」
「熟練の職人の手で丁寧に出汁を取られたい・・・」
こぶおがうっとりした目で話す
「まぁ・・・お前のその気色悪い願望が叶うことを応援しておくとして」
「気色悪いって何だよ!?応援ありがとう!!」
「そういえば噂で聞いたんだが・・・なんか、人間の間では俺たちには育毛効果があるって言われてるらしいんだと・・・」
「へー、そうなのか・・・」
「んで、その効果にあやかりたい一部の行き過ぎた人たちは鍋で煮た俺達をそのまま、頭皮に乗っけることもあるんだとよ」
「ヒッ・・・」
こぶおは小さな悲鳴をあげる
「この世の終わりじゃねーか・・・」
「あぁ・・・俺たちは食われるために狩られる運命・・・本来の用途以外では使ってほしくないな・・・」
「ぜってぇー、俺はそんな奴のもとにはいかねぇ・・・・・」
こぶおが謎の誓いをたてていると
(ブロロロロロ・・・)
「おっ、収穫船の音だな・・・」
「あぁ、俺たちもそろそろ収穫の頃合いだからな・・・」
「こぶたろう・・・お前との海中生活楽しかったぜ」
「俺もだ・・・こぶお」
「じゃぁ、又どこかで・・・」
「あぁ・・・」
あれから俺は収穫され乾燥昆布にされた後、故郷の利尻から遠く離れた京都の乾物屋に出荷された
(こぶたろう元気かな・・・)
そんな事を考えながら商品棚に並ぶ日々が数日過ぎた頃・・・俺が並ぶ棚の前にいかにも職人気質な顔のおっさんが現れる
理想の人・・・その言葉がぴったりだった
頼む・・・買って・・・・・・・
俺は切に願う・・・
その願いが通じたのかおっさんは俺を手に取る
「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
俺は雄叫びを上げながらお買い上げされた
おっさんの帰り道・・・・・俺は高鳴る鼓動を感じながら袋の中で揺られる
(一体、どんな料理になるんだろう?
煮物・・・?マニアックに漬物もありだな!)
そんな事を考えているとおっさんの歩く速度が遅くなり、鍵の開ける音が聞こえる
(お?ついたかな?)
俺はワクワクしながら袋の隙間からあたりを見回す
(えっ・・・?)
俺が目にしたのは物だらけで足の踏み場がない部屋だった
「さてと・・・」
そう言うとおっさんは袋を台所のごみ山に乱暴に置くと、鍋を取り出し水を入れる
(まぁ・・・理想とだいぶ違うけどそれでもおっさん料理うまそうだし・・・)
俺は自分にそう言い聞かせる
おっさんは包みから俺を乱暴に取り出すと、沸騰したお湯に俺を放り込む
「アツッッッッ!」
俺の悲鳴虚しく・・・俺は鍋の中でクタクタに茹でられる
しばらく茹でられた後、俺は鍋から打ち上げられる
「あぁ・・・俺の出汁不味そ・・・それでもたべてくr」
俺がそう言いかけた途端
(ジャー・・・)
「なにしてんの!?」
おっさんが出汁をそのままシンクに流す
「えっ?何!?おっさん料理知らねぇの!?ねぇ!?さっき捨てたの昆布だし!!まずそうかもしれないけど食べれるから!!」
俺が喚いてると、おっさんがおもむろに俺をつかむ
「だいぶ冷めたな・・・」
「あぁ・・・漬物を作るのね!!そうそう、まず俺を頭の上に高らかに掲げ・・・ん?」
「毛が生えてきますように・・・」
おっさんの小さなつぶやきが聞こえた
「あっ、これ育毛剤にされるパターンだ!!頭に乗っけられるパターンだ!!やめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめてやめ・・・・・・・・・!!」
おっさんは一切の躊躇なく、俺を頭皮に乗せる
「あぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁっぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!」
その夜、昆布の悲鳴が人知れず街に響いた
昆布~fin~
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