貴方の花弁

青いバック

巡り来たる散りゆく命

 貴方は私の生きる理由でした。


 凛としていて時に萎れていて、水をあげないと枯れてしまう花のような貴方は私の好きな人でした。


 太陽というシャンデリアに照らされる貴方は眩しくて、とてもじゃないけど直視できませんでした。


 雨というベールに濡らされる貴方はお淑やかになって、私と生きている世界が違うんだと思い知らせて心が少しだけ痛かったです。


 でも、私は貴方の桜が散った後に気付いたのです。貴方は私と何も変わらなくて、同じ血液が流れている人間なんだってことを。


 お淑やかでも眩しくもなくて、ただ貴方は私に自分自身を見てもらいたかったのですよね。失った後に気付きました。手遅れになった後に気付いてしまいました。


 本当に心を痛めていたのは貴方だったんですよね。なのに、私は勝手に心を痛めて。


 ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。


 貴方に何回も伝えられたら良いのに。貴方にまた会いたい。謝りたい。貴方を見ていたい。貴方の心を救ってあげたい。おこがましい願いだって分かっています。貴方と同じ人間である私が、貴方を救いたいなんて神でもあるまいのに、図々しいとも分かっています。


 それでも貴方に会いたい。会って謝りたい。散ってしまった貴方の花弁を見ながら私は泣き崩れることしか出来ません。


 無情に貴方の命を刈り取ったあの人を今すぐにでも殺めてしまいたい。


 でも、私には出来ません。何故なら、貴方がその人達を心から愛しているからです。貴方の心を蝕んで痛めつける理由だとしても、貴方はあの人達を愛していました。


 それを知っているから、私の手には何も握られていません。夢も希望も未来への渇望も。あるのは貴方を救えなかった罪悪感のみです。


 分かっています。私は生きます。貴方が言っていました。私に何かあっても生きていて。そう言っていました。


 なら、その言葉を破るわけにはいきません。最後の悪足掻きとでもいうのでしょうか。それとも、懺悔でしょうか。


 散りゆく命じゃなければ私の隣に居て欲しかった。ずっと、ずっと、ずっと、この先もずっと。

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