第6話 新幹線の中でのやり取り
朝、起きるとパソコンの前であった。論文、論文、と……よかった、書き終えている。しかし、あっちこっちが痛い。パソコンの前で寝落ちしたからだ。
……。
死にたい。
わたしはふとそんな感情に襲われる。ふ~う、楓先生が目の前で死んだのだ。その心の傷は計り知れない。
わたしは安定剤を探す。それは、現代医学に頼る人生であった。安定剤を飲むと楓先生への想いが軽減された感触だ。わたしは昨夜、書き上げた論文をネットで送る。これで明日の短大での授業の準備に入ることができる。短大での授業が、わたしにとって、今の唯一の楽しみだ。秋葉さんは素直なので気を抜くと怒られてしまう。明日は少し授業の内容を前倒して、徒然草の現代訳を特集しよう。
さて、国語教育の研究機関に出勤だ。
翌日、今日は地方の短大での講義の仕事だ。新幹線に乗りウトウトとしていた。こんな気分の時は楓先生が現れる。わたしは刺激のある目薬をさして眠気を覚ますか迷っていた。確かに楓先生と愛し合っていた。しかし、追憶の恋から、いい加減に卒業したいと思ったからだ。秋葉さんを数に入れるか迷うところだが。水仙さんはよくしてくれる。東京での仕事を辞めて神社を継ぐのも良いかと思うくらいだ。わたしは鞄から目薬を取り出して使う。まぼろしの楓先生より現実を選んだのだ。
うん?
水仙さんから添付メッセージが届く。この新幹線に乗っている時間は水仙さんとのやり取りを楽しみにしている。今日はベージュ色のワンピース姿であった。このたわわな胸が脳内をこれでもかと刺激する。
で、メッセージは……。
『君を風に乗せて、にゃん、にゃん』
もはや、意味不明であった。わたしは返事に困ったが、そこは国語講師、無い知恵を使い返事を返す。さて、新幹線からの乗り換えの時間だ。恋愛感情か……と、考えながら歩くのであった。
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