第2話 三角関係
わたしは週一でとある地方の吉岡短大に講師として教鞭をとっていた。結局、短大の隣の神社に泊まることにした。そこはあやかしが出る不思議な神社であった。そして、孫娘の水仙さん。彼女は可憐な大人の女性である。わたしが神社前に着くと、幼女の秋葉が近寄ってくる。
「こんにちは、秋葉さん」
「うううう、また来てくれた」
「今日もわたしの授業を受けるかい?」
「はい、先生さん」
「それは良かった、わたしも張合いがでて嬉しいよ」
秋葉さんの態度は恋であった。鈍感なわたしにも分かる単純な恋。わたしが目を細めて秋葉さんを見ていると。
水仙さんが境内から向かって来る。すると、秋葉さんはいつの間にかに消えている。
「先生、この神社を宿に使ってくれるのですね」
「ああ、お言葉に甘えて、そうさせてもらうよ」
嬉しそうな水仙さんは巫女装束に大きな胸が揺れている。これは目のやり場に困る。
「あれ?この辺りで誰かと話していたのですか?」
そうか秋葉さんはこの神社の御神体なのか。ややこしいが普段は身を隠しているらしい。さて、困ったな、素直に妖狐と話していたと言ってもいいが。ここは隠しておくか。
「スズメ達と話していただけだよ」
「そうなんですか」
気のせいか水仙さんも頬を赤らめている。それは三角関係の予感であった。
そして、今日も短大で授業を始めると。大人の女性の秋葉さんが最前列で授業を受けていた。わたしが黒板に書くと秋葉さんもノートに写す。気持ちよく授業を進めると、雨の音が聞こえてくる。
あいや、傘を忘れた。わたしは頭をボリボリとかいていると。
「先生さん、授業に集中して下さい」
秋葉さんが目をキリリとして注意してくる。これは気持ちを引き締めなければ。わたしがテキパキと授業を進めると。あっという間に時間が流れる。授業が終わり、学生達が教室から出ていくと。幼女化した秋葉さんが座っている。
「先生さん、今日の授業も楽しかったよ」
「それは良かった。それで、何故、幼女化しているのですか?」
「はえ?本当だ!」
驚いている秋葉は急いで教室から出てしまう。ホント、可愛いあやかしだ。わたしが教室から出ようとすると秋葉さんの座っていた席に傘が落ちている。
これは?
傘を拾うと講師控室に行き座って小首を傾げている。
「田中先生、可愛い傘ですね」
「ああ、知り合いの落とし物だ」
「降ってきましたから、きっとお困りのはず」
「そうですよね、少し、知り合いを探してみます」
そんな会話の後でわたしは秋葉さんを探す事にした。わたしが学生用の出入口に行くと大人の秋葉さんが困っていた。
「秋葉さん忘れ物ですよ」
「あ、ありがとう」
秋葉さんに傘を手渡す。
「あれ、先生さんの傘は?」
「お恥ずかしいですが、忘れまして」
「なら、隣の神社までご一緒しましょう」
これは究極の選択だ。雨でずぶ濡れになるか、女子と相合傘か?
「先生さん?」
わたしはなし崩し的に相合傘で帰ることになったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます