ミサンガ

ドラコニア

結果的に

 一ノ瀬には思いを寄せる女の子がいた。

 彼はこの恋心が成就しますように、とクラスで流行っていたミサンガをつけた。

 ミサンガは、平たく言えば何本もの糸を編み込んで作った腕輪である。それが切れた時、願いが叶うとされている。

 そんな彼の思い届かず、女の子は交通事故で亡くなってしまった。

 次の日、一ノ瀬はミサンガを首に巻き、死んだ状態で発見された。死因は窒息死だった。

 一ノ瀬の首から上は、ちょうどぱんぱんに膨らませた風船みたいになっていた。

 直径が子どもの手首ほどしかないミサンガを、どうやって首まで通したのか。

 警察の現場検証のさ中、何の前触れもなく、ブツッという音を立ててミサンガが切れた。

 空気の抜けた風船のように、一ノ瀬の顔はみるみるしぼんでいった。

 顔は萎んでしまったものの、一ノ瀬くんの恋は実った。

 

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ミサンガ ドラコニア @tomorrow1230

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