ep.6 自由は優しいようで怖い

天気のいい早朝に1人散歩をする拓磨は空を見ながら独り言を言い出した。

拓磨「本当に結婚ができるのかな、恋すら届かないのに…」

そんな恋の実らない拓磨にとっては初恋のお姉さんを思い出す。

拓磨「あんな可愛いアイドルはなかなか身近に居ないな…」と思いながら理想を浮かべて家に帰った拓磨。


一方、拓磨の担任

久家担任「整理整頓をしておかないと…、来年の進路希望の子の分をと、」と言いながらダンボールに私物を閉まっていると、記念写真を見て手に取って思い出を振り返っていた。

(久家の過去)

久家「草餅と豆大福といちご大福ください」

店員「お会計950円です」

お金を払い、店員「ありがとうございました。」

久家は友達の家に大好きな和菓子屋のお餅を持っていった。

奏恵「良いの?これ」

久家「退院祝いよ、喜んでくれると思って」

奏恵「上がって」

久家「お邪魔しま〜す」

部屋に案内されると、そこにはもう1人いた。

奏恵「あっ、紹介するね。この人は柔道の県大会で2位を取った松井さん」

松井「初めまして松井周蔵と申します」

久家「初めまして、久家夏子と言います。」

久家は当時は田舎の高校の教師をしていた。

奏恵「そういえば、松井さんって柔道のクラブを開くんでしたっけ?」

松井「ええ、まぁ」

久家「それはいつ頃からですか?」

松井「まだ工事段階に入ってないので来年の春ぐらいには開く予定ですが」

久家「あの、もし良かったらうちの生徒で柔道の県大会で入選まで行った子がいるんですが教えてあげることってできないでしょうか?」

松井「良いですが、どこで練習を?」

久家「学校の武道場は学校の外にあるので、そこなら休みの日は自由に使っても問題ないんですよ。」

松井「わかりました。」

と、過去にそんな事もあったな〜という思い出とともにダンボールに閉まった。


一方、松井

松井はトロフィーを見ながら、「骨折さえしなければ俺が優勝も狙えたかもしれないのに、ついてねぇな…」とそこに妻が来た。

松井の妻「貴方は十分凄いですよ。プロでも完璧では無い所が人間味があって。」

松井「それでも人はその時間に囚われるてしまう…分かっていても、認めたくないなんて結局、本当は大人になっても心のどこかでは子供のわがままな性格が残ってるのかもしれない…。」

妻「そんな貴方が好きだから今までもついて来れました。」

松井「そりゃお前と出会わなかったら俺は柔道よりも不貞腐れてたかもしれねぇな」

妻「じゃあ私がいなくなったら不貞腐れますか?」

松井「冗談はよせ」

妻は笑い、周蔵も微笑んだ。


一方、拓磨

拓磨「ねぇ、お姉ちゃんは彼氏と初デートどこ行ったの?」

姉「そんなの彼氏の行きたい所に誘導されたは、あの映画はあんまり面白くなかったな〜」

拓磨「えっ?初デート映画館なの?」

姉「うん、ホラー映画だったけど、全然怖くなくてつまらなかった…」

拓磨の内心「うわ〜、彼氏さん怖がるの期待して失敗してるの可哀想…」

姉「そんな事より、たくちゃんは彼女作らないの?」

拓磨「痛い所を着きますね、お姉様…」

姉「当たり前でしょ、あんたが恋について知りたがってたじゃない」

拓磨「えっ?なんで知ってるの?」

姉「知ってるわよ、三上君から聞いたもの」

拓磨の内心「三上の奴、余計な事を…。」

拓磨「でも、俺は恋がなんなのか分からないけど、姉ちゃん見てると楽しそうだったのもあるんだよね…。」

姉「ふ〜ん、そう思ってくれてたんだ、ありがと。」


一方、久家担任

久家「自由ってなんだろう、楽しいけどすぐ時間が来ちゃう…。自由って人を腐らせるのか、幸せにするのか…自由は物じゃないしマニュアルがない。」

久家は思い出に浸りながら薄らと涙を流して去っていった。


一方、拓磨

学校に来て、担任に相談しに行った拓磨。

拓磨「先生は自分探しをしたりして自分を見失った事ってありますか?」

担任「急にどうしたの?そんな質問をして」

拓磨「俺にとって人生ってご飯食べてトイレしてやるべき事しての繰り返しが本当に人生なのか分かんなくて…」

担任「あのね、(人生は暴言だ)」

拓磨は呆然とした。

拓磨「えっ、えっと急にどうしたんです?先生」

担任「確かに人生はハプニングも当然起こりうる、大切なのはどんな新しい挑戦をしてどんな刺激を得て感じるか。恋も夢も全ては刺激的な物を求めてるからだよ。」

拓磨「はぁ、なるほど」

担任「最初に欲しいと思った物はある?」

拓磨「俺は親に買ってくれた漫画が嬉しくて今でも買ってます。」

担任「それと同じだよ、最初の印象は忘れられないから後から欲が生まれる。初恋をすれば興味を持つ、だから恋をしようとする。」

拓磨「そんなもんなんですか?」

担任「俺も最初は親に買ってくれたクレープは嬉しかった。自分の給料で食べた時も美味しかったけど、何かが違った…人から与えられた物よりも自分の力でなんとか出来てすぐ叶ってしまう虚しさ…」

拓磨の内心「なんだか恋の話からズレてるような…」

担任「だから初恋は物とは違って自分の力でどうにかできないから面白いと思う、そこにこそ色んな人の人生のドラマがあるんだろうね。」

拓磨の内心「良い事を言ってるようだけど、全然わかんねぇ…」

拓磨「あっ、時間なんで帰ります。」

担任「そうか、また悩みがあったら相談しに来いよ。」

拓磨「失礼しました。」ドアをそっと閉めて帰った。

拓磨「ふぅ〜今日の先生は語りが激しくて俺の質問の本題から離れてて悩みが解決されたのかあやふやだ…」と途方に暮れながら夕日に向かって帰って行った…。

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