02話 転生した先は…

ガタンゴトンガタンゴトン…


なんか馴染みのある振動で目を覚ます。


「ここは…どこだろ…?」


辺りを見回すと二畳程のスペースにベッドと小さいテーブルと茶色い革のアタッシュケースサイズのカバン。


「寝台車…?」


多分そうだ。前世でノリで申し込んだら当たった夜行列車のB寝台の個室くらいかな…?外をみるとまだ夜なようで辺りは真っ暗。見下ろしてみるともう一本の線路が見える。だいたいこういう世界って単線のイメージがあるけどここら辺は複線のようだ。

そして自分の身体を見ると性別はそのまま女、前世では持ち合わせなかった大きなお山が二つ。いやっほう!ちょっと飛び跳ねたらばるんってなって少し痛かった。これが持つものの苦しみというやつか…。


カバンを見ると黒くてちょっとしたハードカバーくらいの厚さの本が乗っている。手に取ってみてみるとどうやら神様がくれたこの世界のマニュアルのようなものだった。


お金や距離等の各種単位は基本的なところの数え方は前世とほぼ同じでこの国は北米大陸程の大きさの大陸の西端に位置するレングラッドと呼ばれる民主主義国家、今は首都のストーリアと呼ばれる都市に向かう夜行列車の中らしい。

この国では15歳で成人とみなされ私の年齢はそれに合わせて15歳、両親を早くに亡くし孤児院のような場所から働き口を探すために首都に向かっているという設定だ。


なるほど。距離やその辺の単位はメートル・グラム法、通貨の単位はイェンで貨幣・紙幣の分け方も日本と一緒なのはありがたい。なによりヤード・ポンド法がないのが素晴らしい!

細かいところはあとで読み込むとしてこの世界はマナと呼ばれる大地から湧き出すエネルギーを変換して電気のように使う【魔導】というものが主なエネルギーで魔法は無い。一応魔物もいるらしく倒すとマナの触媒になる魔石やそれぞれの魔物固有の素材を採取することが出来るらしい。


「なんとなくスチームパンクとサイバーパンクの合いの子みたいな感じかな?見た目は蒸気全盛期寄りだけど中身は近未来って感じ。」


次にアタッシュケースサイズのカバン…てかサイズ的にすっごいしっくりくると思ったらアレだ、車掌時代に使ってた胴乱ドウラン(車掌カバン)と同じくらいのサイズだ…。茶色の革素材でベルトや持ち手がこげ茶色、片面にはリュックみたいに背負えるようにするためのベルトを付けるアタッチメントが付いてて本来鍵のある位置には宝石のようなものが収まっている。これが魔石かな?


試しに魔石に触れると「カチャッ」という音と共にロックが解除された。おそるおそる開けてみると中には真っ黒な空間と蓋側には地図と切符、他にはIDカードのような物がポケットに収まっている。IDカードには身分証明の他に銀行のキャッシュカードのような機能も付属しているらしく大半の支払いはこれを端末にかざすだけで支払いが出来るデビットカード機能も付属しているらしい。マニュアルには



『10年くらいは遊んで暮らしても困らない額が入ってます♪』



何それ怖い。そしてこの真っ暗な空間は収納箱と呼ばれる物らしく結構珍しいロストテクノロジーの逸品だそうな…発見されれば高値で取引されるらしい。

あれば誰でも使えるというものではなくその人が体内に保有できるマナの量に比例して容量が変わるらしく大抵の人はカバンの見た目位、多い人は10畳くらいの部屋ほどが収まるらしく私の場合は



「ちょっとした港湾倉庫くらいの容量があります♪」



あ…入れ放題っすね…。中には全シーズンの衣類、日用品、一人暮らしに必要な家具、後は武装の類が入っている…。貰ったチートはマナ保有量・武具扱い全般・格闘技全般・女子力だそうだ。…女子力?あぁ、日常の家事スキル全般って事かな…?


ちなみに火の玉を飛ばしたりといった魔法というものはなくマナ保有量が多い場合は前述の魔石が装着された魔導具と呼ばれる物を使う時に威力や効果が上がったり持続時間が伸びたりするらしい。ただ、魔石の質によってはマナを込めすぎると壊れるらしいから注意してくださいとのこと。



「うーん、まぁ首都に着いてから色々考えてみようかな。とりあえず喉が渇いたのと小腹が空いたからちょっと車内を探検してこようか。パンフレット見る限りだと食堂車もあるみたいだし。」


私は鉄ちゃんというワケではないが職業的に色々気になるところがないわけではないし、なんか食堂車とかテンション上がらない?前世だと食堂車どころか夜行寝台列車自体数を減らしてるし、たまにツアーパックみたいなのもあるけど争奪戦だし一部は目玉が飛び出るほどの料金だから乗れる気しないし…。それでもほぼ秒殺で完売するっていうから金持ちっているんだなぁ…。とか思ったりしていると…



コンコン




私の個室のドアをノックの音がする。…誰だ…?

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