魔導都市の鉄道員

まっこさん

鉄道員転生します

01話 鉄道員転生する

汽笛の音が聞こえて目の前に迫る電車。



あ、これもうダメなヤツだ…名も知らぬ運転士さんごめんなさい…願わくばこれで心を病まないで欲しい…。




暗転。





気付いたら真っ白な部屋…というか空間か?なんで私こんなとこにいるんだ…?





そうか、あの時踏切に入った子供を助けようとしてとっさに入っちゃったんだっけか…。流石にあの距離だとボタン押しても間に合わなかったしなぁ…。としては失格だなぁ。


…と独りごちる。


私はとある鉄道会社で働いていた。高校を卒業しそのまま就職、正直鉄道会社入っても「車掌とか運転士なんてどっか特別な学校出た連中がやるんだろ?」くらいの感覚で特に鉄ちゃんなわけでもなかった。ただ安定してるっていう理由だけで入ったようなもんだけどいざ入ってみると駅員→車掌→運転士→輸送指令と俗に言われる輸送系の仕事を一通り経験していっぱしの鉄道員として日々働いていた。




『お気付きになられましたか?』




どこからともなく綺麗な女性の声がする。




『気付かれたようですね、まず私の自己紹介からしますとあなたの世界で言うところの神と呼ばれる存在です。』


あ、コレもしかして最近流行りの異世界転生ってヤツかな?


『話が早くて助かりますね、端的に言いますとあなたが覚えている通り子供を助けようとして電車に轢かれてしまい亡くなりました。そしてここからが本題なのですが本来亡くなるはずだったのはあなたではなくその子の父親だったのです。』


あー、そういえば隣に立ってた人を制止して私が飛び込んだんだっけか。


『はい、人ひとりの運命を変えてしまうくらいのイレギュラーだったのでこうやってあなたの魂を保護して今に至ります。』


…という事は元の世界に戻るってのは無理っぽいなぁ。


『色々察していただいて助かります。ですので私が管理する世界で今の記憶を保持したまま転生という事になりますがご希望とあらば記憶も消して完全に転生するという事も可能です。』


ほう。そして与えられた選択肢は…


1.記憶を保持するか否か

2.転生先

・剣と魔法のファンタジー世界

・某世紀末漫画のようなポストアポカリプス世界

・スチームパンクな世界


だそうだ。世紀末は勘弁だなぁ…。

剣と魔法世界はもうRPGやナーロッパとか呼ばれる世界そのまんまでスチームパンク世界は正確には蒸気じゃなく魔導とのこと。有名RPGの7作目みたいな感じかな?


『おおむねそんな感じですがどちらかというとラスボスの名前でダジャレが出来るRPGのDの方ですね。』


女神様詳しいなオイ


『虎牙〇斬は至高ですね。ちなみに推しは闘技場のチャンピオンです。』


またちょっとマニアックなところを…。ちなみに私はDだと吟遊詩人、Pの方だと召喚士さんが推しだ。なつかしいなぁ…リメイク前の方はラスボスハメ殺しできたんだよねぇ。


『え?そんなことできたんですか!?』


できるんです。ショートカットに主人公とヒロインの最強技、他のメンバーに回復アイテムをセットしたらあとはひたすら回復しつつ交互に技叩き込むだけというお手軽仕様。


『それは知りませんでした…後でやってみます。』


やるんかい。てかまだ動く1か2持ってんの!?


『初期型の3です。』


そっちの方が無事な個体少ない気が…


『大事に使ってます…。こほん、話はそれましたがいかがいたしましょうか?どの世界に行くにしても生きていくのに困らないギフトは付与させていただきます。』


おぉ、チートもあるのか…ファンタジーとポストアポカリプスは結構生活が不便そうだし一応それなりの文明人だったから耐えられるかどうかわからないなぁ…ならば…


「記憶は保持、スチームパンクでお願いします。」


『わかりました。転生先の事についてはマニュアル的なものを用意させていただきますが他に何か聞いておきたいことはありますか?』


特には…あ、そういえばあの子供はどうなっただろうか。


『あなたが突き飛ばしたのでその時のかすり傷程度で済みました。ちなみに運転士さんはその後少しだけ気落ちしましたが無事に復帰しています。』


子供が助かったのはもちろん運転士が無事に復帰できたのは本当によかった。一回当たるとそのまま耐え切れなくなってハンドル置く人も少なくはないからなぁ…。実は私も一回だけ経験あるけど一週間はダメだった。


『それではあなたの次の生に幸多からんことを。』


色々気を使っていただいてありがとうございます。前世は無神論者だったけど来世は少しは信仰してもいいかなぁ。




『ぜひお願いします!』




神様可愛いな。さて、前世に未練はないわけじゃないけどせっかく色々手を回してもらったから次の生は大いに楽しませてもらおうか!


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