第2話 神の戯れ
湧き上がる歓声。目の前に横たわるふたりの少女。伝承どおりとはいえ本当に幼い。こんな幼く成人してもいない子供をこちらの都合で勝手に召喚し、祭り上げるなど反吐が出る。召喚したのは私で、その責任もある。聖女は1人で、となると少女のうちどちらかひとりはただの異世界人のためあの王子に捨てられてしまうだろう。こちらの都合で召喚し捨てられる少女になんの感情もわかないのだろうか。それが冷酷というならば将来国を治めるものとして悪くなかっただろう。だがやつの抱くものはそんな綺麗なものでは無い。ただの考え無しだ。そのひとりの少女の絶望を思うと本当に不憫でならない。そんな思いをさせない為にも私が引き取ることを決める。1人の少女が目を覚まし辺りを見回す。混乱しているようだ。
「聖女召喚は成功した。」
そう宣言するまでが私の役目。今すぐにでも帰りたい所をぐっと我慢する。
そこで考えもせず王子が問う。
「なぜ聖女が二人いる?」
そんなことを言われても困るものだ。召喚は神の管轄。私は魔力を持ってして神に召喚を頼んでいるだけ。そんなことも知らないとは落ちぶれたなこの国も。
「さてな。言いつけ通り召喚はした。これで満足だろう?」
なおも王子は何かしらを言っているようだ。しょうがない。まあどちらか分からないとこちらとしても困るしな。
起きていた方か、私が連れ帰るのは。どれ、この機会に他の情報でも見ておくか。一緒に住むときに役に立つ情報があるかもしれない。
ふむ、特に変わったところは、
なぜ、なぜこの少女が。口から出る偽りの言葉。何も面白くなどない。なぜ再び。なぜ戻ってきてしまったのだ。神の戯れにはうんざりだ。もうやめてくれ。これ以上─を─ないでくれ─。
どのくらいたっただろう。溢れ出る後悔に支配された頭がようやっと正気に戻った頃、辺りを見回す。もう誰も残っていないようだ。背を向けていて分からないが少女も疲れているだろう。私としたことが感情に飲まれるなどまだ未熟だったということか。とりあえず彼女を家に連れ帰ってそこから考えるとしよう。今後どうするか、彼女はどうしたいのか。
バタッ
何かが倒れる音?まさかっ
振り向くと少女が倒れていた。あの時と同じように、
サンビタリア 月白 @tukisiro_0624
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