サンビタリア

月白

第1話 望まれないもの

「うぅ」小さく声が漏れた。そこで意識は覚醒する。ここはどこ?光り輝く床、多くの人々、それと横たわる1人の少女。この少女には見覚えがあるがそれ以外に全く検討がつかない。そもそも私はこんな部屋になんか居なかったはずだし人だってここまで居ない道路をクラスメイトであるこの少女と歩いていたはず。湧き上がる歓声が思考の邪魔をする。

「聖女召喚は成功した。」

白髪の長い髪を微かに揺らし男が宣言する。

全く意味がわからない。だがそれは目の前の人々も同じなようだ。

「なぜ聖女が二人いる?」

金髪の男が偉そうにそう言う。

「さてな。言いつけ通り召喚はした。これで満足だろう?」

「そんなわけが無いだろう。召喚したお前にはこの2人のうちどちらが聖女なのかを鑑定する義務がある」

「義務ねぇ。まあいい、」

白髪の男がかざした手を少女の頭に向ける。「ふむ、どうやらこちらが聖女のようだな。」

どっと新たに湧いた歓声。

「ではこちらはなんだと言うのだ。」

私の方を軽蔑した目で見下ろす金髪の男。

白髪の男が再び手をかざし、今度は私の頭に向ける。

「ほお?面白い。こちらは聖女でもなんでもないただの少女のようだ。」

「なんだと?役立たずが。」

「っ!」

思わず声を出すところだった。なぜ私がそんなことで罵倒されなくてはならないのか、こっちは突然日常を奪われ、説明もないままに床に座らされているのに。意味がわからない。

「役立たずならば私が貰ってもいいのだな?」

「好きにしろ。聖女よ、俺に着いてきてくれ。さあ、手を。」

「は、はい。」

聖女と言われたクラスメイトの少女が金髪の男と共に去り、人混みもなくなり、やがて2人きりになった。私は呆然と座ったまま目の前の白髪を見つめる。

きらきらと輝く、美しい白の長い髪。

頭が痛むのは気のせいか、ストレスのせいか。

自覚した瞬間から急に酷く痛む頭を抱えて、なんだか体が傾くのを感じる。あ、まずい。落ちる意識のなか、最後に見たのは長い白髪と、必死に叫ぶ血まみれの貴方だった。

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