第76話 突撃!金色の妹!
「ねぇ、柴辻ちゃんはさアレシアちゃんのことどう思ってるの?」
「へ?は…春乃ちゃんってば突然だね」
アレシアと麗奈の喧嘩勃発とかいう一件のあと…特に事件とかハプニングに巻き込まれずに、麗奈と別れた私は寮に戻っていた。
そんな寮の一室で、後から戻ってきた春乃ちゃんがふと私に疑問を投げかけてきた。
「そう?だって集会の時にアレシアちゃんがすっごい登場してみんなの注目の的だったし、気になるじゃない?」
「あ、ああ〜なるほどね」
なんでアレシアちゃんの事を…って思ったけど、それもそうだよね。
アレシアがあんな登場をしたら、そりゃあ先に事情を知っている春乃ちゃんなら詳しく聞いて来てもおかしくないもの。
「まぁ、私アレシアちゃんと会った上で柴辻ちゃんがどう思ってるのか知りたいんだ」
「………!? あ、会ったのアレシアに!?」
「うん、顔を真っ赤にしてすごく怒ってたところでぶつかってね?昼頃の話だよ」
っていうことは、麗奈と大喧嘩した後に逃げていった時のことだ!
なるほど、と合点がいくものの…正直に言って春乃ちゃんがアレシアと会っている事を聞いてかなり驚いている。
それに、さっきの春乃ちゃんの問いを考えるにアレシアとある程度仲良くなってそうだし…。
「アレシアちゃん、すごくいい子だったよ?」
「そ、そうなのかな?」
「そうなのかなって…あんなお姉ちゃん思いでいい妹なんてそうそういないよ?それに、柴辻ちゃんってば、らしくないんじゃない?」
「ら、らしくないってどういうことかな…」
「いつもはグイグイいって仲良くなろうとするのに、アレシアちゃんに関してはあまり乗り気じゃない感じがするもの」
春乃ちゃんにそう断言されて、少し喉が詰まった。
そうだ、春乃ちゃんの言う通りだ。
私はアレシアに色々聞きたいことがあるけれど、その色々というのが色々ありすぎて…正直言って声をかけづらい。
いつもなら麗奈の時みたいにグイグイ行っちゃうんだけど、自分から溝を作るなんて…本当に私らしくない。
けど、私らしくないのは分かってはいるんだけど…。
「だ、だってさ…家庭の事情とか、いろいろと…それに」
「それに?」
「麗奈が怒るし…」
「……あ、あ〜…あの人なら絶対怒りそう、というかアレシアちゃんから聞いたけど天城さんって結構ヤバい人だよね?」
うん、やばい。
やばいくらい愛が重くてヤンデレで可愛すぎて悶絶しそうなくらい大好きな私の許嫁です。
ていうか、あまり私の大好きな人をヤバいとか言わないでほしいかな!?いや実際ヤバいんだけどね!!
「まぁ、麗奈だからねぇ……ってそれより、春乃ちゃんってその言い方だと結構アレシアと仲良いわけ?」
「そうだよ?最初会った時は警戒されてたけど、仲良くなったらアレシアちゃんってすごく可愛くて良い子なんだよ」
「ちなみに今は打倒天城さんのために協力してまーす!」
「だ、打倒麗奈ぁ…?」
ちょ、ちょ〜っとなにを言ってるのかさっぱりわかんにゃい……。
いやでも、アレシアが去り際にまた勝負しようみたいな事を麗奈を前に睨みつけながら言ってた気がする!
もしかして春乃ちゃんってそれに協力してるわけ!?
「な、なにいってんの!麗奈は私の大切な人だよ!?」
「いやいや!別に二人して天城さんを暗殺をしようとしてる訳じゃないよ?アレシアちゃん的には真正面から天城さんを倒したいみたいだから、それを微力ながら協力しようと思ってね♪」
「そ、そうは言っても……」
愉快な笑顔でそう言う春乃ちゃんを見て、私はなんとも言えない不安感が募る。
だって大好きな人を倒すための作戦を友達が考えてるなんて言われたら、麗奈の許嫁の身としてはあまりいい話じゃないから。
でも、そんな不安感なんて知りもしない勢いで、春乃ちゃんは楽しそうな様子で私との距離を縮めてきた。
「まぁまぁ、不安になる気持ちも分かるけどさ、柴辻ちゃんもアレシアちゃんと話し合ってみなよ」
「柴辻ちゃんだって、アレシアちゃんと話したいって思ってたんでしょ?それなのにどうしてそんな不安そうな顔をしてるわけ?」
「そ、それは…」
「うーん、柴辻ちゃんがどうして乗り気じゃないのか分からないけど、とりあえず話してみないアレシアちゃんと?」
「…へ?」
答えが上手く出せない時に、春乃ちゃんが柔らかく微笑むと…気になる事を言い出した。
アレシアと話す?それってどういう…。
一瞬思考が固まったけど、春乃ちゃんがアレシアと仲が良いのなら答えなんて決まっていた。
そして、私が声を発するよりも先に…扉の方からノック音が響いた。
◇
高等部専用の寮にて。
お姉ちゃんの友達の春乃お姉さんに言われてやってきたのは、お姉ちゃん達の部屋の前だった。
扉の前に貼ってあるプレートネームにはローマ字でお姉ちゃんの名前と、春乃お姉さんの名前が彫ってある。
間違いない、この部屋の奥にお姉ちゃんがいる…!
お昼の時はあの麗奈っていう邪魔者に邪魔をされたけど、今回は春乃お姉さんっていう味方のおかげでなんとかここまでこれた!
「あの人の話に乗ってよかった♪」
最初は怪しいって思ってたけど、やっぱり日本人はとても優しい。
あの麗奈って人は別だけど…。
「…よしっ」
麗奈のことを思い出してイラッと来たけど、今はそんな事どうだっていい。
お姉ちゃんとようやくお話が出来るのだから、あんな邪魔者なんて忘れた方がいいもの。
けど、いざ会おうとなると少し緊張するものね。
お姉ちゃんとは会話こそしたけれど、親しい関係でもなければ殆ど初対面同然…。
それでも、私がお姉ちゃんに惹かれるのは私とおんなじ髪を持っているから。
だって一目見た時から直感したもの、あの人は私のお姉ちゃんなんだって。
ふふっ、初めて見た時は美人で驚いちゃった。
思わずほっぺにキスしちゃうくらい綺麗で、本当に私が想像した通りの理想のお姉ちゃん。
でも、まさかあーーんな酷い人と付き合ってたなんてびっくり!
本当にあの人とは別れた方がいいって説明しないとっ!
心の中の言いたいリストに書き留めて、私は右手を少し上げて扉を叩く。
コンコンッと軽い音が響くと、すぐに春乃お姉さんの声が聞こえてきた。
『アレシアちゃーん!入って良いよー!』
部屋の主人から許可を貰って、少しだけ緊張が走る。
それでもお姉ちゃんに会いたい欲が強い私は、にまっと口角を上げて勢いよくドアノブを回した。
「お姉ちゃん!さっきぶりね!」
ドアを開いたと同時に光が差し込む。
広がる景色の中でまず認識するのは、こっちを見ている春乃お姉さんと…その横で目をパチクリとさせる金色の髪を持ったお姉ちゃんの姿。
足を踏み入れると、少しだけ視線を動かして部屋の内装を見る。
勉強机が二つと、ベッドが二つ。
春乃お姉さんとお姉ちゃんとでは趣味が分かれているのか、左右に別れて部屋の内装が著しく異なる。
ここがお姉ちゃん達の部屋なんだ…!
なんだか嬉しい気分になって、高揚する気分を高めながら視線の先をお姉ちゃんに切り替える。
「お ね え ちゃーん♪」
「あ、アレシアっ!?って…わあっ!?」
そしてすぐさまお姉ちゃんにだーっしゅ。
飛び付くように私は抱きつくと、慌てふためいたお姉ちゃんがすぐさま受け止めてくれた。
ふわりと、柔らかくていい匂いがする…♡
ああ、やっとお姉ちゃんに抱きつけた♪
ほんとにあの邪魔者のせいで、やりたいこともできないから最悪!
「あ〜♪お姉ちゃんってすごくいいにお〜い」
「ちょっ、わっ!は、春乃ちゃん見てないで助けてよぉっ!」
「え〜?姉妹中が良くて私はとても良いと思うんだけど〜?」
「は、はやくうっ!!」
お姉ちゃんがそう言うと、私は両脇をむんずっと春乃お姉さんに掴まれてそのまま引き剥がされていく…。
ああ〜!!私の居場所が〜〜!!
「ちょっと春乃お姉さん!協力してくれるって言ってくれたのに引き剥がすのは言ってることがちがーう!」
「ごめんねぇ?でも柴辻ちゃん、結構慌てふためいてたからつい…」
ついじゃないのに〜!
むう、と頬を膨らませると春乃お姉さんは「ごめんごめん♪」と謝罪の気もないような返答が返ってきてさらに頬が膨らむ。
って、そんなことをしてる場合じゃなかった。
私はすぐに視線を切り替える。
もちろん視線の先はお姉ちゃんだ、すぐさまお姉ちゃんの方を見ると…お姉ちゃんは驚いた様子で私と春乃お姉さんを交互に見てた。
「二人とも…本当に仲良いんだね」
「うん、アレシアちゃんとは結構仲良しになったから♪」
「…ま、まあ春乃お姉さんには今みたいにお姉ちゃんに会う機会をくれたし…いい人だよ」
割と一方的な人だけど、今みたいにお姉ちゃんと話せる時間を作ってくれたのは本当に感謝してる。
少し照れくさいけど…私は私らしくもなくそんなことを言うと、横で聞いていた春乃お姉さんが満面の笑みで抱きついてきた。
「ありがと〜アレシアちゃん♪もっと仲良くなろうね♪」
「ちょ、抱きついていいのはお姉ちゃんだけだから!」
「え〜?アレシアちゃんはケチだねぇ」
「そこまで許してないの!……そ、それでお姉ちゃん」
「は、はい!……なにかな?」
邪魔してくる春乃お姉さんを無視して、私はもう一度お姉ちゃんを見つめる。
お姉ちゃんは驚いた様子で飛び上がると、目をキョロキョロとさせて落ち着きがない様子…。
「「…………」」
な、なぜだか私までも緊張してきちゃう。
自分から声をかけたのに、なにから話していいかわかんなくなっちゃった。
なにか話の話題を…なんて思った矢先に、横から見ていた春乃お姉さんがお姉ちゃんに向けて声を掛けてきた。
「いろいろ、聞きたいことがあるんでしょ?」
お姉さんがそう言うと、お姉ちゃんの顔がさらに硬くなった。
緊張というより、決意にも似た表情になると…お姉ちゃんは口元をもごもごと動かすと、声を発した。
「あ、あのさ…!アレシアに色々聞きたいことがあるんだけど!」
※
お正月過ぎてしまった。
本当は早めに上げるつもりが中々書けずに遅れてしまいました。すみません。
前回の告白回とは変わって本編に戻りました、あの二人のその後については雨宿り先として貸してくれたおばさんが知ってるぽいです。
その人に聞いた話だと、二人とも顔真っ赤でとても初々しいとのことでした。
それはそうと、新しい話を書きました。
「キライなアイツとキスをした」というタイトルです。
元々書いてた話を書き直した話です、この話と同時並行しつつ不定期で載せるので、どうか見に行って応援してくれると嬉しいです。
それでは…。
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