第46話 水着とマーキング
ギラギラと輝くあっつい太陽!
陽射しに照らされてキラキラと揺らめくプール!
沢山の人に、沢山の屋台に!隣には美少女すぎる許嫁お嬢様!
そんな許嫁の手を引いて、私は駆ける!
「わっはぁー!プールプール!」
「ゆ、結稀さん!準備運動しないと事故になりますよ!」
「だいじょーぶだいじょーぶ!私、運動神経良いし、そんなことでぇっ!事故なんて起きないよーんっ!」
「きゃあっ!」
太陽に負けない笑みを浮かべて、麗奈の手を握った私は高らかにジャンプする!
爛々と煌めく太陽の下、きらきらゆらめく水面下に大きく黒い影が出来上がると、
プールの中は、浅からず深からず。
視界一面水色に満たされて、少し目がしばしばしてぼやけてるけれど。すぐに
そんな、よく見えるようになった視界に映ったのは、不満を
ありゃりゃ…無理矢理ダイブしたから怒ってら。
水の中なのに、冷や汗がたらーりと
それくらい私の許嫁は圧が強い…。
てへぺろっ!と舌をちょびっと出して、謝罪の念を麗奈に送るけど…麗奈はむぅっと眉を寄せて、私よりも先に水面に上がってく。
まってよーっと私も追いかけて、ぷはあっと息を吐くと…ちゃぷちゃぷ浮かんでた麗奈が身体を寄せて言った。
「飛び込みはダメです!あと、準備運動は必ずすること!何かあってからでは遅いんですよ!」
「ご、ごめん…なさぃ」
思ってたよりも本気のお叱りに、私はたじたじになる。
それもそうなんだけど…麗奈の胸が、腕に当たって、ちょっと…いや、だいぶ意識しちゃってるせいか、あんまり話が耳に入ってこない…!
大事な話なのは分かってるんだけど、麗奈の胸って…慎ましやかで小さくて、でも柔らかいんだ…。
「触ってみたいなぁ…」
「きゅ、急になんですかっ!」
「あ!いや、今のは違うの!」
胸に意識を持ってかれて、気が付けばぼそりと呟いてた。
顔を赤らめて恥ずかしがる麗奈に、誤解を解こうと
い、いやいやっ!正直に言っちゃったら、麗奈のお叱りを聞いておきながら胸に集中してた人になっちゃうじゃん!たとえ誤解じゃなくても話題を
「あ、あのっ…えーっと、そう!麗奈の水着!めっちゃかわいいっ!」
言葉に詰まって、喉が詰まって…思考が詰まって…そこから導き出されたのは、麗奈の胸……じゃなくて!麗奈の水着!!
べ、別にじーっと見てたわけじゃないんだからね!?
「きゅ、急に褒めて話を逸らそうとも無駄ですよっ!大体、昨日も言ってたじゃないですか…」
「そ、そーだけど!やっぱりプールに来たら水着の価値はあがるの!麗奈が可愛いの!」
恥ずかしがる麗奈に痛いところをつつかれるけど、駄々をこねる子供みたいに麗奈の水着を指さして言ってやる。
白を基調にした麗奈の水着は、なんていうか気品がある。
麗奈らしいっていうか、そもそもこの水着を選んだのは私だしね!
ちなみに選考基準は麗奈に似合うかどうか!お嬢様で綺麗な麗奈には白が絶対似合うと思ってたんだ!
それで実際めっちゃ合ってる!
ビスクドールみたいに綺麗すぎる容姿もそうだけど、陶器のような白い肌と高級そうな生地の白の水着…。
気品と美しさを兼ね備えた、なんていうの?一種の芸術…というか『白』という概念を具現化した女神様!みたいな?
つまるところ!
「今の麗奈は何度でも言いたくなるくらいめっっっちゃ好き!めっちゃ綺麗!!」
「にゃあっ!?」
麗奈の手をぎゅうっと握ってから、喉を振り絞って想いを口にする。
すると、麗奈の口から子猫みたいな驚きの声が
あはは、照れてる照れてる♡
久々に照れてる麗奈を見て、私はにへへっと悪戯っぽく笑う。
どーだ見たか麗奈!いつも麗奈に愛されてる私じゃないのだよ!隙あらば私だってやってみせるぜーっ!
「ッ…結稀さんがそう来るなら、私だって言ってやります!」
「へっ!?」
ぐぐいっと麗奈が攻めに回る。
頬を染めて恥ずかしがりながらも、情熱のこもった瞳が私を
そのあまりにも
「結稀さんのその水着、ほんっとうに似合ってます!」
ぴしっと私の胸に向けて指をさして、私の水着…オレンジ色を基調にしたパレオだ。
ザ・南国って感じで、麗奈がすごく似合ってますって言ってくれた私のお気に入り。
「結稀さんって私の中のイメージだと太陽みたいな人ですから、やっぱり明るい色が一番似合いますよね!」
「て、照れるよ…」
「まあ、結稀さんは私にとって太陽のような人ですからね、イメージ通りが一番です!」
ふんすっ!と自信満々気な麗奈に言われて、ちょっと恥ずかしさが背筋を駆ける。
むずむず〜っと妙なくすぐったさに襲われて、私は笑みをこぼした。
「えへへっ♪ありがと♪」
私にとって、太陽…か♪
うぇへへ♪麗奈に言われると嬉しいなぁ!
「それに、あまり派手な水着だと…他の人に見られちゃいますからね。流石に派手なのは選べませんでした」
「あ、それは確かに!麗奈ってばエッチで派手なの選びそうだったのに!」
勝手な偏見だけど、でもそうしそうだなあっえいう考えを口に出すと、麗奈はふるふると首を横に振った。
「結稀さん、すごく美人ですから。このような人の多い場所だと…
「へ?私そんなに美人かな?麗奈の方が可愛いよ?」
急に鋭い目つきになった麗奈に、私はきょとんと首を傾げる。
だって、私が美人って信じられないっていうか…麗奈と比べると私なんてミジンコレベルだし。
そう思っていると、麗奈は心を読んだみたいに不満気に眉を寄せて口を開いた。
「私なんか…と自分を卑下しないでください結稀さん。私は結稀さんの全てが好きです!好き好き大好きです。だから、私の好きな人を好きな人自身が
真剣な表情で…麗奈は静かに怒ってた。
少し鋭い口調でそう言われて、私は小さく「ごめんなさい…」とだけ呟く。
それよりも、今すっごく嬉しいこと言われなかったかな?すっごく胸がドキドキしてるんだけど!
「…分かればいいんです。しかし…結稀さんが誰かに狙われるのは避けるべきですね。実際不遜な輩が何人かいるみたいなので」
「ふそんな…やから?」
麗奈が視線を逸らして、向こうを見てる。
私も麗奈の視線の方を見ると、そこには日に焼けてテンションの高いお兄さん達がいろんな人に声をかけていた。
その姿を見てる麗奈が、珍しく顔を歪める。
「覚悟はしていましたが、やはりあのような存在はいるのですね…。もし、結稀さんに手を出したら天城家の力を使って地獄に…」
ぶつぶつと何かこわーいことを呟いてて、ぞわっと背筋が凍りつく。
詳しい事はわかんないけど、麗奈とあの人達を合わせたら、あの人達が大変なことになりそうだ!
とりあえず麗奈の意識をあの人達じゃなくて別の人に向けないと!
と、思っていると麗奈がくるりと私の方を見て、まるで名案!とでも言いたげな自信満々な表情で麗奈が私を見てる。
な、なんだろ…?
「いいことを思いついたので結稀さん、今からキスしていいですか?」
「へっ?こ、ここで!?」
「はい♡なにかトラブルが起きる前に、あらかじめ結稀さんに
「そ、その印とキスがなんの関係があるの?」
おそるおそーる聞いてみる…。
すると、麗奈はクスッと微笑むと、私の前に寄り添って囁くように言った。
「マーキングです♡ 結稀さんが私の物と分かるように、誰にも手出しできないように今からマーキングをします♡」
「マ、マーキング…?」
マーキングとは。
1.しるしをつけること…。
2.動物が尿をかけたり、体をこすりつけたりして縄張りを示すこと……。
例えば、熊とかが木にガリガリーって爪研ぎしてたり、猫がお気に入りの毛布におしっこしたりするとかだね。
ん?つまり私…麗奈に自分の物として今からマーキングされちゃうってこと!?
「へっ!?わ、私にするの!?」
「はい♡今からここで…身体を擦り付けて♪キスをします♪たっぷり…たぁっぷりと結稀さんに
だってそうしないと、結稀さんに
「それに…ずっと前から結稀さんに消えない痕を付けたいと思ってたんです…♡だから、今この場で…」
「へっ、あのちょっ…!い、今からってだめだよぉっ!人いっぱいいるし!麗奈だって恥ずかしいじゃん!?」
私の手首をがっしりと掴んで、キスモードになった麗奈はゆっくりと顔を近付ける。
だめだ、話聞いてない!このままじゃ私、麗奈の物にされちゃう!!
この場には子供とか大人とか…いろんな人がいるのに!ここでキスとかしたら迷惑になるに決まってる!
せめて、どこか人気のないところに移動しないと!!
「だ、だめだよ麗奈!人がいないところでしよっ?ね?」
「いやです♪今ここでしたいです♪」
「で、でもぉっ…!」
それだと周りの人に見られちゃうよ!と不安を顔に出して狼狽える。
なにか、なにかいい案はなにかなあ!?と焦っていると…丁度、今いるこの場所に意識が向く。
私達は今プールの中で立っている。
ちゃぷちゃぷと水面が肌をくすぐっていて、足元は夏の暑さを忘れるくらい涼しい。
それに…水の中なら見られる心配はないんじゃないかな?
「……れ、麗奈!」
「どうしました?嫌と言われても、絶対にしますからね?」
「そうじゃなくてっ!」
考えついたなら…もうやるしかない!
掴まれた麗奈の手を振り払って、私は麗奈の肩を強く掴む。
そして、思いっきり力を入れて二人してプールの中へと頭まで入れる!
このまま頭を冷やす勢いで一気にプールの中に入ると…。
「むぅっ!?」
「…んっ」
私はすかさず…麗奈と唇を重ねた。
驚く声が水音に混じって聞こえてくる。
水中の中でのキスは…いつもより柔らかいとかそんなんじゃなくて、涼しかった。
水の感触の中に、麗奈の柔らかい感触が伝わってくる…。
これはこれで、きもちいい…かも♡
「…ん、んんんっ!」
「…♪」
突然のキスで麗奈はすごく不満そうに声をあげていた。
さっきまでとろんと蕩けた目をしてたのに、すっかりいつもの麗奈に戻ってる。
このままプールから上がれば、不満たらたらに文句を言われちゃうのかな?
それはいやだなぁ。
それに…麗奈にマーキングするって言われた時…実を言うと、うん…すこし、嬉しかったんだ。
麗奈は私のことを見てて、私が好きで、誰かに触れさせてあげないくらい…私を愛してくれてる。
私は…まだよく好きが分かんない中途半端で意地悪な子なのに、それでも麗奈は好きでいてくれてる。
マーキングって言われて、嬉しいな決まってるじゃんか…。
「………」
こぽぽっと唇の隙間から息が漏れる。
不服そうに眉を曲げる麗奈に、私はふにゃりと笑みを浮かべてから…そして。
「…!」
「♡」
ぎゅうっと…だきしめる。
足を絡めて、手を背中に当てて…胸を押し付けあって…唇も押し付ける。
私達の境界線がなくなるくらい、ぎゅうーーっと抱き合って、それで擦り付けるみたいに身体を揺らす。
ぎゅっ♡ぎゅっ♡って優しく、強く…甘く抱きしめて麗奈が恥ずかしくも
かわいい♡って思いながら、息が続く限り…涼しい世界で二人きり、私達は抱きしめあって…それで。
「「ぷはっ!」」
タイムオーバー。
息を求めてプールから上がると、はあはあと荒い息遣いで私達は見つめ合う。
すると、麗奈がジト目で睨みながら呟いた。
「ずるい…」
「恥ずかしいって何度も言ったのに聞かない麗奈が悪い」
「…そうですけど、あれはずるい…すごくずるいです。結稀さんからするなんて…思ってもみなかったから!」
「でも、まだ麗奈のしたいキスマークが残ってるね?」
ぷんすか怒る麗奈に、冗談めかして私は言う。
あんなキスをしたせいか、私…今すごくキスをしたい気分になってる。
唇が…冷たさじゃなくて、熱を求めてるのを肌で感じる。それになにより…。
麗奈の熱じゃないと…私、我慢できないかも…。
「ね、ねぇ麗奈…」
「はい」
「さっきも言ったけどさ、人気のないとこ…いこーよ…」
「それは、どうしてですか?」
もじもじ震えながら言葉を紡ぐ私に、麗奈は分かってる癖に聞いてくる。
ずるいのはどっちだよ…と内心悪態付きながら、私はぽしょりと…呟いた。
「麗奈にマーキング…して、ほしいから…です」
※
昨日は投稿休んで本当にすみません。
未だ慣れない生活に戸惑っていたら、書く時間がありませんでした。
以降も、昨日みたいなことが続くと思うのでまたあらかじめ謝罪をしておきます。
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