第30話 溺れるくらいキスをしよう
テディベアをベッドの横に置いて、熱を
横を向けば至近距離で麗奈の顔があって、ふるふると揺れる瞳は私だけを映していた。
その光景にドキドキと胸を鳴らしながら、私は更に麗奈へと近付いてく…。
もぞもぞと、シーツの
「「……………」」
ぎゅうっとシーツを握りしめる。
恥ずかしくて、どうにかなりそうで、燃えてしまいそうで、逃げ出したい気持ちを必死に
麗奈は私だけを見てた。
じっと、目を背けたくなるくらい私を見つめて頬を紅色に染めていた。
恥ずかしいのはどっちもお互い様。
だけど、麗奈はこのこそばゆい気持ちをどこか楽しんでるようにも見える。
口元が
「ぅ、ぁぅ…」
対して私は喉を絞りきったようなうめき声しか出なかった。
この状況がひたすらに恥ずかしくて、むずむずと奥底が
ここから先、どうしたらいいのか分からない…!
ぐるぐると渦巻く思考の中、私は必死に考え込んでいると…。
麗奈はむっと頬を膨らませた。
不満を膨らませて、もうっ!と痺れを切らしたみたいに身体を寄せはじめる。
「結稀さん…恥ずかしすぎです!いつになったらキスしてくれるんですか?」
「だ、だってぇ…!私からキスするとか…は、はずかしくて無理じゃん!」
「いっつも私に好きって言ってくるのに、こういう時だけ怖気付くのやめてください!」
やいのやいのと麗奈は不満を爆発させる。
不満な表情を浮かべながら、麗奈はぴっちりと身体を密着し合うと…麗奈の足が、私の足に巻きつき始めた!
「…♪」
「えっ?わ、麗奈っ!?」
ニヤリと、目を細めて蠱惑的に
蛇みたいに器用に私の足に巻き付くと、麗奈は私の上にのしかかったような体勢になる。
胸を私の胸に押し付けて…絡めた足をもぞもぞと動かしながら、顎と顎が当たる体勢で麗奈はクスクスと笑った。
「してくれないなら、私からしますよ♪」
ふふっ♪と愉しげに笑って、麗奈はぎゅうっと更に身体を押し付ける…。
あったかくて柔らかい感触が私を襲って、思わずびくりと身体を震わせた。
麗奈ってば、大胆すぎる…!
あわわわわわわっ!!と混乱の叫びをあげながら、私の視線は麗奈にだけ向いていた。
今すぐ逃げ出したいくらい恥ずかしいのに…どうしてこんなにも釘付けになっちゃうんだろう?
麗奈は私のことが好きだから…それが嬉しくて仕方がないっていう気持ちもある。
だけど、私がこうして麗奈と一緒にいるのは…もっと別の意味なんだと思う……。
「結稀さーん?なにか考え事ですか?私のことを無視しないでください」
「あっ、その…ごめん」
思考が別の事に
麗奈はすごくムっとした表情で、不満がこれでもかと溢れてた……。
そんな麗奈に、私は思わず「ぷっ!」と吹き出してしまう。
やっぱり、どれだけ積極的になっても、大胆でも…麗奈のこういうところは何も変わらないんだなって安心してしちゃう。
「な、なに笑ってるんですか!」
「んふふっ…やっぱり麗奈は麗奈だねぇって思って」
私のことが大大大好きで、そのせいでどんな事にも嫉妬してしまう私の許嫁。
昔は人間嫌いで誰とも関わってなかった、なーんて言われてるけど…やっぱりそれは嘘だよ。
だって、本当だったらきっと麗奈は…。
「こんなにも可愛いわけないもの」
「なっ!?急になんですか!」
あ、しまった。
溢れちゃった言葉に、お口チャックをして黙り込むけどもう遅い。
麗奈は目を白黒とさせて驚くと、頬を赤くしたまま…じぃーっと私を見つめてくる。
「ち、ちなみに…私のどこが可愛いですか?」
ぽしょぽしょと…口元を尖らせて、更に身体をくねらせながら麗奈はそんな事を聞く。
その可愛い仕草と態度に、キュンっと胸がときめいて…私は照れながら言った。
「は、初めて会った時から…麗奈は可愛くて、私の一目惚れだったんだ…」
「友達になった時…麗奈の私に慣れない感じも可愛かったし、段々と私に慣れてくる麗奈も可愛かった…!」
私が三人組と話している時に初めて嫉妬した時、私…可愛すぎてすっっごく
もうなにこの子?ぎゃんかわいい〜っ!ってさ。
「私のことが好きで詰め寄る麗奈も可愛いし…ちょっとした失態で落ち込む麗奈も可愛い…自信満々になったりコロコロと態度が変わるのも可愛くて好き…」
「猫に嫉妬したり…犬みたいに喜ぶ姿も、全部大好きで全部可愛い…」
ぽつりぽつりと…麗奈の『かわいい』ところを少しずつ
最初は指で数えていたけど、気が付けば数えることをやめて…記憶に浮かぶ麗奈の姿を思い返しては、思い出し笑いを浮かべて麗奈を見つめた…。
「……私のことっ…ほんと好きですよね!結稀さんは!」
「あははっ、なにその顔?怒ってるの?喜んでるの?」
「わかんないですっ!」
麗奈の顔は、なんかもうごっちゃごちゃになった変な顔だった。
死ぬほど喜んで顔が真っ赤で、だけど不満も溜め込んだ怒りが見え隠れ…。
当の本人もわかってないみたいで、ふいっと向こうを向いてしまう。
その一連の動作がおかしくて…私は更に笑って、麗奈に言った。
「好きなのはお互い様だねっ!」
「………そーですね」
そっぽを向いてた麗奈が、視線を戻して言うと少しだけ沈黙が流れ始めた。
壁に掛けかけている時計の音が、部屋に響いて…私達はまじまじと見つめ合う。
今の私に…もう恥ずかしさはなかった。
不思議だけど、今の私はなんか…麗奈にキスをしたいって思ってるんだ。
その薄いピンクの柔らかい唇を…私の唇で重ね合わせてみたい…。
このじわじわと
あ、そっか私、今…麗奈とキスがしたいのか。
「キス…していい?」
私は私が分からない。
でも、麗奈と見つめ合って…少しは自分のことが分かった気がした。
以前、柳生さんに「少しわがままになれ」って言われたのを思い出す。
誰かの為じゃなくて…自分の為に…。
鼻先を当てて、麗奈の吐息を肌で感じる。
「はい…」
◇
「キス…していい?」
とろん…と、
すると、結稀さんは顔を上げて…私の鼻先が結稀さんの鼻先に当たります。
その姿に、ぞわぞわと…背筋に"何か"が走り去りました。
身体の奥底からじくじくと疼き初めて、指先がふるふるとむず痒くなり始める…。
すると…腹部の下が僅かに揺れ動いたような気がしました。
きゅんっと…大きな欲求と共に、私の身体を駆け巡ります。
今すぐ目の前に倒れ
結稀さんが…そんな事を言うなんて思いませんでした。
約束とはいえ、結稀さんはきっと恥ずかしがってやってくれないでしょう…と思っていたので、この行動は予想外でした。
でも、こんなにも嬉しい予想外はありません。
「はい…」
熱の灯った、結稀さんの唇を…私はまじまじと見つめたあと、結稀さんを見ます。
それは、心の奥底をくすぐるような…とても可愛らしいお顔をしていました。
言うなれば恋する乙女のような顔と言ってもいいでしょう。
全体が真っ赤に染まって、揺れ動く瞳は私だけを映している。
唇は僅かに震えているものの、熱を帯びたそれはとてももの寂しそうに見えました…。
言葉通り、結稀さんは…本当に私とキスがしたいんですね。
嬉しさと恥ずかしさが込み上げてきて、私はもにょもにょとした気持ちに襲われます…。
そして、私は目を
結稀さんからのキスを…私は待ちます。
ドックンドックンと異常なまでに心臓が高鳴っていました。
このまま、心臓が爆発してしまいそう…。
心の中、ふいにそう思っていると。
「んっ…!」
柔らかい感触が…私の唇に走りました。
「……ぁ」
「〜〜ッ!は、はずかしいね…えへへ」
唇に指を当てて、柔らかな感触を思い出そうと目を開けると…結稀さんは恥ずかしがりながらも、えへへっと照れ笑いを浮かべている…。
目をきょろきょろと移動させながら、パタパタと手で
とても暑いのでしょうか?結稀さんの顔にはじっとりと汗が付いていて、強く手を仰いでいます…。
いえ、私自身…とても暑いです。
結稀さんにキスされてから…身体の奥底が燃えるように熱いんです。
まるで、私そのものが太陽になったような感覚でした。
「ね、ねぇ麗奈…どう、だった?私のキス」
「そ、そんなの…!」
とても良かったに決まってるじゃないですか…っ!
でも、でも!
「ま…まだしたりないです」
唇に指を
もう一度したい…いえ、何度でもしていたい。
ぽっかりと空いた穴を、結稀さんの愛で埋め尽くしてほしい…そんな思いを込めて、私はねだると…。
「だ、だよね?私も…まだ、したい……」
結稀さんは…顔を手で覆い隠して、全身を真っ赤にしながら言いました。
その姿に…あまりの可愛さに、私は…!
「もう、我慢できませんっ!!」
「えっ?あ、麗…んぅっ!」
言葉通り、我慢が出来ませんでした。
溢れ出る欲望のままに、結稀さんの唇を許可なく奪う。
感触を味わって…愛を確かめて、そして物足りなくて…。
「結稀さん…結稀さん!すき、すきです!結稀!」
「あっ、麗奈…!そこだめっ!なめちゃ、吸うのも…!」
キスをするだけでは、足りません。
首元にキス痕を付けて、確かな達成感を得たり。
顔や首元を舐めて…唾液に
優しく噛んで…残った歯形に支配欲を覚えたり…。
キスをして、舐めて、吸って、噛んで…。
考えうる限りの全てを結稀さんに与えて、私は息を切らしたまま結稀さんを見ました。
汗でべっとりと肌に密着する髪…。
顔から首元まで…私の
私が達成感に酔いしれていると、息を切らしていた結稀さんがよろよろと立ち上がります。
結稀さんは苦笑を浮かべながら言いました。
「もう…これ、責任取れるの?」
首元に付いた無数のキス痕を見て、結稀さんは困ったように言いました。
そんな困り種を私は笑って言います。
「私達が大人になったら、きちんと責任を取ります。だって、許嫁ですから♪」
そう言って、私達は笑い合いました。
あははっと部屋に笑い声が響くと、すぐにそれは止んで…結稀さんの表情に私はドキッとしました。
なんですか、その顔…。
「…ね、ねぇ麗奈」
「は、はい…」
ごくりと生唾を呑んで、私は返事をします。
すると、結稀さんは恥ずかしがりながら言いました。
「まださ、その…キスしたい…というかその」
「舌を入れてするキス…とか、してみたい……って、思ってたりしてぇ〜……」
くねくねと指を絡ませてながら、結稀さんは言います。
ほ、ほんとに…本当にこの人はっ!!
「…結稀さんのえっち」
「なっ!舐めたりしてきた麗奈に一番言われたくないっ!」
「自分からディープキスを求めてくる人に言われたくないです!」
「じゃあ私としたくないの!?」
「したいに決まってるじゃないですか!!」
「「…………………」」
「じゃあ…する?」
「……しましょう」
微妙な沈黙のあと、ベッドの上で正座になった私達は気まずいながらも寄り添い合います。
そして、お互いの指を絡ませた私達は…ゆっくりと顔を近付けて、唇を重ね合わせました。
もう、何度交わしたか分からない口付け…。
けれど、そんな何度目かのキスはいつもとは違いまして……。
「んっ…結稀さん♡」
「れいなあっ…れいなっ…♡」
先に舌を入れたのは…結稀さんでした。
柔らかな舌が口の中に侵入し、そしてくねくねと生き物のように回ります。
私の舌を確かめるように絡まると、柔らかくてねっとりとした甘い唾液が…私の口の中に広がりました。
ああ、結稀さんだ…。
この感触、この気持ちよさ… 結稀さんをすごく感じる。
口の中で一体となって、絡まり合った舌はくねくねと踊る。
互いに吐息と共に…甘い声をあげると、私達は長い時間…深い口付けに溺れるのでした。
※
キス回です
書く前「キスだけで5000文字はむりでしょw」
書いた後「いけた…(ドン引き」
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