第27話 許嫁の証明④
あのじめじめした空気はどこかに消えて、気が付けばカラッとした空気に、
私よりも
行き先はもちろん、麗奈の屋敷。
寮から麗奈の屋敷までの距離は、実を言うと学校よりも遠かったりする。
でも、毎日歩き続けてるせいかそんな事は気にせずに、歩き慣れた道を進んでいく。
学校の通学路より、麗奈の屋敷までの道のりの方が完璧に覚えてる辺り、私ってホント麗奈のことが好きなんだなって思う。
ふふっと、自分の麗奈好きに苦笑を浮かべながら、ショートカットの狭い道を通ると目の前には麗奈の屋敷が広がっていた。
私は制服の埃を綺麗に落としてから、ドキドキと緊張する心を胸にインターホンを鳴らす。
玄関前の門は…相変わらず大きくて豪華で心臓に悪い。
まさしくお金持ちの住む豪邸って感じで、私は未だ慣れることがない。
インターホンを鳴らして待っていると、すぐに返事が返ってくる。
声の主はもちろん柳生さんで、淡々としているものの凛とした声は相変わらずかっこいい。
『柴辻様ですね、今門を開けます』
そう言うと、門は自動に開いて私はそのまま玄関の方まで歩く。
すると、私が扉を開ける前よりも早く…ドアノブは勝手に傾いた!
ガチャリと音を立てて、扉は開かれると…色素の薄い亜麻色の髪がふわりと舞った。
「結稀さん!」
「れ、麗奈!?」
どんっと、勢いよくお腹から麗奈に抱きつかれて、私は体勢を崩しそうになる。
まるで主人の帰りに喜ぶ大型犬みたいで、それを想像してしまった私は思わず笑ってしまう。
ほんと、なんなんだこの女の子…可愛すぎじゃない?
私のことが大好きで仕方ない美少女の頭を優しく撫でて…私は困ったなあと苦笑を浮かべる。
麗奈は、顔をお腹にうずくめたまま…ずっとこの状態をキープしていた。
というか、すーはーすーはーと鼻で呼吸する音がすごく伝わってくる…!!
私の匂い
顔を赤く染めて恥ずかしがっていると、後から続いて柳生さんがやってくる。
柳生さんは麗奈の両脇を掴むと、そのままひょいっと私から離れさせる。
「柴辻様に迷惑ですよお嬢様」
「だ、だって昨日は会えなかったんですよ!仕方ないじゃないですか!」
それに柳生さんはずっと結稀さんの隣にいたじゃないですか!と頬を膨らませてぷんぷん怒る麗奈に、柳生さんの表情は少しだけ困り顔になる。
そんな二人を見ていた私は、くすくすと思わず笑ってしまった。
「ふふっ、麗奈って誰でも嫉妬するよね」
「し、嫉妬じゃありません!許嫁として結稀さん成分を補給しないといけないんです!」
「結稀さん成分?」
「結稀さん成分ってなに?」
ちょっとよく分かんない単語に柳生さんと私は反応して、首を傾げる。
麗奈はそんな私達を見て、恥ずかしがりながらも説明してくれた…。
「ゆ、結稀さん成分とは…結稀さんと接触することで得られる次世代のエネルギーです。こうしてお腹を吸ったりすると、運動能力の向上や脳の回転率の上昇…はたまた病気にもかからなくなるんです!」
なにその胡散臭い次世代エネルギー!?
ていうか効果がめちゃくちゃ強いね!!
自信満々に語る麗奈に、少し引き気味の私はふと柳生さんの方を見た。
数日前はすごくお世話になったし、その時に言われた言葉が…まだ私の中でうずくまっている。
誰かの為じゃなくて、私の為…。
柳生さんが私に言ったこと、未だに私は分からない…。
もやもやだけが覆っていて、疑問符だけが頭に浮かんでいる。
そんな私の考えを、柳生さんは気付いたのか微笑むように表情が
あれから思ったけど、柳生さんって結構表情の変化あるよね…。
私が柳生さんを見ていると、ふらふらとした足取りでぽふっと麗奈が抱きついてきた。
どうしたの?と麗奈を見ると…麗奈は僅かに震えた様子で、ぬいぐるみみたいにぎゅっと抱きしめている。
「今日は…期末テストですね」
「うん」
麗奈の言う通り…今日は期末テストの人。
私が実力を証明する為の日でもあり、期末テストが終わってしまえば一学期が終わる。
実力を証明しなければ、私は怜夜さんに許嫁として認められず、私達の関係は解消されてしまうかもしれない。
私はある程度覚悟が出来ているから緊張はしてないけど、麗奈からすれば怖いものだと思う。
全部、私の手に掛かってる。
私が怜夜さんに実力を証明しないと、私達に明日は来ない。
だから麗奈は震えている…。
だから私は、そんな震えて抱きしめてくる麗奈をぎゅっと抱きしめ返した。
「え!ゆ、結稀さん!?」
慌てた声が耳元を掠めるけど、私は無視して両手を小さな背中まで回して…私の身体へと寄せる。
ぎゅうっと更に密着して、麗奈の温もりが私の身体に伝わってきてポカポカする…。
それに、とっても良い匂いがした。
「あ、あのっ…結稀さん、突然抱きしめられると…は、恥ずかしいのですが!」
「んー?先に抱きついてきたのは麗奈じゃん♪なら、私も抱きしめてもいいよね?」
「た、確かにそうですが…!そ、その…近いです!」
麗奈だっていつも近いくせに…。
まるで私が悪いみたいに言う麗奈に、むっと頬を膨らませると、私は更にぎゅうーっと強く抱きしめる。
全身で麗奈を感じながら、恥ずかしいくらい長い時間が流れていく…。
「あ、わわ…ゆ、結稀さん…結稀さん」
呂律の回らない舌で、麗奈は必死に私の名前を呟いてる。
あわあわと麗奈の手が慌てていて、私の背中をぽんぽんと叩いて解放をせがんでくる。
でも、離してなんかやらないって私は意地悪に笑う。
麗奈がやったように麗奈の匂いを嗅いで…麗奈の感触をひたすらに楽しむ。
「ゆ、ゆうきさん…ほ、ほんとにもう…は、はずかしいです…」
そうしていると、麗奈がか細い声で限界を告げた。
私は仕方がないなぁ…と名残惜しさと共に、そっと麗奈を解放する。
解放された麗奈は息を荒げた様子で、全身ピンクに染めてから…震える瞳で私を見ていた。
「ふふっ、今の麗奈めっちゃ可愛い♡」
「い、いわないで…くださいっ…」
ぐずぐずに溶けて、何故だかもっとしてやりたいって気分になってくる。
もっと真っ赤に染めたら、一体どうなっちゃうんだろうと想像しながら…私は抱きしめた理由を麗奈に言った。
「もう、怖くない?」
「…わかってました?」
「当たり前じゃん、あれだけ震えてたら誰でも分かっちゃうよ」
麗奈が苦笑を浮かべながらそう言って、私はさっきの感触を思い出しながら言う。
今のは、抱きしめていれば…怖くなくなるかなって思ってやったんだ。
…だって私、麗奈のことが好きだから。
可愛くて大好きだからこそ、私は麗奈のことを大切にしたいって思ってるから。
だから抱きしめたんだ。
「麗奈、私…絶対に認められてみせるから」
真剣な眼差しで、私は言う。
安心してほしいと、無責任だけど私は麗奈に押し付ける。
あれだけ勉強したんだもん、必ず認められて麗奈の側に戻ってくるよ。
「だって私は、麗奈のことが好きだからね♡」
えへへっといつもの笑顔を浮かべて、私は麗奈の頬にキスをする。
恥ずかしさを胸に飼って、熱い唇を頬に当てると…私はいたたまれなくなってそっぽを向いた。
わ、私からキスしちゃった!
きゃー!っと内心恥ずかしさで叫んでいると、麗奈が声にもならない叫び声を上げる。
「ッ〜〜〜!!」
しゅっぽーー!!っと
わ、もしかしてやりすぎた!?
爆発した麗奈に、私がすぐさま麗奈の元へと駆け寄ると…麗奈はぷすぷすと真っ赤な表情で視線を合わせてくれない。
「ゆ、結稀さん…今のはひ、卑怯です…!」
「ご、ごめんね?まさか爆発するとは思わなくてさ…」
「…で、でも、うれしかったです」
もにょもにょと…唇を
そっか、嬉しかったかぁ…なら良かった。
「そ、それでその…キスをしてくれたお礼と言いますか…私も結稀さんに渡したいものがあるんです」
「渡したいもの?」
首を傾げていると、麗奈はポケットからごそごそと何かを取り出した。
握られた手にはお守りが二つあって、赤と青の色がある。
そのうちの赤の方を…麗奈は渡してくれた。
「これって…」
「そ、そのですね…結稀さんに何かその、手助けしようと考えたんですが、うまく考えられなくてお守りを買ったんです」
なるほど、神頼みか…とお守りを見て私は納得する。
というか麗奈は神頼みとかするタイプだったんだなあ…と意外に思っていると、お守りを見て固まった。
「これ、恋愛成就のお守りだ…」
「は、はい!私達の関係がより一層良くなるように恋愛成就のお守りを買ったんです!」
ぐいぐいと距離を縮めて説明する麗奈。
そこは学業成就とかじゃないの!?とツッコミを入れるけど……。
「ふふっ、麗奈らしいね」
恋愛成就のお守りをくれる辺り、ちゃんと麗奈なんだなぁ…と私は思わず笑ってしまった。
「わ、私らしいってどういうことですか?」
「私の事が大大大好きなんだなって思ったの」
あははっと笑いながら、私は恋愛成就のお守りを鞄に付け始める。
私は神様とかは信じないけど…どうか神様、私達のことを助けてくれると嬉しいかな。
そうしたら、私達はもっと仲良くなれそうだから。
※
話がまったく進んでない。
それに今回は流石に面白味がない…!
体調不良の状態で書いていたせいでこうなってしまったので、次回こそはきっちりと書きます。ほんとすみません。
それよりフォロワー数が300人を超えました。
本当にありがとうございます!
かなり伸びが良く進んでいるので、このまま応援を続けてくれると犬的にもとても嬉しいです。
なのでその感謝の印に、天城と柴辻の『こんなところが見てみたい!』っていうのがあればコメントで書いてください。書きますから。
それが自分に許された唯一の感謝…
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