十三
ところが猿は私のやり方がまだるかったのでございましょう。良秀はさもさももどかしそうに、二、三度私の足のまわりをかけまわったと思いますと、まるで
それが良秀の娘だったことは、何もわざわざ申し上げるまでもございますまい。が、その晩のあの女は、まるで人間が違ったように、生々と私の眼に映りました。眼は大きく輝いております。頰も赤く燃えておりましたろう。そこへしどけなく乱れた袴や
すると娘は唇をかみながら、黙って首をふりました。そのようすがいかにもまた、くやしそうなのでございます。
そこで私は身をかがめながら、娘の耳へ口をつけるようにして、今度は「誰です」と小声で尋ねました。が、娘はやはり首を振ったばかりで、なんとも返事をいたしません。いや、それと同時に長い
性得愚かな私には、わかりすぎているほどわかっていることのほかは、あいにく何一つのみこめません。でございますから、私はことばのかけようも知らないで、しばらくはただ、娘の胸の
それがどのくらい続いたか、わかりません。が、やがて開け放した遣戸を閉しながら、少しは上気のさめたらしい娘の方を見返って、「もう
見るとそれは私の足もとにあの猿の良秀が、人間のように両手をついて、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます