三
良秀の娘とこの小猿との仲がよくなったのは、それからのことでございます。娘はお姫様からちょうだいした
こうなるとまた妙なもので、誰も今までのようにこの小猿を、いじめるものはございません。いや、かえってだんだんかわいがり始めて、しまいには若殿様でさえ、時々柿や栗を投げておやりになったばかりか、侍の誰やらがこの猿を
「孝行な奴じゃ。ほめてとらすぞ」
かような
さて良秀の娘は、面目を施して御前を下がりましたが、もとよりりこうな女でございますから、はしたないほかの女房たちのねたみを受けるようなこともございません。かえってそれ以来、猿といっしょに何かといとしがられまして、取り分けお姫様のおそばからはお離れ申したことがないと言ってもよろしいくらい、
が、娘のことはひとまずおきまして、これからまた親の良秀のことを申し上げましょう。なるほど猿のほうは、かようにまもなく、皆のものにかわいがられるようになりましたが、かんじんの良秀はやはり誰にでもきらわれて、相変わらず陰へまわっては、猿秀
しかし実際、良秀には、見たところが卑しかったばかりでなく、もっと人にいやがられる悪い癖があったのでございますから、それも全く自業自得とでもなすよりほかに、いたしかたはございません。
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