第18話 悪即斬☆

 「うおりゃぁぁっ!!」

 「死ねぇっ!!」


 右から斬りかかってきた男を横払いにし返す刀で左から来た男を斬り飛ばす。

 赤い血飛沫で床が濡れればその分、相手の足は滑りやすくなり相手の速度は落ちるのだ。

 

 「今のはまぐれだ!!

 「数で押し込め!!」

 「女の方を拘束しろ!!」


 相変わらずの力押しを行うとともに、三人あまりがシャリスを囲んだ。


 「大人しくしないとその顔に傷がついちゃうぜ?」


 シャリスのサイバーヘルメットに向かって下卑た声で言った男は、


 「【浮遊フロート】」


 シャリスが詠唱した次の瞬間、宙を舞っていた。


 「残念ね、私の顔はただの顔じゃなくて、超絶綺麗な顔よ?」


 シャリスは魔杖をバットのように振るうと、宙を舞っていた男を打った。


 「場外ホームランね」


 男は建物の屋根を貫きどこかへと飛んでいってしまったのだ。

 ついでに【上級防壁グレートウォール】をぶち破ってるし……。

 タネを明かせば、男は【浮遊フロート】で強引に宙を浮かべられた後、魔杖に強化魔法をかけ、さらに自身の腕や筋肉を同様に強化して魔杖を振るったということだった。

 相変わらずえげつないことを考えるな……。


 「ほらほら、次はどう殺されたいかしら?」


 言葉と共にチカチカとサイバーヘルメットの電飾を点滅させて男たちの恐怖を煽った。

 絶対コイツ楽しんでやってるだろ……。

 

 「ヒィッ……!!」

 「悪魔ッ!!」


 男たちは武器を捨てて震え上がった。


 「ふふっ、いい気味ね。【拘束バインド】」


 武器を戦意と共に捨てた瞬間、シャリスは抜け目なく拘束した。


 「さて、お前らはどうする?」


 ぶっちゃけ無益な殺生は避けたい。

 それにコイツらは生きて罪を償うべきだろう。

 とりあえずレーヴァテインに光を纏わせ、威圧した。

 魔法適性はなくても勇者と神話時代の聖剣のコンビだ、これくらいはできる。

 狙い通り、冒険者や傭兵崩れたちは、後ずさった。


 「何をグズグズしている!?殺っちまえ!!」


 奥からバスローブ姿の男が女を侍らせながらやってくると冒険者崩れの男たちをけしかけた。

 よく見たらテント張っちゃってるし……この男、さっきまでナニしてたんだよ……。

 てか、出てきてくれたおかげで手間が省けたか。


 「シャリス!!」


 声掛け一つでシャリスは俺の意図を察した。


 「【拘束バインド】」


 破壊されたことにより無力化された【上級防壁グレートウォール】は意味をなさず、奥から命令していた男をあっという間に締め上げた。

 

 「縮地」


 勇者として体得したスキルでもって一気に距離を詰め、男の背後をとる。

 そしてその男の首筋に剣を突きつけた。

 

 「全員、死にたくなければ武器を置け」


 見たところ、コイツらは寄せ集めの集団であり、雇用主の男に対して忠誠心は持ち合わせていない。

 それでいて自身の命の危機である以上、資本である自身の身体を失うようなことはしたくないはずだ。


 「悪かったぜ、兄ちゃん」

 「このままお咎めなしってわけには行きやせんかね?」


 などと各々勝手なことを言い出した彼だったが、

 

 「そんな都合のいい話があるわけないじゃない?【次元牢獄ディメンション・プリズン】」


 と異次元空間に問答無用でぶち込まれるのだった。

 アイテムボックスがわりにシャリスはよく活用している帝級魔法なのだが、こういうときは結構便利だな。

 これが初めてまともに活用された瞬間だった。

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