第13話 不審者を探してる側の見た目がよっぽど不審者だったらしい
「さて、仕事の時間よ」
勇者よりも勇者らしくパーティを仕切っていたシャリスは、サイバーヘルメットを装着した。
「久しぶりに聞くな、そのセリフ」
敵が来たときなんかは、気を引き締めるためにシャリスはよくその言葉を口にしていた。
「私も欲しくなっちゃいますねぇ〜、二人だけとか妬けちゃいますよ?」
脇からそんなことを言ってくるクロエには喫茶店に残ってもらうことにして俺とシャリスとで校門へと続く通りに出た。
「
「わかったわ。魔法の早撃ちは大得意よ」
シャリスの同意を得て、勇者の持つ能力の一つである
兎人族の
「どうかしら?」
「いや……まだ異常はないな……」
感じる気配は、俺たちを避けるようにして下校していく兎人族の学生たちのものだけだった。
ってか……なんで避けられてるんだよ!?
答えを求めるようにしてシャリスを見つめるとすぐに納得出来た。
「これのせいかよぉぉぉぉっ」
周りの風景とジャンプスーツ&サイバーヘルメットという格好があまりにも不釣り合いなのだ。
「肝心の学生に逃げられたら、犯人も近寄って来ないんだよなぁ……」
「畏敬の念で見られてるとかじゃなくて?」
「絶対違うと思うぞ……」
そんなやり取りをしていると、クロエが走ってきた……。
「まったく手がかかるんですからぁ」
「何も世話をかけてるつもりはないんだけど?」
シャリスの反応にクロエはため息を零した。
「は〜い皆さん、この人たちは怪しい人ではないですよ〜。ほーらこの通り、発情メスウサギが近寄っても襲ってきません!!」
クロエはパンパン、と手を叩くと俺に抱きついた。
「むきぃぃぃぃッ!!」
そして歯ぎしりし出したシャリスに向かって挑戦的な眼差しで
「第一印象大事なんで落ち着いて欲しいですねぇ」
といつも通り火に油を注いで反応を楽しんでいた。
「こんのぉぉぉぉぉんんんんんんっ……はぁ……」
お、堪えたか。
「というわけでこの人たちを避けて通る必要はありません。それにこの二人は貴方たちを守るために遠くから来てくれたんですよぉ?」
クロエがそう言ってくれたことで、学生たちは避けて通るのをやめてくれた。
「ふぃ〜どさくさに紛れてカナタさんに抱きついちゃいました。役得役得ぅ〜!!」
怒りのあまりにサイバーヘルメットの電飾をチカチカさせるシャリスをクロエは腹を抱えながら笑って指さした。
「後で覚えて―――――ひゃうっ!?」
怒りに任せて怒鳴りそうになったシャリスを、俺は咄嗟に抱きしめて黙らせた。
人前でやるのはあんまり気乗りがしなかったが、暴走しかけたシャリスを黙らせるのはこういうやり方が
「せっかくクロエがみんなに言ってくれたんだ、台無しになんてしないよな?」
そっぽを向いたシャリスは、小さな声で
「カナタからしてくるのはズルい……」
と、ボソボソと言ったのだ。
「なんか二人だけの空間を作られるとイラッとするんですけど?」
あっちを立てればこっちが立たず、クロエが不満そうに言うのは申し訳なかったが、我慢してもらうことにした。
だがそんな時間は、あっという間に過ぎ去った。
「っ!?」
「お、来ちゃった感じですが?」
ぴょんぴょんっと耳を動かしてクロエは言った。
「どうやらそうらしいな、シャリス出番だ。場所は――――――」
俺が相手の場所を共有するよりも早くシャリスは詠唱を口にした。
「【
俺とシャリス、そしてクロエ以外の時が止まったのだ。
「【
「あっ……テヘッ」
クロエ相手に暴走しかけたシャリスはしかし、魔法は暴走したままだった――――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます