第12話 情報の対価
情報提供の対価は、昨今リエージュで頻発するとある事件の解決だった。
「最近、発情期を迎えた
身体能力こそ高いまでも
故に魔法で姿を擬態している連中がいたとしてもそれを看破出来ないのだ。
「犯人に目星はついてるのか?」
魔法が使える種族と断定するなら、対象はだいぶ絞られる。
「
人族の種類が多いといっても足の形状はそれぞれに異なる。
故に靴を履くことが当たり前の世の中ではあるが、足に合わせた靴の形があり、歩く音は種族によって違うというわけだ。
もっとも兎人族のように聴覚が余程良い種族くらいでしか判別は出来ないが……。
「なるほど……で、クロエはどうしたいわけ?」
「そうですねぇ……まずは同胞の解放を求めましょうか。その後は、もう悪いことが出来ないように手足でももいで大樹海の深淵に捨てて来るとかでお願いします」
おっと……これは結構怒ってるんだな……。
「というと最低でも生け捕りが条件というわけか。シャリスの出番だな」
俺は得物が剣である以上、対峙した相手を瀕死に追いやってしまうことが多いが、その点シャリスの魔法は自由自在であり敵を生け捕りにすることなどわけもないだろう。
「ふふふ、頼れるところを見せてあげるわ!!」
シャリスはそう言うと爛々と目を輝かせたのだった。
頼むから街中で魔力を放つのはやめてくれ……通りを行き交う人達みんな怖がっちゃってるからね?
◆❖◇◇❖◆
俺たちはリエージュにある兎人族の学校の校門前にある喫茶店に来ていた。
ちなみに女性が発情期を迎えた兎人族の学校や職場では、男女で空間を分けているのだという。
「どうして学校なんですか?」
「不審者が現れるとしたらやっぱり学校近くだと思ってな」
女子高生が写真を撮られるとか、変な男に声をかけられ被害が多発する場所といえば学校周辺が日本でのセオリーだ。
「ははーん、犯人捜査にかこつけて本当は可愛い女の子たちを視姦したいんですね?」
おいクロエ、余計なこと言うな。
目元の笑っていない歪な笑顔が俺を見つめた。
「ないないない、俺は至って真面目で被害に遭う女の子たちを守りたい一心でここにいる」
「そこにいるシャリスさんみたいな年増じゃなくてあの学び舎にいるウサちゃんたちは正真正銘ピッチピチの十代だよ?」
「
シャリスのこめかみに青筋が浮かんでおり、ピキってることは明白だ。
「私は22歳、カナタさんは17歳、シャリスさんはぁ〜何歳でしたっけぇ?」
実は昨日の永久絶頂を根に持ってるのか、クロエは火に油を注ぎまくる。
自分から地雷を踏み抜きにいく斬新なスタイルだった。
「カナタの前だから大人の余裕を見せないと……怒らない……オコラナイ……ワタシヤサシイ……ワダジヤザジイ……」
シャリスが壊れた。
これはちょっとフォローいれとくか……。
「エルフは長生きな種族なんだから、シャリスの年齢でも若者だし、仲間なんだから年齢がどうであれ嫌いになることなんかないぞ?」
「好きぃぃぃぃッ!!。嫌いになられたら、クロエを殺して鳥の餌にしてカナタと一緒に私も死んでたわ」
「お、おう……(ドン引き)」
ガバッとシャリスは俺に抱きついて来た。
「よく人前で恥ずかしげもなくイチャイチャできますね。そんなことしてる場合じゃないですよ!!」
クロエは手をパンパンと叩いて、校門の方を指さした。
「下校が始まったか」
「幸いにして学校での被害はないですが、生徒を攫うとしたら校門の辺りに潜伏してると思うんですよね」
「校門付近で好みの女子生徒を探して、対象が人目につかないところまで来たところで誘拐するというわけか」
「私も誘拐されちゃったり?」
身体をくねらせて、本人曰く「魅惑のポーズ」らしいポーズをキメたクロエにシャリスは躊躇なく
「【
生命力を奪う魔法を詠唱した。
「ひゃっ!?……って死んでない!?」
驚いたような声をあげたクロエはしばし固まったが、しばらくして何も起きないと自身の身体をしげしげと見つめた。
「流石に無抵抗の相手から命を奪うのは気が引けるわ。でも場所と行動を弁えて欲しいところね。ここは人前よ?」
それ、シャリスの言えることか……?
と思ったが、言わないでおくことにした。
世の中、口は災いの元って言うしな……。
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