第4話 転移先が戦場のど真ん中だった件
「というわけで戻ってきましたよっと」
とりあえずアイテムボックスから取り出した勇者の時代の甲冑を身に付けてミットガルトに戻ってきたわけだが……
「お前たちは誰だ!!」
早速、ミットガルト側の扉を守るロストック王国騎士団の面々に誰何されるに至った。
「あー、一般通過元勇者なんだが……?」
どうせ顔パスでいけるから問題ないだろ、とか思っていたがそんなに甘くは無いらしい。
「勇者のような格好をしているとは不届きな!!それに貴様らは異世界側から現れた。そんな格好で異世界側から現れるなど元勇者しか有り得ん!!」
隊長格なのかよく目立つ甲冑を着込んだ兵士が俺たちを穴を空くほど見つめた後、
「やはり元勇者を騙る不届き者に相違ない!!ひっ捕らえろ!!」
ん?へ?
俺ってオーラがないってことか?
あんだけ不躾に見つめて来といて俺が元勇者だとご理解頂けないのか?
「安心してくれていいわ、私の目にはカナタはオーラたっぷりに映っているから」
「お、おう……でも、現状まったくもって安心出来ないんだよなぁ……」
入国早々にお縄になりそうなのだ。
まるで不正入国で入国管理局に捕まる、犯罪者もかくやといった具合である。
「仕方ないわね。頼れる未来の妻である私が情けないダーリンを助けてあげるわ」
任せなさい、と豊かな胸を張ったシャリスは騎士たちの方へと向き直ると、胸の谷間からカードのようなものを取り出した。
「なんでそんなとこから出てくるんだよ……」
シャリスが取り出したのはギルドで発行した冒険者証だった。
「おっぱいリロードやって見たかったのよ……いずれは、R18的なリロードをしたいわね」
蠱惑的な笑みでシャリスは俺を(正確には俺の股間のあたりを)見つめた。
「貴方たち、これを見てもまだ私たちを捕らえようなどと言うのかしら?」
突きつけられたギルドカードを見つめた隊長格の男は唖然とした。
「失礼しましたぁッ!!」
それに合わせて騎士たちにも俺たちの存在が伝わっていく。
「元勇者様方でしたか!!」
「無礼な真似をお許しください!!」
コメツキバッタの如くひれ伏す騎士たちの様子にシャリスはご満悦だった。
「そう言えば、財布にポイントカードと一緒に入れたんだっけ……」
もうすっかり忘れていた。
ミットガルトにおいて冒険者証は言うなればマイナンバーカードのようなものだった。
それひとつで街道の関所を通れたし、公的なサービスを受けることもある。
「俺のもあるんだが見るか?」
財布から取り出すと騎士たちは頭を横に振った。
「なんと恐れ多いッ!!」
「矮小な私どもが見たら貴方様の冒険者証が腐ってしまいます!!」
「お、そうなのか……?」
そんな調子で熱烈な歓迎ぶり(?)を受けて警備を平和的に抜けることができた。
「さて、エルフの里まで転移するから、私に抱きつきなさい?」
「そんなシステムだったっけ?」
身体の一部が術者に触れていればいいとかそんなんだった気がするんだが……?
「そうよ?なんなら粘膜同士の触れ合いでもいいわ」
シャリスが熱っぽい視線を向けて言った。
「な、なんか卑猥だな……。抱っこでお願いします……」
「卑猥も何もそのままの意味よ?」
すんません、こちとら童貞高校生元勇者なんで刺激が強いのはちょっと勘弁願いたい。
「抱っこでお願いします。抱っこがいいんです!!」
このまま放っておけば、話題が下ネタ方向に逸れていくのは間違いない。
ここは強引にでも抱っこコースにさせてもらおう。
「そんなに抱きしめて欲しいのね?ん〜甘えん坊なダーリンでちゅね〜」
俺を抱きしめたシャリスは、耳元でくすぐるような声で詠唱した。
「【
ASMR的な詠唱により瞬間的に見覚えのある景色へと場所が変わる。
「次までに口移しの魔法とか出来るようにしておくから楽しみにしてるといいわ」
平常時ならシャリスのそんな言葉にドギマギさせられただろう。
だが転移先は平常とは全く違う光景が展開されていたのでそれどころじゃなかった。
「なぁ、そんなことよりさ……ここ、戦場のど真ん中じゃね……?」
すぐそばを幾多の攻撃魔法が、数多の矢が飛び過ぎてゆく。
「言われてみればそうね……でも大丈夫よ。私たちのラブパワーがあればへっちゃらよ!!」
「お、おう……?」
今日はそういう設定なのか……ともう諦めることにしたのだった。
そして仕方なく日曜朝に放送されている美少女戦隊モノ設定に付き合うことにしたのだった。
まさか、シャリスが初めて見たプ○キュア作品を即日再現することになるとはなぁ……。
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