亜人の街

サイトレベルが4に上がった。

あれから大して課金はしてなかったが、ゲーム内に人を呼んでもレベルが上がるのかと知るアルフレッド。


フレンドはいつの間にか20人になっていた。

ハッピーベジタブルのフレンドだ。

チョコットアイランドにはハッピーベジタブルを経由して呼び出す事はできるが、今のところカイトとその家族しか来ていない。


いつもきてはアルフレッドのお手伝いをし、大量の食べ物を持ち帰る。

カイトもレベルをモリモリ上げ、今では18。

SPDを生かした戦闘スタイルで盗賊に見つかっても余裕で対処できるまでになった。


森の奥に住むモリッコの居住区にはまだ行けないけど、コンビネーションも育ちつつある。問題は四葉のクローバーなるアイテムがどこで手に入るのか、まるでヒントが無いことか。



「アバター着せ替えか」



カイトが来るまで暇を持て余したアルフレッドが見たのは新しい項目だ。

ゲーム内アバターを自由に着せ替えすることができるのだ。

もちろん、アバターを変えたらゲーム内にも影響が出る。

アルフレッドはいつになってもカイトが仲間を連れてこないことを疑問視していた。


けど理由は単純。

貴族は亜人を嫌っているから。でもそれはアルスバーンの、アルフレッドの世界の話。

でもこの世界はアルフレッドの知識も混ざってしまっていたら?


カイトがアルフレッドの前に仲間を連れてこない理由はわかる気がした。いくらアルが亜人を差別してなくとも、亜人は人族に苦手意識を持つ。


ならば……自らを変える『アバター着せ替え機能』は渡りに船だった。アルフレッドが購入したのは猫耳だ。

課金額は¥100と安いが、見た目を亜人と同じにする効果を持つ。


もちろん反映されるのはゲーム内に限るが、カイトはゲームのキャラなので大丈夫だという確信があった。

そして待ち合わせの時間になり、歓迎をする。



「アル様、お待たせしてしまいましたか?」


「全然。それよりもイメージを変えてみたんだ。どう、似合うかな?」



待ち合わせ時間に遅れた事に頭の上にある異物を気にしなかったカイトは、すぐにアルの頭の上にあるはずのない存在を見つけて驚愕した。



「あの、アル様。そのお耳は?」


「言ったろう、ここは僕の作った世界だ。君の頑張りで僕はこのように姿を偽ることができる。僕の前で自らを偽る必要はないんだよ、カイト。人であることを偽っている僕がいうのもあれだが……」


「そこまで僕達のことを気にかけてくれて……感謝の言葉もありません!」


「僕はこの世界を更に広げたいんだ。それには勿論人手が居る。僕の手助けをしてくれないか、カイト」


「僕で良ければ何なりと。でも家族は……」



カイトは力仕事なら自分に任せて欲しいと言った。

まるで他の家族を危険な目に合わせたくないようだ。



「別に戦えなんて言わないよ。僕の畑のお世話をしたり、スープの補填をしたりやれる事は多いいんだ。戦うのは僕達の、男の仕事だろう?」


「アル様……そう言われるのでしたら、僕の方で話を持ちかけます。ご飯は……」


「この街はまだ人が少ないだろう? 今なら住居もたくさん余ってる。ご飯はお手伝いに応じておかわりの追加も検討するよ。もちろん3食昼寝付きだ。どうだろう?」


「そこまでして頂けるのですか? 亜人の僕達が、そこまでの暮らしを望んでもいいのですか?」


「誰に気兼ねする必要がある? この世界の持ち主は僕だよ? 僕が望んで君に話を持ちかけたんだ。その為に姿を偽るのも厭わないのが僕だ」


「ああ、アル様……」



感涙に伏すカイトをあやしながら、家族を連れてきますとログアウトして再び戻ってきたのは30分以上後のことだった。


小さな亜人の子供四人と亜人の少女一人にカイトで系6人。

誰も住んでないきれいな街並みに臆しながら街並みを歩くところへアルフレッドが声をかけた。



「こんにちは! ようこそ亜人の街ウィーステラへ!」


「あなたがカイトの言っていたアル様ですか?」


「そうだとも。カイトの友にしてこの町を経営してるんだ。見ての通り人手が足りなくてね。畑にスープバーに町の防衛にてんてこ舞いさ」


「アル様はミーア達に畑の世話やスープバーの補填をお願いしたいそうなんだ。毎日一食食べれたら御の字の僕達に、朝昼晩の食事を約束してくれた。それに住む場所も……」


「本当に……信じられないわ!」


「お父さん、お腹すいた……」


「今日からは食事を我慢しなくていい生活が待ってるんだぞ? その分お手伝いが期待されている。できるか? ロナン」


「お手伝い?」



羊の角をこめかみから生やす幼女がカイトにあやされながら聞き返した。この子が子供の中で一番大きくて食べ盛りな感じだ。

カイトが10歳ならロナンと呼ばれた少女は6歳になった所か。



「僕がお手本を見せるよ。荷物は……ないね、場所はこっちだよ。お世話の回数が多いほど野菜や果実は美味しく育つからね。美味しいご飯を食べたかったら手を抜かないことが重要だ。さぁ、僕の農園がここだ」


「わぁ!」


「匂いだけでお腹が空いてきました」


「このまま食べるよりスープやフードにした方が断然美味しくなることを約束するよ。お腹が空いてるなら先に食事をしてしまうか。何がいい?」



子供達は顔を見合わせ、元気いっぱいに「フライドポテト!!」と声を合わせた。マッシュポテトよりも人気なメニューだ。

だったらジャガイモの量産は彼女たちの手にかかってる。

いや、託すのだ。



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