新しい世界に旅立とう!

◆チョコットアイランド


これはチビキャラを操作して他のプレイヤーと一緒に冒険する事ができる、MORPGと呼ばれるものだ。


最大10人までの部屋を選択して、入ることで一緒に遊ぶことができる。

見知った顔のフレンドがいれば良いが、案の定アルフレッドの知り合いは居ない。


まずは操作に慣れる為に一人部屋に入り、キャラを作成する。



━━━━━━━━━━━━━━

名前:アル

性別:男

LV:1

属性:火

ジョブ:なし

HP :10

SP :10

攻撃力:3

防御力:1

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POW:1

INT:1

VIT:1

SPD:1

LUK:1

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<スキル>

なし

<装備>

武器:なし

盾 :なし

服 :ボロいシャツ

腕輪:なし

靴 :ボロい靴

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男の知識で簡易的なキャラを作った。

属性は5つ。


火・草・水・光・闇だ。


火は草・闇に強く、水・光に弱い

草は光・水に強く、火・闇に強い

水は火・光に強く、草・闇に弱い

光は闇・火に強く、草・水に弱い

闇は水・草に強く、光・火に弱い


それぞれに得意分野と苦手分野があり、うまく噛み合ってる関係だった。

そしてこれが重要で、一度決定したら属性の変更はできないようで、今後一生付き合う物となる。

アルフレッドにとっての『才能』と同じ様なものだった。


そして初期ステータスでは何者にもなれないが、ステータスの割り振り次第で何者にもなれる。


『才能』格差で失脚するアルフレッドの世界と違い、さまざまな可能性が満ちているのだ。

無能だと迫害されたアルフレッドにとって、こんな希望に溢れたゲームはなかった。

生まれや育ちも『才能』の有無でその後の生活が閉ざされることもない。


故に、このゲームはアルフレッドの子供心を刺激する。

失敗したら罰を受けることもなく、ずっと押さえ込んでいた冒険心がむくむくと膨れ上がっていく。


チュートリアルで丸っこいモンスター、ビビリゼリーをパンチで倒すと『ボロいナイフ:攻撃力+2』を手に入れた。


この世界では武器に攻撃力がついており、ステータスが貧弱でも装備次第で前に進めるようになっている。


が、正直言ってこのままの装備では弱い。

どうせなら強い自分でいたいアルフレッドは、ハッピーベジタブルのガチャ沼から何も学んでいないかのように課金に走った。

ゲーム内マネーを¥に換金できるチート得てしまった弊害である。



「攻撃力が+110の武器が¥1000か」



目に留まったのはボロいナイフとは比べ物にならない伝説の剣だろう一振りだった。



「装備の方は、防御力+80の盾だって!? 最強じゃないか。でも¥1500か」



高いな、と思った。

手持ちは¥2100。

買うならどちらかだった。

ここにきた以上、買わないという選択肢はなかった。



アルフレッドは課金剣を武器欄に装備して、満足げに店を出た。

足りない分はゲーム内通貨で揃えれば良い。

ハッピーベジタブルと違い、初期資金は5000ポロもある。


これを取り出せば課金し放題だ。

まるで悪い遊びを覚えてしまったような気分である。


しかし意気揚々と森マップに進んだ先で、大量に待ち構えていたキルワームに袋叩きにあって死んだ。


最強の武器を手にしたアルフレッドが、すぐに現実を思い知らされたのである。



「これ、防御力低いと詰むじゃん!」



いつしか男の記憶から流れ込んだ口調になりつつあるアルフレッド。

所持金を取り出して課金通貨に変換して防御を先に手に入れるべきか?


そこまで考えた時、森の推奨レベルをよーくみて自分の浅はかさを知った。


森の推奨レベルは10~だったのである。

アルフレッドのレベルは1。

推奨レベル的には草原が適正の場所だった。


慢心の招いた結果に、すぐに立ち直るアルフレッド。



「死んでもすぐに復活できるのはありがたいよな。現実ならそれでおしまいだ。最強の剣を得たからと、それで強くなったわけでもないのに僕ときたら……」



草原で心機一転やり直そうと歩き出す。

そこでチュートリアルで見知ったモンスターと遭遇する。

一度倒した相手に臆するアルフレッドではない。



「あ、ビビリゼリーだ! 色違いもいる。こっちは少し強いな! でも、この武器なら!」



青いビビリゼリーに赤いビビリジェル。

パンチでも倒せたビビリゼリーと違い、属性相性が悪いのかビビリジェルは一発で倒しきれなかった。


二発、三発と叩いてようやく倒す。

するとレベルの横にあるゲージが一気に溜まってレベルが上がった。


ステータスの割り振りポイントが3。

どれに振るか迷う。


POW20、SPD10で戦士系スキルを得るか。

SPD20、LUK10で盗賊系スキルを得るか。

INT20、SPD10で魔法系スキルを得るか。

VIT20、INT10で回復系スキルを得るか。

LUK20、POW10で即死系スキルを得るか。


選択肢は5つ。

ステータスさえ満たせば複数入手だって可能なのがこのチョコットアイランドのウリの様だ。

今自分が一番欲しているスキルは何か?

それを考える間でさえワクワクする。


しかも課金でいくらでもステータスは変えられるのだ。

一つ変えるのに¥100。

ステータスフルリセットは¥3000とお高いが、スタイルをいくらでも変えられるのは強い。


アルフレッドの強みはゲーム内で稼げば稼ぐほど『取り出し』て¥に変えるチートにある。


本当になんでもできるこのゲーム、10歳のアルフレッドが夢中にならないわけがなかった。


ハッピーベジタブルと違ってレベルアップが早いのだ。

レベルが上がればHP、SPステータスに伴い上昇していく。

初期値はHP100、SP100。

何もせずともレベルが上がれば10づつ増加し、VITに1振ればHPに20の補正。INTに1振ればSPに20の恩恵がある。


HPは0になると気絶して街に戻される。

SPはスキルを使うのに消費するポイントだ。

アイテムで回復出来るらしいが、それらは街のアイテムショップで売られてるらしい。

課金ショップにはなかったな、とアルフレッドは思い出す。



「あ、装備も武器屋や防具屋にあるんじゃないか?」



街にそれっぽい看板を見つけていた。

そして街にとんぼ返りし、新しい現実を突きつけられる。



「弱っ」



プラスされる防御力に対しての要求金額に無慈悲さを感じた。

防御力+8で5000ポロは高いよ!


そう考えるとポロを¥に変換出来るアルフレッドの能力は際立って異質である。


チート。圧倒的チート。

本来はハッキングをしてゲーム内容を改竄、プレイヤーにとって有利な状態を引き起こす状態を指すが、男の知識では捻じ曲がって圧倒的才能を指して総評することが多いらしい。


それにあやかってアルフレッドはゲーム内マネーを¥に変える力をチートだと断言した。


これがある限り自分はなんでもできる。

ただし自分が強くなるわけではない。

あくまでもゲームで遊んでる自分が強いだけである。

引きこもり中のニートに向ける世間の目は厳しいと、男の知識で落ち込むアルフレッドである。



「あ、お金をかけなくても装備を作れる道もあるんじゃん。モンスターのドロップアイテムを持ってくれば格安で作ってくれるんだ。これだ!」



早速格安で装備を作る術を見つけたアルフレッド。

武器屋の一覧で、購入可能武器の欄外に安い値段で陳列されていた表を見つけたのだ。


しかしその素材入手先が先ほど袋叩きにされた因縁のキルワームからのレアドロであることに気づくのはそれから数時間後の事だった。

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