男子球児達のお遊び

 本日は気分転換として、一部メンバーと山奥に遊びに来ています。


「いっくよー!」

「おう!」


 ピッチャー役のリアムがボールを構え、バッター役のアステルがバットを構える。

 「ほっ!」とリアムがボールを投げると、アステルは勢いよくバットを振る。しかし空振り。

 キャッチャー役のルートヴィッヒがボールを受け止めたところで、アステルはあれ? と首を傾げた。


「当たったと思ったんだけどなー」

「勢いは良いんだけど、目瞑っちゃってるから当たんないんだよ」

「彼も打ちやすいようにボールを投げてくれているようだから、しっかりと見ていれば当たるはずだ。勢いは良いからな」


 褒められた(?)アステルは照れくさそうに後頭部を掻く。


「そ、そうか? よ、よーし! どんとこい!」

「投げるよー」

「おう! ……あれ? 打てない」


「貸して」


 ベンチ席で見ていたルシャントがバットを貸すよう声を掛ける。


「お、見本見せてくれるのか?」

「やったことないけどね」


 アステルからバットを受け取り、緩く構える。

 リアムは投げるよーと片手を振り、ボールを構えて投げ──


「──おらぁ‼︎」

「『おらぁ』⁉︎」


 外野もびっくりな掛け声と共に投げられたボールは超高速でルートヴィッヒのグローブの中に。


 ルシャントがバットを一度下ろすと、リアムは拳を搗ち合わせながら。


「誰が打たせてあげると言ったかなぁ……?」

(……アレ? これ遠回しに俺下手だって言われてね?)


 アステルが余計な事に気付いてしまったのはさておき。


「……」


 無言でバットを構えるルシャント。その目付きは……言わずもがな。


「どっせい‼︎」


 リアム投手投げ──あ、打ち返されました。


「ぐはぁ⁉︎」


 ついでに腹部に入りました。完全にダウンです。


「だ、大丈夫ですか?」


 急いで駆け寄るシエルに、リアムは痛みに悶えながらグローブを差し出した。


「僕の仇を取っ……ガクッ」

「あ……」

「どうせすぐに復活するよ」

「めっっっちゃ痛いんだけど⁇」

「ひとまず木陰に行きましょうか……」


 リアムを木陰に運び、今度はルートヴィッヒがバッターを務める。

 ピッチャーはシエル、キャッチャーはアステルとなった。


「童心に帰ったようで楽しいな」

「あんたはもともとそうでしょ」

「投げていいですか?」

「お手柔らかに頼む」

「上手く投げれますかね……」


 「えいっ」とフォームもへったくれもない挙句には目を瞑りながら投げられたボールはへろへろと宙に浮かぶ──


「うわっ⁉︎」


 訳ではなく。尋常じゃない速さでルートヴィッヒを素通りし、アステルのもとへ。余りの威力に受け止めきれず、ボールが弾かれてしまった。


「あ、あれ、ボールは……? あっ打たれたのか……」

「いや打っていない」

「え⁉︎」

「次は目を開けたまま投げてみてくれ」

「わ、分かりました」


 二つ目のボールを受け取り、目を開けるのを意識しながら投げる。

 すると、へろへろとした弱いボールとなり、ルートヴィッヒは打っ……空振りした。


「むむ、タイミングが難しいな」

「打ちやすいように頑張って投げますね」


“目瞑ってた方がすげえってことだよなこれ”

“リアムより速かったんじゃない?”


 アステルとルシャントが話すのを他所に、二人は大いに盛り上がった。



(痛い……)


 尚、グローブに弾かれたボールがリアムに直撃していた事を気づいてもらえたのは随分後の話。

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