宇宙探索日記
@murimurikemuri
第1話 真実の薬
ある星に一人の男がいた。
彼はその星で一番の幸せ者で、一番の人気者だった。
すべてが思いのままだった。
ある時、男は幽霊が見えるようになる薬の噂を聞いた。
好奇心が強く負けず嫌いの男はその日のうちに薬を売っている商人のところに駆けつけた。
「幽霊が見えるようになる薬を売ってくれ」
店に入るなり男は言った。
「えっ?ああ、それなら今ちょうど生成が終わったのが1本ありますよ」
男の勢いに少々面をくらいつつ店主は、奥からいそいそと薬を持ってきた。
「どうぞ」
カウンターに置かれたのは小瓶に入った青色の液体だった
意外と簡単に手に入るもんだなと男は思いつつ男は財布を取り出した。
「いくらだい?」
男の問に
「お代はいただきませんので、ぜひ感想を聞かせてください。」
とだけ店主は答えた。
少し驚いたが、奇特なやつもいるもんだなぁと思いつつ男は家路についた。
足早に帰ると星で一番美人の妻が夕食を用意していた。
「ただいま」
男の声に妻は手を止めずに答えた。
「お帰りなさい、今日は何かいいことがあったみたいね」
「驚くなよ、俺はこれから幽霊が見えるようになる!」
予想外の答えに彼女は手を止め、目を丸くしながら男が手に持つ薬を見た。
妻の心配をよそに男はことの顛末を妻に話して聞かせた。
「それで、本当に飲むつもり?」
「当たり前だろこの星で俺ができないことなんてあってたまるか」
不安そうに尋ねる妻が止める間もなく男は一息に薬を飲みこんだ。
「うえぇ、この薬ものすごく…」
男が前を向くと妻の周りを周りをふわふわと綿あめのようなものがごめいている。
「見えるの?」
男の視線を応用に妻は周りをキョロキョロしている
「幽霊ってもっとおっかないもんだと思ってたよ」
男は不安そうな妻に様子を語って聞かせた。
「あなたがそれでいいならいいけど…」
子供のようにはしゃぐ男に妻はあきれつつ台所へ戻っていった。
妻の後ろ姿を眺めながら男は幸せを感じていた。
それから数日がたった頃
男は”綿あめ”に飽きてきていた。
もっと刺激をもっと刺激をといつの間にか薬屋に来ていた。
「やあ」
「おや、いらっしゃい」
店主は微笑みながら男を見た。
「幽霊が見える生活はいかがですか?」
ああ、そういえばそんな約束してたなと思いつつ男は話し始めた
「最初は新鮮だったよでも、今では綿あめが浮いているようにしか見えなくて」
不満そうな男にに店主は尋ねた
「刺激が足りない、ということでしょうか?」
「そう!もっとこう、本に出てくるような人間の幽霊に会いたいんだ」
男の言葉に店主はうなずきながら新たな薬を取り出した
カウンターに置かれたのは小瓶に入った黄色の液体だった
「これを飲めば人間の幽霊に会えます」
「ただし、今の生活を大きく変えてしまうのでご注意を」
店主の言葉に違和感を感じつつ男は店をあとにした。
翌日、男はまた薬売りのところへやってきた。
「おい!どうにかしてくれ」
男は少し取り乱しつつ店に入った。
しかし、店主の姿はどこにもない。
「どこだ!!どこにいる!!」
声をあらげながら店中を探して回った。
やはり、見つからない。
「くそっ!!」
男は近くにあった椅子を蹴り飛ばした。
「こらこら、ものに当たるんじゃない」
「カルシウム足りてる?」
「勝手に入るなんて非常識よ」
「Closeの看板見えなかったの?」
つらつらと幽霊が姿を現し様々な言葉が男に投げかけられる。
「うるさい!うるさい!うるさーい!」
”今の生活を変えてしまうのでご注意を”店主の言葉を思い出す。
「こんなつもりじゃなかったのに」
「もっと考えなきゃ」
「無理無理」
「考えてこれなんだろ」
また幽霊たちが答える
昨晩からずっとこの調子で話しかける
人間の幽霊とはこんなにも意地が悪いのか
惨状をどうににかしたい一心で男はカウンター奥に進み薬棚を開けた
「今日はどんな症状で~?」
「ドロボー」
「この薬とかおすすめ」
幽霊の言葉を無視しつつ薬を眺めていると
後ろからコトンと物音がした。
振り替えるとそこには店主が立っていた。
「おや、もう限界ですか?」
店主は今までと違い不敵な笑みを浮かべながら言った。
そして、カウンターの上には小瓶に入った赤色の液体
「これは真実の薬です、飲むと存在しないものはすべて見えなくなります。」
店主の言葉を最後まで聞かず、男は薬を手に取り一気に飲み干した。
ピタっと静かになった。
男の目にはどこまでも広がる真っ白な世界が広がっていた。
どこを見渡しても人どころか動物さえいない。
男は変わらずその星で一番の幸せ者だった。
宇宙探索日記 @murimurikemuri
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