聖女
聖女。
すっかり忘れてた。私……すっごく貴重な『白』属性に適正あったんだ。
勉強がメインの一年間だったから、魔法については知識くらいしかない。私、白属性……えーっと、回復魔法が得意らしい。
でも、クロードを昔一度だけ治しただけで、あとはよくわかんない。
基礎的な知識を叩きこまれ、「あとは学園で学べ」って言われたんだった。
「えーっと。なんか、そうみたいです。あはは」
先生や生徒たちがポカンとしているので、曖昧に笑った……うう、見ないでぇ。
いたたまれないので座ると、先生は「では、次……」とケイモンを差した。
その後、自己紹介が終わり、ホームルームが終わった。
今日はホームルームだけ。授業は明日から始まる。
「ね、ケイモン……帰ろ」
「帰ろ、って……お前、女子寮だろ」
「あ、そうだった」
「このあと、ロクサスとメシ食いに行く予定だけど、お前も来るか?」
「行く。視線がチクチクして痛いのよ……」
ケイモン、ロクサスがいるおかげでクラスメイトが近づいてこない。
ケイモンはイケメンで、ロクサスも高身長のスポーツ選手みたいなイケメンだ。この二人、間違いなくクラスのツートップ……うわやっば。
「おい行くぞ」
「う、うん」
どこかムスッとしたレイラが近づいてきたので、私たちは慌てて教室を出た。
絡まれたんじゃたまんないしね。
そのまま急いで校舎から出る。
「で、ごはんどこで食べるの?」
「ああ。あっちにレストランあるんだ。生徒は無料で食える」
「お、いいね」
「ははっ、アリアは豪快だな。気に入ったぜ」
「そりゃどうも」
ロクサスがケラケラ笑う。うん、イケメンは笑ってもイケメンだわ。
ちょっと早い時間だけど、レストランへ。
すると、ケイモンが。
「あれっ」
「あら?」
「あ、お姉様!!」
なんと、ユリアお姉様がいた。
友達といたようで、友達に「弟と妹なの」と言い、近づいてきた。
そして、私たちに笑顔を向ける。
「入学おめでとう。もしかしてお昼?」
「ああ。ってか、友達いいのかよ? オレらのことは別に構わなくていいけど」
「いいの。可愛い弟と妹に───……あら? 久しぶりね、ロクサスくん」
あ、お姉様もロクサスのこと、知ってるんだ。
「お、お、お、お久しぶりです、ゆ、ユリアさん!!」
え……なに、このドモり方。
え、え、まさか、ロクサス……まさか。
「ふふ、入学おめでとう。ロクサスくん」
「あ、ありがとうございます!!」
私はケイモンに耳打ち。
「ケイモン。ロクサスってもしかして……」
「ああ。姉ちゃんにホレてんだよ。当然、姉ちゃんは知らん」
「わーお……」
「とりあえず飯だ。おいロクサス、メシにしようぜ。姉ちゃ……姉上も」
「そうね。ロクサスくん、ご一緒していいかな?」
「は、はい!! ぜひ!!」
ロクサス……ヤバい、この恋すごく応援したいかも。
◇◇◇◇◇
レストランで頼んだのは「本日のおススメ」だ。
到着するまでの間、私は聞いた。
「あの~……聖女って、そんなにすごいの?」
そろそろ挙手すると、ユリア姉様が言う。
「聖女は、プロビデンス王国に一人しかいない治癒魔法士だからね。薬が効かない『死病』の治療とか、貴族や王族の病気治療とかするのがお仕事みたい」
「貴族や、王族だけ?」
「お金払えば平民にも治療するようだぜ。ま、オレらみたいな爵位の低い貴族も、高い金払わないと後回しにされるようだがな」
「えー……? なにそれ」
ケイムスがそういうと、私はちょっと面白くなかった。
やっぱ、貴族至上主義なのかな。平民の命は軽いのかも。
人がいてこその国なのにね。
「な、アリア。治癒魔法、使えるのか?」
「んー、どうだろ。勉強はいっぱいしたけど、魔法は学園で習うってスタンスだったから、やり方とかよくわからない」
「そういえば、私たちも『白』属性ってことしか知らないわね」
「神官からの報告だし、間違いないとは思うけどよ……オレらも見たことないな。あ、そうだ」
ケイムスは手を差し出してきた。今気付いたけど、人差し指に絆創膏みたいなのが巻いてある。
「今朝、ペーパーナイフで少し切っちまったけど、治せるか?」
「えー? 治せって言われても」
「まぁまぁ、やってみてくれよ」
好奇心から、ってのが本命みたいね。
ユリア姉様も、ロクサスも興味深々。
とりあえず絆創膏を剥がすと、確かにちょこっと切れていた。
「とりあえず、治れ~……」
適当に、ケイムスの怪我に軽く触れて「治れ」と念じてみた。
ま、こんなんで治るわけないけど。
「……マジかよ」
「え」
すると、ケイムスの怪我が綺麗さっぱり治ってしまった。
淡く輝いた瞬間、傷が消えた。
「……すごい」
「おお……」
ユリア姉様は口元を押さえ、ロクサスも口を開けて驚いていた。
そして、ケイムスは。
「あ、ありがとよ……いやはや、驚いた」
「わ、私も……適当にやったのに、治るとかすごいわね」
「適当なのかよ。まぁ、いいけど」
回復魔法、マジみたい。
私の、聖女としての力……いやー、すごい。異世界に転生して初めてよかったって思う。
「今の、見せてもらったわ。ふふ……もう一人の聖女さん?」
「え?」
と───いつの間にか、私たちのテーブルに近づいてきたのは……綺麗な赤い髪。
今朝、見たばかりの人だ。
確か名前は……。
「初めまして。私はメイリアス・ユグノー……ユグノー公爵家の長女よ」
現れたのは、まさかの『聖女』様でした……うげぇぇ、厄介事の予感しかないよ!!
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