クラス編成

 入学式が終わり、それぞれのクラスに移動になった。

 講堂前に大きな掲示板があり、そこにクラスと名前が張り出されている。

 私は……あ、あった。


「お、オレと一緒だ」

「ほんとだ」


 私はケイムスと同じ、Aクラスだ。

 一年生は百名なので、二十五人で一クラス、合計四クラスだ。A~Dクラス、わかりやすい……というか、この世界、表記こそ違うが、文字はアルファベットっぽいんだよね。

 さっそくケイムスとAクラスへ。教室も扇状の、大学の教室みたいだった。

 席はやっぱり自由なので、空いているところへ座る。


「お~っほっほっほ!!」

「ん……げっ」


 教室のドアが開き、誰かが入って来た……と思ったら、なんと縦ロールさんだった。

 じゃなくて、なんだっけ。

 縦ロールさんは一気に注目を浴び、すごく上機嫌にスカートをつまんで一礼した。


「ごきげんよう。わたくし、ロザンドリオ公爵家、レイラと申します。クラスメイトの皆さま、これからよろしくお願いしますわね……ふふっ」


 うわぁ……目立ちたがり屋だぁ。後ろにはお供の新入生女子いるし。

 レイラは教室を見渡す。すると、ケイモンを見て目を見開いた……なんか、獲物を狙う猛禽類みたい。

 ケイモンは「うげっ」と小さく呟いたが、時すでに遅し。

 レイラはつかつかとケイモンの元へ。


「あなた、今朝の……ところで、まだお名前を聞いてませんでしたわね」

「はじめまして。メイヤード子爵家のケイモンと申します」

「メイヤード子爵家……なるほど、覚えておきますわね」


 うーん、隣にいる私のことなんて、ぜんぜん見ていないね。

 と思ったら。


「そちらのあなたは?」

「え? あ、はい。メイヤード子爵家のアリアです」

「ケイモン様とは御兄弟で?」

「は、はい。そんな感じです」

「そんな感じ? あなた、はっきり言わないのね。何か事情が?」

「えーと」

「ロザンドリオ公爵令嬢。そろそろ、授業が始まるので……」

「あらそう。ふふ……ケイモン様、わたくし、あなたのこと気に入りましたわ」

「……恐縮です」


 ケイモンはペコリと頭を下げた。

 レイラはにっこり笑うと、教室のど真ん中の席へ……目立ちたいんだろうなあ。

 ケイモンは小さくため息を吐き、どっしり座った。


「あー……厄介そうなのに目ェ付けられた。つーか、なんでオレなんだよ……男子なんて、他にもいるだろ。子爵家だぞ子爵家」

「うーん……その理由はなんとなくわかる」

「あ?」


 ケイモンは「なんで?」みたいな表情をする。

 いや、だって……気付かないのかな? このクラスで一番イケメンなの、ケイモンだよ。

 ブサイクが多いってころじゃない。むしろみんな普通にカッコいいけど、ケイモンは抜きん出ている。

 というか……そのイケメンオーラのせいで、周りのクラスメイト女子からジロジロ見られてる。ごめんなさい……ケイモンはお兄さんです。恋愛対象じゃありません!!

 と、ホームルームが始まる直前に、教室のドアが開いた。


「あっぶねえぇ、入学初日に遅刻とか勘弁っ」


 と、濃い群青色の髪をしたガタイのいいイケメンが入って来た。

 すると、ケイモンが軽く手を上げる。


「お、ケイモン!!」

「遅そいぞ、ロクサス」


 ロクサス? って少年は迷わずケイモンの元へ。ケイモンと軽くハイタッチして、ケイモンの後ろの席へ……って、誰?

 ポカンとしていると、ケイモンが言う。


「そういや、アリアは初めてだっけ。こいつ、ロクサスな」

「てっきとうな紹介すんなよ。はじめまして、オレはロクサス。デミアン男爵家の長男だ」

「は、はじめまして。アリアです」

「アリアな。よろしくな」


 ロクサスはニカッと笑い、手を上げる。

 差し出すんじゃなくて、上げる……あ、そういうことか。

 私も手を上げ、ロクサスとハイタッチする。


「お、女子でハイタッチ返してきたの初めてだぜ」

「ふふん」

「おいアリア、淑女らしくしてろよ」

「なによ。そういうケイモンだって貴族嫡男らしくないじゃない」

「む……」

「はははっ、面白いなお前ら」

「うっせ、ロクサス」

「そうよそうよ。って……ご、ごめんなさい。私」

「いいって。こういう風にふざけられるの、若いうちだけだしな。オレもケイモンもこんな性格だし」


 この二人、貴族同士のパーティーで知り合い、意気投合したらしい。

 男爵家と子爵家で身分は違うけど、こうやって話ができる友達っていいな。


「二人は、仲良しなんだねー」

「そんなんじゃねえし」

「あっはっは。ケイモン、照れんなよ」

「うっせ」


 いいなぁ……こういうサッカー部のツートップみたいなノリ、羨ましいかも。


 ◇◇◇◇◇


 ホームルームが始まった。

 担任は女性で、新人っぽいのか歳が近そう。

 時間割なんかの説明をして、それぞれの自己紹介することになった。

 自己紹介……定番だよね。


「では、そちらの窓際からお願いしますね」

「え」


 先生と目が合った。

 窓際。いや確かに私が座ってるの窓際だけど。

 ケイモンがニヤニヤしながら小突くので立ち上がる。

 やっばぁ……トップバッターとか嫌なんだけど。うう、仕方ない。


「初めまして。メイヤード子爵家から来ました、アリアと申します。皆さん、これからよろしくお願いします」


 ザ・無難自己紹介!!───あれ?

 なんか、静かになった。


「メイヤード子爵家……まさか、あなたが二人目の『聖女』……?」

「え」


 先生がそうポツリと言うと、私に視線が殺到した。

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