入学式

 入学式のある講堂へ到着。

 なんか、大学の教室みたい。扇状に広がって、階下に教壇がある。

 天井には大きなシャンデリアがあり、席は自由みたいなのでケイムスと並んで座った。


「人、けっこういるね」

「姉ちゃん……姉上が言ってたけど、今年の入学生は百人だって」

「それ、多いの?」

「去年は百二十人で、その前は六十人」

「バラバラ……」

「ま、貴族の子供で、魔法適正があって、学園に入学できるヤツなんて毎年そんなもんだろ」

「そっかぁ」


 ちなみにケイムス。おじいさんのことお爺様とか、お姉ちゃんのこと姉上とか言い直してるの、学園内ではそういう言葉にしろってユリアお姉ちゃん……お姉様に言われてるから。

 いちおう、私たちも貴族だしね。人前ではちゃんとしないと。

 と、待つこと五分。講堂内に新入生が揃うと、堂内が暗くなった。

 そして、教壇の前に老婦人が立つ。


『皆さん、ご入学おめでとうございます。私は学園長のメイザースです』

「メイザース。大魔法使いじゃねぇか」


 ケイムスがボソッと言う。

 大魔法使いメイザース。勉強した範囲にあったっけ……今代最強の魔法使いとか。


『皆さんには、無限の可能性を感じます。よく学び、友人を作り、楽しい学園生活を』


 挨拶が続く。

 やっばいなぁ……欠伸出そう。これ、あれだよね……校長先生の全校集会挨拶。かったるくて眠くて、立ってるのキツイやつだわ。

 欠伸をかみ殺していると、校長先生の話が終わった。あ、学園長だった。

 えーと、学園長挨拶の次って、大抵は。


『次に、新入生代表挨拶です』


 こういうのって、なんだろ?

 学園主席とかだけど、試験とかなかったし───……。


「…………えっ」


 壇上に上がったのは、二人。

 一人は女子。綺麗な真紅のロングヘア。ちょっと釣り目っぽいけど綺麗な顔立ちで、同い年とは思えないほど胸が大きい美少女だ。自信満々そうに微笑を浮かべている。

 もう一人は───男子。

 明るいサラサラの金髪、真紅の瞳、高身長、スタイル抜群の、同い年とは思えないほど大人っぽいイケメン……嘘、マジで。


「おいアリア、どうした」

「……クロード」

「え? クロードって……」

『新入生代表、クロード・プロビデンス。同じく新入生代表、メイリアス・ユグノー』


 学園長の紹介で出てきたのは、クロードだった。

 黒かった髪は金色だ。昔、魔法を使ってから金色に変わったままで、結局元には戻らなかったみたい。

 もう一人は……誰?


「あれが噂の聖女様か」

「え、聖女?」

「ああ。白属性、お前と同じ属性の魔法使いだよ」

「え」


 赤い聖女……なんか、意外な感じ。 

 もっとこう、聖女って神聖な、純白とか……まぁ、固定観念に捕らわれるのよくないよね。

 周りを見ると、多くの女子がクロードに見惚れていた。


「カッコいいもんねえ……」

「お前、殿下みたいなタイプが好みなのか?」

「え、殿下?」

「クロード殿下だよ。第一王子クロード」

「……え」


 クロードが、殿下?

 第一王子、って……え、うそ。


「ちょ、ちょっと待った。え、クロードが王子って……」

「プロビデンス王族の歴史で習っただろ。そういや殿下、オレらの一個上だっけ。長らく病気で、学園入学するの遅れたとか聞いたな」

「わ、私聞いてないけど……」

「まあお前、歴史とかダンスとか覚えるので必死だったもんな。王族の名前とか聞いてなかったよな」

「うぐぅ」


 そういや、王族の名前にクロードってあったような。

 それに年齢。クロードって私の一個上だよね。

 ってか、あの顔!! 子供の頃より成長してるけど、あのクロードに間違いない。


「婚約者候補に聖女様の名前あるけど、お似合いだよなあ」

「…………え」

「婚約者だよ。第一王子だぞ? 婚約者くらいいるさ」

「……そ、そうだよね」


 クロードに婚約者ね……まぁ、王子様だしいるよね。

 私のこと、覚えてるかな。

 

「…………」

「おいアリア、大丈夫か?」

「……うん」


 クロードは、挨拶のテンプレみたいな文章を読み上げてる。

 大きくなった……なんだか、靴磨きして、魚を焼いて食べてのが昨日のことみたい。

 ちなみに、クロードとのことは、子爵家の誰にも言ってない。おじいさんくらいしか知らない、私の大事な思い出だ。


『───以上です』


 クロードの挨拶が終わり、ぺこりと一礼───。


「───え」

『…………』


 クロードと目が合った。ような……そんな気がした。

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