ここですか?

将源

第1話

カーナビが?


また終電に乗り遅れてタクシー乗り場へと向かった。今日に限ってなかなかタクシーが捕まらない。見慣れないタクシーがやってきた。ドアが開いて乗り込むと

「どこまで行かれますか?」

私は

「美山町まで」

と運転手に伝えた。運転手はカーナビに美山町と打ち込むと走りだした。運転手はカーナビにしたがってどんどん進んでいく。

私は

「あまり見かけないタクシーだね」

運転手は

「まだできたばかりの会社なんですよ」

「そうなの」

私はそれ以上聞くこともなく、目を閉じた。最近は仕事が忙しくて疲れが溜まっていたようですっかり寝てしまった。目を開けると山道を走っていた。私は驚いて

「運転者さん、道を間違えているんじゃないか?」

運転手は

「家カーナビの指示通り走ってますよ」

私は

「こんな道、通ったことないよ」

明らかに別の方向へと走っている。

私はイラついて

「あんた美山町わからないの?カーナビはどうでもいいからさぁ、美山町回言ってくれよ」

運転手は

「そう言われても会社からはカーナビ通りに走れと言われてますから」

開き直ったように運転手は言った。

私は

「とにかく美山町に行ってくれ!こんなタクシーに乗らなきゃよかったよ」

と運転手に怒りをぶつけた。運転手は黙って車を走らせる。どんどんどんどん山の中へ入っていく。私はだんだん怖くなってきて

「運転士さん頼むよもうちょっと待ちの中に出てくれ。美山町じゃなくてもいいから…」

運転手は何も言わない。突然雨が降り出した。雨は強くなりワイパーを動かしても前が見えない。私はどうすればいいのかわからなくなっていた。この運転手はどこに連れて行こうとしているのか?運転手はポツリとしゃべりだした。

「お客さん。私のこと覚えてますか?」


続く

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ここですか? 将源 @eevoice

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