リングア

第一声 ペイル・ブルードット

 それは、人類が『時間』を理解した時に、垣間見た、神からのメッセージであった、と、彼は語った。

 光よりも早く、遠くを見る望遠鏡を開発した研究チームには、世界の頭脳が集まっていた。良くも、悪くも、彼らは変態ばかり。恐ろしいまでに高度に発達した科学は、魔法を通り越して、神の所業なのである。

 『神々』は、だからこそ神の存在を信じていたし、世に蔓延る問題に、興味を持たなかった。彼らの神は、社会に目を向けよ、と、言っているが、『神々』にとって、社会とは、限りある個々の生命ではなく、個々の生命の流転による歴史だったからである。

 歴史社会に残る大発明に立ち会える興奮で、胸が張り裂けそうになりながら研究を続けた彼らは、『宇宙の断崖』の先、ビッグバンの光を、ついに捉えた。

 それは、ある者には創世記の光を思わせ、ある者には乳海撹拌の渦を思わせ、ある者には女神の死体を思い起こさせた。

 それぞれがそれぞれの信じる、世界の成り立ちに触れた喜びに抱き合っている中、彼は、じっと望遠鏡の中の『それ』をもう一度見て、呟いた。

 彼には、神話だとかそんな大仰のものではなく、もっと懐かしいものに見えていた。


「綺麗な花火……。」

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