ミスター・サトノの証言

「俺の発音がいい!言語的にも正しい!」

「いいや、日本人はこっちが発音しやすいね!」

 わたくしは今、とても後悔しております。

 事の発端は、ローマンお兄様とマーティンお兄様が、和解したことに始まりました。

 その証として、言わば「共同訳」を作ることになったのですが。

「キリストの名前は「イエズス」が適切だ! ギリシャ語でもΙησούςイエズースって書いてある!」

「イエズス、という言い方が日本人は言いにくいんだよ! ςの発音はいらない!」

 ええ、そうです。Jesusジーザスをどのように訳すか、で、揉めに揉めているのです。

 他にも古典ギリシャ語やヘブライ語など、言語学的に、「どのようにも訳せる」単語は沢山ありますのに…。

「どっちでもいいんじゃないかなぁ…。」

「アァん!? サトノ、お前マーティンの味方するのか!? ヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿の愛弟子たるお前が!」

「いえ別に。」

「なら、間をとって、「イエスス」ではどうでしょうか?」

 すると、ローマンお兄様がすぐさま反論しました。

「よくない! 「家煤いえすす」みたいじゃないか!」

👊

『あなた、共同訳聖書の会議はまだかかりますか?』

「私はいま、事件の現場に来ています。」

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