第3節 木漏れ日の下で

 椅子には埃が溜まり、床には瓦礫が落ちている。

教会の中のマリア像は砕け、十字架は頭の部分が吹き飛び、壁から外れ、道行のために使われる12のステンドグラスは砕け散って、もはや何も残っていない。

 乾ききった血と、戦う決意をしただけの一般人の死体が腐臭を放つ。踏み入れれば、軍靴であっても足と心を切り刻まれるだろう。

 ただ、ここはそれでも聖なる場所であったので。

 徹底的な破壊の中に、確かに「十字架」が光っていたので。

 惨憺さんたんとした大地を、木漏れ日が照らし、十字架も木漏れ日色をしていたので。

 ただ、静かに、静かに、祈ることが出来た。


 滅ぼすものを愛し、滅ぼされるものを愛する神よ。

 どうか裁きの日、怒り憎しみ合うべしと言われる彼らに、どうぞ同じ食卓を。

 武器に祈りを、毒に祝福を、殺戮に愛を、凌辱に憩いを。

 彼ら人間、神の写し身なれば。

 1思いつくような慈悲を、貴方が完全なものとして与えてくださるでしょう。


 ―――ねえ、神父様。どうして人間の社会は、開発者を叩くの? その開発で人を殺すのは、人間じぶんたちなのに。


 ああ、そうだね、教会の異端児こどくなふきょうか

 お前はキリストの探求者。例えお前の祈りを人間しゃかいが封じても、オレは神に取りなそう。

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