第2節 沈黙のうちに

 不快な気分を顕にしながら、電話をかける。相手は従弟の家だ。あそこには信者なかまが基本的に1人もいない。軍事関係者や外交関係の信者なかまでは、恐らく従弟の元へはたどり着けないからだ。

「もしもし?」

 電話の主は、毅然としている。それでも叫ばずにはいられなかった。

「説得は失敗した。報復戦争が始まる。俺たちカトリックでは止められなかった!」

「…ああ、今朝の変な感じ。あれ、キミ達のだったんだ。」

の為の戦争などあっては―――」

「いやだ。」 

 強固な意思だということは分かる。分かるし、役たたずだった自分が言うことは何もない。だが、同じ過ちが起ころうとしているのに、見過ごすことは、出来なかった。

「この国の真実はぼくがよく知ってる。でも世界の人には分からない。…ローマンだって、ヒトラーが自殺する瞬間まで、そばにいたよね?」

「…まあ、信者なかまだったからな。」

「人間の社会がどんなにを悪者にしても、は彼の信仰がある限り、ここに残る。でもありがとう。ローマンの形でいいから、の為に、祈っててほしい。」

 電話を切って、膝を着いて、ただ「憐れみたまえエレイソン」とだけ祈った。

 は名前こそ変えれど、その慈しみは平等のはずだから。



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