第130話



 そこはリフとタイワの境目からすぐそばにあるソーラー発電所。

 センダイの北は少々特殊な地形となっていてイズミの北にトミヤという卵がありそれを箱で覆うような形でタイワという町がある。リフはその東側と繋がっているという事だ。

 そしてそこは周囲に町や住宅地がないぽっかりと開いた無人の場所だ。そういった意味で二人は運が良かったのだ。


「だ、大丈夫、ですかね?」

「……多分だけど、この先もダメだと思うのよ」

「ダメなんですか?」

「ええ。こちらを追ってくるという割には私達を素通りさせて必死に追ってくるでもない。もしかしたら誘導されてるのかもしれないけどね」

「え。それは大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃないけど、攻撃されないってことは何かあるんでしょ」

「何か、ですか?」

「まあ間違いなくあなたなんでしょうけど……」


 女記者、天間てんまネルはセンダイに来てからの忙しない状況に歯がみしていた。

 連れて来ている久間楠ツツジが有名な人物であるという事は分かっていたつもりだった。研究所も行政の管轄だという事で行くことを拒むし、肝心の狼の情報も無いしでさてどうしたものかと考えていたら、センダイの各機関から追われることになるしで全くうまくいかない。

 そもそも私が追われる理由なんてないじゃんと思ったこともある。

 とはいえタダ働きはごめんだ、せめて今こちらに詰め寄ってきているのが件の狼であること願うばかりであった。


 使い古したミニバンをいつでも発進できるようにしたままでドアの前で待つネル。

 遠目に見て何となく気付ていたけどこの世界じゃほぼほぼ最新型と言っていい電気自動車。想像していた何倍も静かにゆっくりと近づいてきた車に馴れ馴れしく手を振る。内心の焦りを感じさせないように。


 助手席と後部座席から降りてきたのは女性二人だ。ちらりと見えた限りでは運転手の女ともう一人いる。


「こんにちわ、いえ、そろそろこんばんわ、かしら?」

「方言ではおばんですって言ってる人もいるけどね」

「わざわざセンダイからご苦労様、何か御用かしら?」

「追手が気になる? 私たちがいた場所は知ってるでしょ?」


 互いににっこりと。しかし隠した刃の煌めきを隠すように。


「事情は分かってるみたいね」

「貴方たちがいた場所が悪いのよ。あそこはスカベンジャーたちの情報が集まる場所だから」

「そう、それで?」

「それはこっちのセリフよ。この先はヨシオカ。北部のスカベンジャーの拠点よ?」

「何か問題でもあるのかしら」

「北部と東部は人身売買が盛んでね」


 それは事実であった。そういった過去があるのは本当だが、現在では小規模かつ限定的なものがほとんどだ。

 特に東部に関しては一つの大きな組織が壊滅してから活動が縮小傾向にあった。

 ただしネルからすればそれは脅迫に近い情報提供だ。つまり逃げ場など無いという事だ。


「……私は普通に仕事すればいいだけよ」

「市街地から離れて?」


 目の前の女の言う通りだった。仕事がしたいのなら軍や行政に紐づいていた方が確実なのだ。これでフリーの記者であるという事がバレた。

 ネルはやり辛さを感じる。記者として情報を掴むためにいろんな人間に相対してきたが、情報を手に入れるのであれば取引が必要になる。しかしこういった腹の探り合い、駆け引きというのは得意ではない。フリーである理由の一つがそこにある。


「はーもう降参よ、私駆け引きって苦手なのよ。で、おたくらはどちら様? もしかして狼さん?」

「残念だけどちょっと違うね。取引したことはあるけど」

「じゃあ狼さんはセンダイにいるってことでいいのね?」

「さあ?」

「さあ?」

「私たちが取引してたのはトウキョウでの話だもの」

「……そもそも何が目的で接触してきたのかしら?」

「強いて言えば面接かしら?」

「面接?」

「そ。私たち女だけのスカベンジャーをやっててね。研究者の人はともかく、車両持ちのフリーなら先に声かけておいた方が良いじゃない?」

「……勧誘ってこと」

「そうね」


 にこりと笑う目の前の女にネルは考え込む。身元の保証を期待するなら軍や行政で広報の仕事を探せばいい。スカベンジャーと活動する理由があるとするなら、情報の価値次第では困らない程度の生活はできるということ。それを考えれば目の前の女性たちの評判ぐらいは知っておきたかった。

 次いで彼女が気になったのは電気自動車を持っていることと銃を持っているということ。もう一人の長身の女が肩にかけているのは軍の装備である小銃にも見える。恐らくこちらが護衛だろうと予想した。


「ちなみにそちらは普段何をしているのかしら?」

「普通のスカベンジャーよ? 廃墟や施設跡から物資を回収してくるだけね」

「そんな車持ってるのに?」

「いいでしょ? 太いパイプがあるの」

「そちらから人をもらえばいいじゃない」

「欲しいのはパイプであって首輪じゃないんだよね」


 少なくとも上客がいてそれをある程度手玉にとれるような集団だ。ネルがそう判断した瞬間、天地が逆転した。ぐるんと天地が逆転し地面に叩きつけられる。

 腕を抑えられてまともに受け身をとれない状態でその衝撃を受けたネルは瞬間パニックになった。何が起こったのかわからなかった。


「あー、それはどうなの?」

「こっちの方が早い」

「いやでもさあ」

「どうせこいつには捨ててもらうものが沢山ある」


 聞いたことの無い声。少し幼ささえ感じるような声だ。じくじくと熱と痛みを訴える肩とパニックになっている脳の片隅でネルはそんなことを思った。


「はあぁぁぁ。……まあこちらはあなたが久間楠先生を連れているっていうのは確認済み。あなたが話を聞いたほとんどの人間がこちらの情報提供元。オーダーは先生の確保。そのために他の追手にはサクッと諦めて欲しいんだけど、話を聞く?」

「……くたばれ」


 すっと熱が首に走る。え、斬られた? 首を?

 ネルがそう感じる間もなく、頭上から声が降りかかる。


「お前に拒否権なんてない。お前に価値なんて既に無い」


 声も振り下ろされた刃も体の芯から震え上がるような冷たさを持ってネルを貫いていた。

 動転しているが、声が出ない。何かを言いそうになっては意味の無い掠れた音が響くばかりだった。しかし。


「待ってください!」

「あ、先生だ」


 ひっそりとドアを開け車の影に隠れながら出てきた久間楠ツツジが、取り押さえられたネルの上にいる小柄な女に銃を向けていた。

 その場で空気感が違うのはひらひらと手を振っている運転手の女だけだった。 


「その人から離れなさい!」

「いやあ、それは出来ないかなあ。だってそれ玩具でしょ?」

「う、撃つわよ!」

「だって?」

「先生? こっち見て? 私の隣。こっちは正真正銘本物だけど、撃ってみる?」


 そう言って護衛の女が肩にかけていた銃を徐に握ったかと思えば間髪入れずに引き金を引いた。

 ぱしゅという音がしたかと思えばバンっと何かが破裂するような音がして車が揺れた。


「きゃっ!」

「あ」


 一瞬の静寂。


「……ま、まあこうなりたくなかったら大人しく言う事聞いてくれると嬉しいなって」

「……あんたたち何者なのよ」

「もういいんじゃない? つるちゃん」

「うーん、私も面識あるはずなんだけど、忘れられちゃったかも?」

「マ? え、じゃあ千聖ちゃんは?」

「……え? ……ち、千聖ちゃん?」


 車の影から恐る恐る顔をだした久間楠ツツジが周囲の視線からネルを取り押さえている少女へ向かう。

 少女が外套のフードを上げると久間楠ツツジの鼓動がはじけたように脈打った。少女の視線は先ほどと変わらずネルを冷たく見下ろしている。


「悲しいなあ。先生ー、中谷里ですよー?」

「え、あ、えっと、確か警備部にいた……でも、作戦中に亡くなったって……」

「ふふふ」


 久間楠ツツジにとってその女は2年以上前にトウキョウで亡くなったと言われていた人物だった。確かに面影はある。しかし記憶にあるその人物像と印象が全く違うのだ。


「それじゃあ典正君も」

「はいストップ。これ以上はそれに聞かせるべきじゃないんですよねえ」


 くい、としゃくった先にはようやく頭が回り始めたネル。

 ここにいる人間は面識があった。群狼ではないと言っていたが、研究所に勤めていた久間楠ツツジと面識がある人間なんて群狼以外にないじゃないか。少なくともそれに近しい人物であることは明確だ。現に私を取り押さえている女は私に気付かれないうちに一瞬で取り押さえた。

 ここまでフリーで活動してきたネルにもプライドはあった。相手はスカベンジャーだけではない。ゾンビに追われようと何とかする程度の対応力は持っていると自負していた。

 しかし相手はトウキョウのスカベンジャーたちに半ば伝説のように語られている群狼の所属だと考えれば、私などこの程度でしかないのか。

 抑えられた腕と地面に強打した肩の痛みにじんわりと嫌な汗が流れる。


「ま、問答無用で始末しても良かったんだけど追手に追われ続けるのも面倒だから、少なくともアンタには死んでもらわないといけないのよ」

「ま、待って頂戴、彼女はその」

「ああ、そういうのは聞き入れられません。先生あなたは利用価値がありますが、この女は始末する以上の価値が今のところないので」

「……」

「……彼がそう言ったの?」

「ええ。この女は私たちに任せると」


 彼と言ったか。ネルは自分の立場が非常にまずいことにあるのと共に、スポンサーではない、彼らの上司に当たる人物が男であるという事実に行きつく。そしてそれこそが。


「ねえ」

「なに? アピールでもする?」

「群狼のトップはどれほどの実力者なの」

「ここにいる全員一瞬で殺されるんじゃない?」

「……ふはっ」


 ネルから変な笑いが出た。

 彼女が知っている話の一つに、群狼という集団の血腥さがある。敵対する集団はもれなく皆殺し。彼らの狩りの跡は血と死体しか残っていない。それなりに大規模なカルト集団が一夜で殲滅等々、とにかく危険な集団なのだと。

 一方で彼らに助けられたという人間もいたりする。メトロ跡のスラムに暮らしていたという少年や奴隷商売をしていたスカベンジャーたちから助けられた人間などもいる。

 そのどちらを行うにせよ、間違いなく必要になるものがある。それは純粋な強さだ。

 こんなに簡単に私を捕らえた女に銃を持つ相手までいるのに勝ち目がないほどの実力者。

 それが、いるのだ。


「……まあいいや。千聖ちゃんいいよ、殺さないでね」

「……ちっ」


 一度強く抑えつけられたと思ったら、脳の奥まで響くような衝撃を受けネルの意識は暗闇に沈んでいった。




「もういい」

「さっすがあ。さて、先生。ついてきてくれますね?」

「……典正君の仲間、という事でいいのよね?」

「つるちゃんも千聖ちゃんもいますよ? リーダーを知っているなら分かると思うんですけど」

「そう、よね」


 私と瞳さんで記者の女を縛っておく。瞳さんが積み込んでくれるので後は久間先生だけだ。


「久間先生、お久しぶりです」

「ああ、うん、久しぶりね千聖ちゃん。元気にしていたかしら?」

マックス先生と共にいましたから問題ありませんでした」

「そう。ところでその典正君は?」

「町で仕事してます。こっちは4人がかりですが、マックス先生はお一人で動かれています」

「そう……私を確保する理由はゾンビ研究の再開をしろ、という事よね?」

「はい、研究施設についてはマックス先生が用意してくれるかと」

「あの子、異様に段取りが良いものね。……ああ、それで、その」

「別にどちらでもいいのですが……」


「え、なにあれ?」

「千聖ちゃん研究所ではあんな感じだったよー?」

「マ? 普段どんだけ会話サボってんのよ」


「……とりあえず、何故彼女とこちらに来ることになったのかお聞きしても?」


 何かいろいろ言われているがどうでもいいか。久間先生にはとにかく話し方について指摘されていたから面倒を避けるならこっちの方がいいだろうと思って頑張っていたのに。


 要約すると小屋姉妹が使っていた車が来ていると知って、その伝手からマックスを頼ろうとしたらしい。

 最初はマックスと私が襲撃以降行方不明だと聞いて仕事が手につかなかったらしいが、根本がどうせ生きてるとかなんとか言ってたらしい。

 久間先生は騙せても群狼を良く知る連中は死体が無いんだから生きてるだろって感じなのかもしれない。


「あとはタイミングね。研究所に強制捜査が入るってタイミングで根本君の手筈で脱出したの」

「研究所に強制捜査ですか?」

「非人道的な研究をしていたとしてね」

「政府に切り捨てられたと?」

「多分それは無理でしょうから、研究所で抱えてる研究各種が欲しかったんじゃないかしら」


 研究。研究かあ。いや、まあ確かにあの研究所はいわゆる総合研究所でゾンビそのものを研究していたというよりはその副産物まで研究していた人もいたな、という事を思い出す。

 雑食性の動物にゾンビ肉を食わせたりして飼育していたアクアリウマーや、ゾンビ動物肉の毒抜きを研究していた食いしん坊、変異結晶コレクターもいたのを思い出す。

 マックスは楽しそうにしていたけど私は全く興味が無かったのでそんなのもあったなあという程度だ。


「根本君の指示でスカベンジャーに依頼が出せるっていうからそこで車を持ってるスカベンジャーを探してたら」

「あの女を見つけたと」


 随分危険というか安易な真似をしたものだと思う。

 というかこんな有名人が外を歩いたら無事で済むとは思えないのだが。よく無事に依頼を出してここまでこれたものだと思う。


「あの女に何か要求されましたか?」

「情報だけど、それは今の研究所のメインの研究の話をしているわね」

「それは?」

「センダイから来たらしいゾンビ化薬、仕様は調整薬となっていたけど」

「ああ、あれかあ」


 センダイの北にある演習場の研究設備から拾ってきたというアレ。小屋妹が反応している。私は軍の連中に顔が見られるとまずいという事で話を聞いたくらいだけど、瞳さんと打ち合ったらしい。

 瞳さんは戦闘技術という面では大振りが過ぎる人だけど、鉄パイプを振り回しているからか膂力というか、破壊力という面では一番派手だ。銃も派手にぶっ放すタイプだし、控えめなのは平常時だけなのかもしれない。


 ちなみにその調整薬もゾンビにならない程度にゾンビになってゾンビの力を手に入れてゾンビを駆逐するというものらしい。

 あれ、と思いながらチラリとつるを見る。つるににっこりと返された。これは言ったらどうなるか分かってるな、のにっこりだ。

 マックスが研究している強化薬とほとんど同じものなんじゃないだろうか。つるが使ったらしいけど確かに運動性能が上がっているような気がしていたのだ。


「もしかしてこちらで相対したのかしら?」


 私が視線を飛ばして自分以外を示すと何か嬉しそうに声を上げてニコニコし始める。


「あー先生? とりあえず、こちらとしてはお二人を安全に確保するためにやらなくちゃいけないことがりましてね」

「あ、はい。えーと」

「とりあえずその車を事故らせて二人の行方を眩ませないといけないんですよ」

「え? この車を? この車を持って行ったりはしないの?」

「車が無いという風に思わせたいんですよね。相手を誘導しやすくなるんで」


 今からリフに戻ってゾンビを轢いてそのへんに突っ込ませればリフに潜伏していると誘導できるだろうか。


「えーと、私の車ではないし、一度天間さんに聞いてみてはどうかしら?」

「テンマって言うんですね、あの女記者。残念ながらそれは無しです。ここで決めます」


 そう言って愛美がミニバンに近寄って車を検める。


「先生、必要なものがあれば持ち出してください」

「え、あ、え? 本当に?」

「ええ。でなければいつまでも追手に追われる生活をしていただくことになりますが」

「そ、そう、ね。はい、わかりました」


 久間先生の顔色が悪い。まあこういったことに直接的に関わったことの無い人だ。暗闘というにはお粗末だが、これくらいの駆け引きはよくあることだと思うけど。


「とりあえずギャレーから水出しちゃって。食料は少しだけ残しておいてー、あと資料は適当に散らしておいて。明らかに時間が無くてとりあえずとるものとって後にしたって状況にしておくと後が楽だから」

「はーい」


 ここで処理するわけではないので車内に、という事らしい。こういうのはマックスでなければ愛美がやってくれる。正直考えることが少ないので助かってる。つるもこういうのはあまり得意じゃないと言っていたし。

 瞳さんなんかは昔、全部跡形もないくらいにバラバラにすればいいと言ってミニガンを持ち出したこともあったはずだ。


「大体いいかな? この位置だといっそ北に行ってヨシオカに向かう途中で事故ったってことにした方がいいかも」

「北に行くんだ」

「逃げるための時間的な猶予が無くなりそうだからね。事故の音を聞きつけて周辺探索している追手の目を掻い潜って拠点に帰るとか面倒じゃない?」

「それはヨシオカに近くてもそうじゃないの? 車両見られたら一発だと思うんだけど」


 愛美とつるが話をしている。

 この話、結局は半自動で車を走らせるなりして事故らせればいいのだけど、仕掛けをしたメンバーを回収するために事故現場に近づかなければならない。そうなると結局音を聞きつけて寄ってくる連中に見つからないように撤退しなければならないわけで。


「私がやる」

「……え、マ?」

「回収地点を遠くにおいておけばいい。事故前なら追手も敵対しようとはしないだろうし、私が逃走痕を残していけばより確実に誘導できる」

「うーん、そうだけどさあ?」

「町での監視続きで暇だったから丁度いい」

「それなら私も一緒に行くよ?」

「ぱっと見車内につるがいないのがバレると面倒になる。こっちを知っているならつるは追手に存在を認識させた方が確実」

「浮いたコマである千聖ちゃんがソロで動けば相手には気づかれないってことか……でも軍は? 知ってる人いるんでしょ? 情報が伝わることとかない?」

「そこはマックスにカバーしてもらう。ムラタのこともあるし隠蔽には応じるはず」


 うんうん言いながら悩んでいる愛美には悪いが、これが一番のはず。

 おろおろしている久間先生には悪いけど、大人しく荷台に転がって動かずにいてもらう必要がある。


「……この時間だと回収に動いているのが見られるとバレる可能性がある。明日以降が確実っていうのは分かってるのよね?」

「当然」

「……わかった。じゃあこの辺で過ごしててくれる? 通信機あるよね?」


 マップと一緒に示したのは以前大天使を連れて行った国道は越えた先の団地。トミヤやナリタと呼ばれる場所だ。


「ちなみにここからイズミの北側の団地まで繋がってるから、大通りに出なければ身を隠せるはず。もしかしたら山越えもあるけど大丈夫そう?」

「余裕」

「さっきの饒舌な千聖ちゃんはどこへ?」

「もうおしまい。それじゃあ」


 さっきまでおろおろしていた先生にも簡単に伝えておかないといけないか。どうもつるとはあんまり相性が良くない、というかあんまり覚えてないみたいだし。


「とりあえずこの二人に従ってください。マックス先生のところまで何事も無く連れて行ってくれるはずですから」

「は、はい、わかりました。……千聖ちゃんは大丈夫なの?」

「はい? ええ、はい。この程度は特に問題ありません」 


 久間先生はマックスのことは信用しているはずなのに私に対しては何となく評価が低いように感じる。これでも結構荒事には慣れているんだけど。

 まあいいか。ひとまず愛美とおおよその時間調整をしつつ、私はリフともヨシオカとも言えない場所へ向けて見慣れぬ車に乗り込むことにした。


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