第10話
目の前のホワイトボードにはこの新川の地図、そして各自が調べてきた情報が書き込まれていった。
車両系はバスにトラック、乗用車数台には所謂ハイブリッド車も含まれている。重機類もトラクター数台にクレーン車1台が大きいか。資材として大きいのは電線に電線管のセット、パイプ類にゴム製品が見つからなかったのはまあいいとしよう。他に調べる場所もまだ残っていることだ。
学校にはキャンプ道具にパイプ椅子、学習用机や椅子もセットだ。雑誌類は焚き付けに使う以外は使い道がないが、本は好事家に売れる、かもしれない。タンスやソファ、ベッドなどの家具に関しても基本売れない。これはコストとの兼ね合いもあるがセンダイ市街地にあるものが既に需要を満たしているとの事。解体する手間を考えるとややマイナスに傾くとの事。
食料は無し。自然にできていた栗や柿等は時期になれば売れるとの事。燃料は薪だが供給がそれなりに太く、自分たちで消費した方がいいらしい。PCなどの電化製品や家電は売れるが出所を探られると面倒なので時期を見て売るべしとの判断。意外とすぐに金にできそうなのが農薬や肥料との事。
「まずまずってところかしら。キャンピングカー売りたくないなあ」
「使えそうなのか?」
「それなりに手を入れる必要あるわね。ディーゼルだからBDF使える。ただインバーターは交換する必要あるし、タイヤも交換する必要あるし。細かいところも手を入れないと。でも多分動くんだよなあ」
「言い方が希望的観測すぎない?」
「運び屋としては今のトラック便利なんだけどなあ」
全員で移動するときは便利だが、問題は維持だろうか。マザーという細胞に何でもかんでも頼るのは良くないが、ファンタジースライムなら何とかなりそうと考えるのは俺が余りにも楽観的過ぎるのだろうか。
「この集落はこんなもん?」
「リーダーの浄水場どうする?」
「動いてないからな。あの浄水場と東にあった汚水処理施設。水利の系統図ってなかったっけ?」
「ある。ちょっと待って」
「南にある山の山頂に配水所があるから、遡って動くようにすればいい、か?」
「めちゃくちゃ手間かかりそう」
「っていうかああいう施設って人いるの? 無人化されてない?」
「無人化されてると思う。ある程度規模の大きいところに監視所設けて。ただ、もし一度でも停止してたら再起動に人力が必要とかはありそう」
それとは別に個人的に気になることがある。俺がそもそも蒸留所を選んだ理由だが、蒸留所をつくった酒造メーカーの消費者がニッカワ川の水の質にほれ込んで出来た蒸留所だ。つまりは取水設備が併設されている可能性が高いのではないかという事だ。確か伏流水を取水していたはずだ。となると、地下水を取水する設備、井戸とポンプがあればなお良いのだが。
「見つけた。……えーと、ニッカワ、ニッカワ……うわあ、駄目だこれ」
「なんで?」
「ナカハラから配水所2カ所挟むんだけど、457号沿いに一つある」
「あー」
「蒸留所の水は使えないか?」
「あ、そうじゃん。そう言えば蒸留所、って水ひいてるの?」
「わざわざ飲んでから蒸留所造るの決めたらしいからな」
「じゃあ蒸留所行こっか。全員で行く?」
「いや、何人か残ってくれ。小屋妹がソーラーパネルついた家知ってるから」
「私、運び屋だけど行商人っぽいことしてるわよ?」
「俺が先。使いそうなもんピックアップしたら好きにしていいから」
「はいはい」
「印東はついてきてくれ。後は自由」
「オーケぃ」
「私、行こっかな」
「私もー」
「じゃあ愛美は私が面倒見ておくね」
「お姉ちゃん!」
偶然ではあるが元群狼での行動となった。小屋妹を残した意味、わかっているだろうか。
「自家消費型だといいな」
「あ、そういうことね」
「お前さっき期待してたじゃねーか」
「あはは」
小屋姉妹のピックアップトラックで国道の合流地点そばまで戻り、蒸留所の専用入り口へ。過去見学コースなどを整備して見学、観光客を迎え入れていた名残か綺麗に整備されていた道だ。しかし、正門は固く閉じられており、助手席に乗る俺がすぐさま対応する。
「ツールあるのー?」
「勿論」
無い。無いがそもそもゲート自体の鍵と、ゲートとポールを鎖で雁字搦めにし南京錠でロックしただけのものを解錠する程度のことに、大した時間もなんなら道具も必要ない。俺には便利な魔法があるのだ。その名の通り、錠を解錠する魔法だ。少しの間ガチャガチャやって、そしてすぐに門を押し開く。
「さっすがー」
「まあな。こんなん皆いくらでもやっただろ」
「それはそう」
とはいえ、ゲートは一つだけではなく。それぞれにアクセスしやすいように複数裏口がある。もう開けるのも面倒だが、近場から行こうか。いや。
「これはスルーしてくれ」
「次は?」
「ここだ」
立て看板には従業員用入口、貨物搬入口と書かれている。こちらであれば各施設へ入るための鍵やマップ類、操作盤があるのではないかという判断だった。門は地面にさすタイプの閂とまたしても鎖を巻かれたゲートに南京錠の組み合わせ。さくっと解錠して車を迎え入れる。
入って両側に3階建てほどの高さの建物があり、確か左手が混和棟、右手が瓶詰棟だったか。おぼろげにマップを思い出す。
「正面に出て左だ。もう一つ」
「はーい。貯蔵庫とかは見て行かないの?」
「あっちは一つ以外は全部貯蔵庫だったんじゃなかったか? 見てきていいぞ」
混和棟の隣、屋根の傾きが片方に大きく傾斜している建物だ。入口を開ける。ここが、そう。たしか単式蒸留器、ポットスチルと呼ばれるタジン鍋を思い出す蒸留器だ。直火より低い温度で複数回の蒸留を経てアルコールを抽出するやり方で作っているのだったか。
正直ここまできれいに残っているとは思わなかった。蒸留という手段は何かと使う機会がある。精製水自体は単純な方法で作れるがまとめて作れる方法があると効率が違う。パッと見て特に欠けはなさそうだなと判断し俺は別の建物へ。入口には印東だけが待っていた。
「残ってるとは思わなかった」
「案外モノだけ持って行って満足してんのかもね」
「ウィスキーなんて寝かしてなんぼだ。定期的に取りに来てると思うか?」
「運ぶために車で来なきゃならない。今はパンデミックから10年経ってる。じゃあ下手人は運び屋だ。でもこっちじゃ見たことない。もしかしたらかなり絞ってるってことも考えられるけど、そういうやつは大抵目をつけられて首輪付けられる」
「酒なんて趣向品横流ししてんだ、金があるやつが囲い込むか?」
「もっと実用的なもん渡せる奴じゃないか? 労働力的な意味でも」
「一歩踏み込めば地獄だな。見つけたら殺していいか?」
「情報だけ絞っておいて。あと汚さないで」
金で囲われるくらいならまだ善良。車の燃料代と維持に少しの贅沢が出来るくらいだ。それなら金もそこそこに別の欲を満たすってやつか。金や資材より命の方が軽いのもこの世界の特徴か。随分世知辛いねえ。
車を貯蔵庫の方に回した中谷里と千聖の声が遠くから聞こえる。
「お前らって酒飲んだことあるのか?」
「ないよ、多分」
「何であんなにはしゃいでんだ?」
「飲んだことないからでしょ」
蒸留棟の隣は仕込棟だ。これまでの建物とは垂直方向に長く、奥にも同じような建物が並んでいる。ここが俺の本命予想の場所だ。
そもそも蒸留所とはウィスキーをつくる場所だが、その材料となるのは大麦だ。大麦をそのまま使う訳ではなく、発芽した状態で使う。発芽した大麦、麦芽は酵素を生成し糖化しやすくなるためだ。
麦芽を乾燥させ不純物を取り除き粉砕して、仕込み用の水を温めたものと共に糖化槽にいれ麦汁と呼ばれる糖化液に変化させる。出来た麦汁を今度は発酵槽に酵母と共に入れて発酵させる。出来た発酵液、
個人的に使うものとして必要なのは糖化槽と発酵槽くらいだ。この糖化槽は発芽した酵素による糖化を促すために温度管理がなされている。それが手動ではなくコンピュータ制御されているというものだ。一言で言えば温度管理できる水槽があれば一先ず問題は無い。また、仕込み水を使う関係上、この建物内でも水は使えるはず。取水設備が生きていれば、だが。
とはいえ残念ながら仕込み棟からはひどい臭いがしている。施設内に残っていた発酵槽の中身の残骸だろうか。一度完全に洗浄する必要があるだろう。こういう場合に汚れなどの不純物を消去する魔法が使える。日常の汚れを落とすのに微妙に使いづらかったが日の目を見ることが出来そうで何よりだ。とはいえここは一旦撤退する。
「今死ぬかと思った」
「扉だけでも開け放しておくか」
その後も隣のサイロやミル棟を経てグレーン醸造棟、蒸留棟へ。少し古めかしい蒸留器などを見つつ、設備そのものは使用に耐えると印東は判断した。とはいえすべては動力源があればの話だ。極論言えば発酵槽だけでも問題ない。コンピュータ管理できれば維持が楽だというだけで、ナノマシン制御用マシンがあればマザーの研究は進められる。
一通り設備をみてから敷地内にあるゲストホールへ立ち寄る。ガラスの自動ドアも多少汚れているだけで壊されたりはしていない。中には軽食スペースがあった名残か、椅子とテーブル、試飲用のボトルやグラスが並んでいた。
「え、全然あるじゃん」
「こんなことあるか?」
この蒸留所というのは酒好き、ウィスキー好きには知名度のある施設だったはずだ。なんならここで人間が暮らしていた名残があるくらいは予想していたのだ。それが全くの手つかずで残っていた。
後から合流した中谷里と千聖の報告も同じようなものだった。
「かなり残ってる」
「最低でも10年もの。これ時価総額いくらになるんだろ」
少しだけ嬉しそうな中谷里には悪いが、俺はこの不自然な状態に強烈な違和感を抱いていた。仕込棟の糖化槽、発酵槽に中身が残っていたことから避難は緊急で行われたものだと推測する。荒らされた様子もないことからこれまでの間出入りはほとんどなかったはずだ。生活のあとが見えなかったからこの蒸留所に所属していた人間は避難しているはずだ。避難は一時的なものだった可能性が高い。電源の供給が止まっているのは当然として一部商品が飾ってあったのも不用心だ。
この蒸留所には20棟を超える貯蔵棟がありその多くに仕込まれたウイスキーが残っていた。こんなにわかりやすいのに、誰も手を付けていないということがあるのか? センダイ人は平和ボケしすぎていないか? いや、そんな人間がわざわざ派閥、覇権争いのために水利を求めようとするか? トウホク最大の都市として人が集まってきている都市でいろんな人間がいると小屋妹は言っていた。
センダイで起こるイベントのうち、ストーリーイベントに含まれるものは少なく、どちらかと言えばフリークエストを数多くこなす場所として、物語の序盤としてはゆっくりとした場所だったはず。
何かがおかしい。俺はこの『ZOMBIE×ZOMBIE』シリーズを知る者として、自分が知っている知識を可能な限り整理した状態で頭の中にいれている。これは魔法を使っているので細かい知識も思い出せる。
この世界、『ZOMBIE×ZOMBIE×ZOMBIE』の世界について、物語について、キャラクターについて、フリークエストやマップについて俺は知っていたことはほぼ完璧な形で思い出せるようになっている。そしてその知識の中にセンダイ市街地以西でクエストがあるマップはこの周辺にはない。
センダイで発生するクエストの多くは市街地と、北部近郊マップに集中している。ストーリーでマツシマとセンダイの地下鉄の終端駅にある動物園、そして具体的な場所は明かされていないがとある基地のマップが存在する。
この基地については既に見当がついているが、生存圏内の基地という事はない。更に言えば目的が胡散臭いのだ。
センダイの北、シカマという土地にある軍の演習場。そこに10年前にいたであろう米軍の実弾訓練をしていた部隊の痕跡を探すというストーリーイベント。このあからさまなイベントは今よりしばらく先でのことだが、センダイでのラストミッションでもある。
先に結論を言ってしまえば、この演習場では実弾訓練の五月蝿さを盾にして変異結晶のナノマシン投与による強化人間を生み出す実験プランが行われていた場所でもある。成功すればよし。失敗しても実弾訓練の的にしてしまえばいいという作戦内容。案の定作戦は失敗。柵に囲まれた演習場内でゾンビが隔離されているという状況になった。演習場での実弾訓練を知っていた行政側による防衛戦力としての要請に沈黙していたが、直談判をしに行った者たちにより周辺へ開放。演習場を中心にゾンビが徘徊する危険地域になった。
主人公に下された命令は現地での実験資料の回収、ゾンビの討伐という名の証拠隠滅。友軍救済とは名ばかりの陰謀の片棒を担ぐことになる。
そして俺が求めるナノマシン用の実験器具の回収をもくろんでいるのもこの演習場のことだ。元々人気のない場所で派手に暴れてもいいのだが、此処で主人公は特異化したゾンビと戦闘を行うことで、主人公の強化フラグが立つ。
小ネタではあるが、此処に出現する警備ゾンビと呼ばれるゾンビは他のゾンビに比べて経験値やドロップするアイテムが美味しいのでボスを倒さずにしばらく狩場にするプレーヤーが多い。というよりはこの後に主人公は異動するが、それが北カントウの地になる。単純に状況が悪く不利な状態で始まるストーリーミッションのために難易度が高く、それに備えるために稼ぎと呼ばれるプレイをするのが常套手段と化しているのだ。
流れとしては、再び襲撃を受ける主人公。これで軍上層部に対して大きな不信感を持つことになる。北カントウからトウキョウまで戻ってきた主人公が接触するのは研究所の助手と呼ばれる研究員。この研究員は元々久間楠ツツジ女史の助手を務めていた人物で、主人公からの情報提供を元にゾンビの変異結晶を用いた強化プランを完成させる人物だ。ゲーム内で名は出ていなかったが、恐らくは二階堂と呼ばれる壮年の男性か、根本と呼ばれていた若手研究員だろう。
強化プランを完成させたと言ったが、恐らく完成させたのは地下で研究を続けていた久間楠女史だろう。申し訳ないが、主人公がアポを取って情報を提供し、ストーリークエストを一つ挟んだ後にその研究を完成させる、なんてことが出来るのは天才と呼ばれた久間楠女史くらいだ。
話を戻そう。この世界について俺はゲーム内で起きたストーリーと主人公を意識して動いてきた。そのはずだった。『ZOMBIE×ZOMBIE』シリーズの世界にあることを理解し、目の前の現実に当てはめることで最適解を求めようとした。この方針に間違えは無いと思う。スカベンジャーから研究所に所属し、此処まで来れた。
風向きが変わったのは襲撃後からだろうか。どうも思考に抜けがあるような気がする。
襲撃の手段に始まり、カワサキのダム、千聖の体調管理、ニッカワについてからも抗体保持者のなれの果てに狂人研究者の屍。最大ともいえるのはセンダイの東西派閥争い。介護施設の遺体に、村落にバスが残っていたこと。そして蒸留所が不自然な形で丸々残っていたこと。
特別なことはしていると言えばしているかもしれないが、主人公たちが辿る道筋は変化していないはずだ。問題はセンダイを中心に、もしくは俺か主人公を中心として、だろうか。明らかに何か起こっているし、何も起こっていない状態になっている。
何を言いたいかといえば、『ZOMBIE×ZOMBIE×ZOMBIE』が始まって以来、俺の知っているセンダイではない状態になっているという話だ。少なくとも水利の問題は出ていなかったし、センダイ市街地にある富裕層や軍幹部の連中は明確に酒類を保有している描写があったにもかかわらず、この地には何も変化が無いことだ。
水利の問題も主人公が関わらなかっただけかもしれないし、酒類も他のどこかから調達しているのかもしれない。一見問題は無い。
俺の懸念は一つだけだ。この世界が【俺の知るゲーム】の世界、なのか。俺の知る、【ゲームの世界】なのかだ。
『ZOMBIE×ZOMBIE×ZOMBIE』はもう始まっている。主人公の風間康史郎は既に歩み始めたのだ。この世界は彼が生きる世界になったのか、彼も生きる世界になったのか、だ。
違いを言えば、ゲームのような状況が起こりえる、というものだ。
先ほども言ったが、今後の予定として俺は軍事演習場で回収すべきものがある。しかしそこは所謂稼ぎマップ。出入りするだけでゾンビがリポップする。こんな現象が起きれば、なるほどこの世界は終わる他ない。マップ内のゾンビが他のマップに現れるかどうかはわからない。しかし明らかに同一のものがそれぞれのマップに存在していることがある。
彼にとってのフラグとなるアイテムは研究資料くらいだ。ナノマシン制御に関する装置は可能な限り頂くつもりではあるが、ゲーム的には主人公がマップ内に到達することで再配置されるかもしれないし、もしなくなっていても問題は無いだろう。
気になるのは以前小屋妹が言っていたアヤシの西側、ここニッカワとアヤシを隔てる何かがいたはずの場所だ。彼女たちは何も言わずに超えてきていたが、そこにはゾンビらしきもの、もしくは人々が敬遠すべき何かがいたはずなのだ。
襲撃者もおかしかった。襲撃の様子はあれど、BDFが使える軽自動車など今までなかったはず。新しく開発された? 自前で改造した? 普通の軽トラックだったとして燃料はどうした。普段使い出来るようなもんじゃないぞ。
ニッカワの介護施設にいた要介護者を残していった? バスがあるのに? 田舎社会でほぼ確実に血縁関係がありそうな要介護者を置いて自家用車で逃げた? よしんば置いて行ったとして、どうしてバスがある? 燃料がなかった? あの近辺を日常的に走っていたはずなのに全く走れないくらい燃料が枯渇していたとでもいうのか?
恐らくだが、ニッカワには何もなかったはずだ。それでも俺が来たからマップになった。配置されていたオブジェクトがリポップした。そっちの方が自然だ。あくまでニッカワに関しては。
そして俺もその事実に今ようやく気付いた。もしそうなら、きっとこの場所も。
ゲストホールを出て周辺設備を探索する。印東には中谷里と千聖に合流させた。
この蒸留所のマップには無いが気になるところがある。未だに見つからない取水設備だ。恐らくどこかにあると思うのだが。
それとは別に川を渡る橋が2カ所あり、国道側からアクセスできるような場所があれば封鎖しておきたいところだ。ゲストホールの前から見える橋から行ける場所に行こうとして何とはなしに見える川を眺めると、取水口の文字が。
駐車場の外周フェンス越しにぽつんとあったそれが俺の目当ての一つでもある、ニッカワ川の畔にある地下水からの取水設備であった。
工場などの施設で電力の供給をするためには、電力会社から配電される高電圧の電力を受け取り施設内へ電力を供給するための高圧受電設備が必要だ。それは当然この蒸留所にも存在するはずだ。
一先ず目当てのものを見つけた俺は後は稼働に必要な高圧受電設備の場所を探そうと入り口までの道を逆行していた。蒸留所の施設内には頭の上に架かっているであろう電線の類が一切なく地中に埋没しているであろうことは理解した。ならば引き込んでいるであろう入口あたりであれば見つかるのではないかと駐車場から入口へ向かう際、何ともなしに見上げた大型のタンクに記されたそれに、思わず声を上げてしまった。
「重油タンク……?」
何に使うのかと考え、そう言えばこの施設はそれなりに古かったことを思い出した。そしてこういった工業施設のボイラーの燃料の定番らしい。俺の後を追ってきていた印東はそう言ってタンクを調査する。燃料回収業者は細々とやっているものか、スカベンジャーがついでにやっているものがごくわずかにいるだけで、BDF業者もその程度なら見逃しているとの事。これは中谷里の言だ。
印東からキュービクル、高圧受電設備のことを聞くが、どうやら基本的に地中から施設内へ引き込んでいるらしい。入口までの間に見つからないのなら裏手を回ってみろと言っていた。
過去トウキョウでの活動では屋上にあった高圧受電設備を操作したことはある。分電盤の操作も同じく。とはいえ俺は素人だ。当時は印東も齧っているくらいで、一度非常用電源の遮断機を操作し忘れて面倒なことになったことを思いだす。
蒸留所の裏手、貨物専用出口から入り貯蔵棟の裏を回っている最中に黒い建屋を発見した。サクッと解錠して中に入ればようやく目的のものを発見した。
「どれ?」
「ちょっとまて」
そうして高圧受電盤というタグに、高電圧というダイヤ型表示に窓付きロッカーを開ければ、計器類にランプ、スイッチやつまみが並んだ操作盤。一先ず確認してみればつまみ類は入に傾いているが、遮断機が下りた状態だ。メインのスイッチが入っていないという事はここには電力は供給されていないことになる。
メインのスイッチを切って遮断機をいくつかあげる。ご丁寧に建物ごとに割り振られているようで俺は一先ず蒸留所への観光客向けの施設であるビジターセンターの分電盤を操作する。
メインのスイッチを入れる。目の前でランプが点灯し、計器の針がくいっと反応する。
「……入った?」
「動いてるみたいだけど……え、ほんとに?」
中谷里も驚いている。それはそうだ。装置を操作するまでこの施設は死んでいたはずなのだ。それはつまり、電力の供給自体は出来ているわけで。
「ビジターセンター見てきてくれるか?」
「了解。あ、通信機ないや」
「それなら俺が行こう。印東呼んできてくれ」
「了解」
中谷里は車を転がして印東と千聖を回収しに行っている間に、俺はビジターセンターへ向かう。ゲストホールが試飲を含めた軽飲食が出来る場所とすれば、ビジターセンターは貯蔵棟一棟を改装した資料館といった場所だ。貯蔵棟の隙間を抜けてビジターセンターにたどり着く。施設内は暗くなっているが、それは別のことが要因だろう。
俺は裏手に回り従業員入口へ。そして施設内にある分電盤を見つけ中を見ればメインのスイッチが落ちていた。すべての遮断機を上げてからメインをあげる。玄関、ホール1,ホール2とあげてゆき、最後に部屋のスイッチを入れる。部屋の明かりがついた。
どうなっているのか。これは明らかにおかしい。何故電力が供給されている。あり得るのか?
電力の供給システムとしてこういうパターンがあるなら俺の不勉強だ。だがそれ以外であればどうだろう。
少し前にゲーム世界について考えたが、この世界のシステムというものが干渉してきている気がする。物語の核となる場所を中心として法則が入れ替わっているかのような違和感を感じているのだ。
まず俺の思考自体が魔法の補助を受けている。記憶や知識を魔法で整理しているからか、自分の知っている事柄に関してはある程度詳細に思い出せる。
センダイで展開されるストーリーで最初に起こるのは高速道路での襲撃、その後はセンダイの西、高速道路のインターチェンジで展開していた軍と合流する場面だ。高速道路が西へ向かう道の下を通る場所があり、人を多めに配しているという事もある。合流後は治療と異動の報告のため市街地を横断することになるため、操作はほとんど無いが、ここから主人公とプレーヤーの世界が広がるのだ。
風間康史郎という主人公を中心にしたセンダイというエリアが更新された、というのであればなんとなく納得できる。これまでは廃工場だったのが、ゲーム的な意味でのマップとして拡張されたという考えだ。
自分でも大分ぶっ飛んだ考えであると思うが、これまでと道理が通らない部分がある。電力が使えるという事が何を意味するのか。
「錦。センダイからここに来るまで障害はなかったって言ってたよな?」
ビジターセンターの玄関で待ち受けた俺は印東に問いかけ、歩き出す。
「何もいなかったね」
「ゾンビや人もか」
「おう」
「事前情報ではゾンビいたとか言ってなかったか?」
「元々48号は散発的にゾンビが山から下りてきてた。山奥のホテルが落ちたんじゃないかって話だったんだけど……。いや、実際ホテルや近くにあった社宅もゾンビだらけだったらしくて、大規模な掃討作戦の計画はあったらしい」
「らしいとは? 掃討は完了したはずなのにってことか?」
「いや、完了報告がなかったらしいんだよね」
「じゃあ失敗か」
「状況を見ればそう。実際山奥だし放っておけばいいっていう意見も分かる。だからこそ今のところ一番西がニシキガオカなわけだし」
ニシキガオカはセンダイで一番西にある集団だ。一応は政府の管理下にある人間の集団がいる場所であり、天文台のある住宅団地だった場所だ。
「あの辺りにちょくちょく発生するゾンビを狩る程度の警備で平和が訪れるのなら、そうするのがいいだろうって話」
「それだけじゃあるまい。山の資源って言うのは今のご時世じゃ無視できない財源だろうに」
「ご察しの通り、山林の資源に土地、水利を含めて悪くない土地だ」
「わざとか」
「多分ね。ゾンビが発生する場所として民間を掣肘しつつ、危険度の低い危険地帯とすることで土地を確保してる可能性がある」
黒い建屋にたどり着く。印東は高圧受電設備のロッカーを流し見て、ある一つのロッカーを開ける。
「あ、あった。スマートメーターじゃないから別にいい、のか?」
「メーターか。これって通信装置ついてたか?」
「ついてない。だから検査員が確認して料金徴収しに来るはず。電気が流れているかどうかはわかる、はずなんだけど……」
このご時世でも電力会社というのは存在する。10年前は過渡期にあったもので、現状は正直分からないが、電力自由化の後、家庭で使われる電気設備をまとめて制御するHEMS機器、ホームエネルギーマネジメントシステムと連携することにより効率的な電力運用が進められてきた。もちろんこれは表向きのシステムで、家庭で使われる電力の使用状況を事細かに把握し、スマートメーターによる測定で生活スタイルを把握、プランの変更やサービスオプションの押し売りが出来てしまうようになる。
電力自由化の後、送配電事業者から小売り事業者を挟むことで様々なサービスが生み出されてきた。電力だけではなく通信料金の割引や警備システムの導入などのオプションがあるのだ。
とはいえ、だ。基本的に各地方に存在する電力会社が圧倒的なシェアを占めており、トウホクはもちろんトウホク電力が一強状態にある。
「トウホク電力ってどうなってるんだ」
「原発再稼働させようとしたりで揉めてる。特にオナガワ」
「海側の連中だろ。で、どうなってるんだ?」
「内部分裂した」
「は?」
「一応未だに争うというか、競う姿勢を見せてるけど、このままなら市街地側にのまれるだろうね」
ゲーム内で対立している様子を見なかったのはこれがあったからなのか? 恐らく海側で原発の停止と再稼働で揉めて、さらに市街地側を引き込むかどうかで揉めて分裂している状態らしい。一応現状でも食料の供給は続いているが、電力に余裕があれば再稼働できる工場も増え生産力の向上、食料自給にも寄与するとかなんとか言いながら揉めているらしいが、そんなにうまくいくか?
「とりあえず、メーターはこのままでも問題ない。というかよく動いたね」
「それは確かに」
「いや、機材的な意味で」
「使い続けるのは危ないか」
「おすすめはしないかな」
印東はいくつかの配電盤を操作して外へ出た。
「取水設備ってどれ?」
「こっちだ。地下水を引き込んでいるらしい」
そうして再びビジターセンター前で待っていた中谷里と千聖と合流して駐車場外周の外、取水設備の分電盤と操作盤が並ぶボックスへ。パチパチと印東が操作し、計器の針が動き出す。
「これで大丈夫だと思う」
「助かる」
「でもさ、これで決まったんじゃない?」
「何が?」
「この施設もあんまり長く使えないかもねって話」
まあそれはそうだろう。実際電力の送電受電を監視するシステムがメーターだけな訳がない。メーターはあくまで量る機械であって、オンオフを判定するものではないのだ。
「どうする? 俺が監視しとく?」
「ある程度でいい。最悪こっちで処理する」
「いいの? 追い返したりは、しないか」
「でも殺してもお代わり来るだけじゃない? 最悪軍も来るでしょ?」
「来るとしたら相当先だと思うがな」
ピンポイントでこの工場の電力の供給だけをカットするというのは難しいだろうと判断している。こちらに様子を見るために軍や電力会社から来たとしてもごくわずかだろう。それを返さなければいいだけだ。
徐々に人が帰らなくなれば、センダイの西側の評判を補強することになるし、いざ軍が出ようとすればそのあたりを欲しがる連中と争うことになる。道中の危険を排除しながら進み、ニッカワを制したとして、蒸留所を再稼働できるかといえばそれは原材料的な理由でノーだろう。
かといって蒸留所で何をしているかを探るような連中はよほど酔狂だ。機密を守れるようなら蒸留酒を融通した方がいいが、それが権力者への貢物として使われた場合、相当面倒なことになりかねない。相手はそれなりの無茶をしてもこちらを確保しようとするだろう。金の生る木を逃さないから権力や力を有しているのだから。
さて、現状から探れる未来を予想しよう。電力会社は廃工場だったこの場への電力の供給に気付くだろう。報告が上がり、何をしているのか様子を見ることになるだろう。軍ではなく運び屋やそういった仕事を請け負う人間を用意しているはずだ。仮にその人間を取り立て屋としたとき、取り立て屋をこちらに派遣するまで恐らく早くて一月程度を予想する。単純に丸一月の電力の使用状況から何をしているのか予想を立てるはずだ。
工場がフル稼働していればそれは蒸留酒をつくる以外は無いはずだが、こちらはそれをするつもりもそんな人手もない。つまりは過去のデータから比較しても何か特定の設備しか使っていないことになる。では何をしているか、その判断をするための一月だ。
派遣された人員を捕まえて魔法で暗示や催眠をかけてもいい。品物を握らせて黙らせるというのは無しだ。絶対に漏れるし、こちらに更に面倒なものを引き寄せる結果にしかならない。
仮に川魚を持たせたらどうなるか。ただの養殖設備として利用しているというのはアリかもしれない。金になるには時間がかかる作業ではある。ただ技術面で探られると面倒だ。また別の人間を招く結果になる。
使用設備は仕込み棟と取水設備。蒸留棟は一時的に使うかもしれないがそこまでではない。
「クラフトビールでも作るか?」
「何でそんなもん、あ、いや、確かに海側の工場が地味に動いてるんだよね」
「うっそだろ、ビールって今流通に乗ってんの?」
「県内産の大麦があるのは確か。見たことある」
じゃあここでも生産は出来るだろうが、この狭い国でどれだけの量が出来るのか。
「あとはホップと酵母か」
「ほんとに作るの?」
「時間はかかるけどここで増やすことはできるぞ」
「でも工場動かしちゃったじゃん」
「ワインとかは?」
「できなくはない、のか? 蒸留させればブランデーも作れる、っていうかそういやラインナップにアップルブランデーってなかったっけ?」
ブランデーといえばコニャックだが、あれは産地や品種の指定された葡萄によってつくられた白ワインを蒸留したものでブランデーの一種である。アップルブランデーはカルヴァドスが有名であるが、これはある地域でのみ生産されたアップルブランデーのみに使用を許されたものであるため、ブランデー、もしくはアップルブランデーという名前になっている。因みに使用される素材には林檎のみならず洋梨も使用されている。
「果物の入手難度どうなってる?」
「意外と悪くないけど、県内は梨、和梨か柿がメインかなあ。数は少ないけど葡萄と苺もあったはず」
中谷里の報告。こういった情報は基本小屋妹の範疇かと思ったが皆随分と勉強しているようだ。
「ニッカワには何かないの?」
「栗は見つけた」
「私は柿」
「他にも何か有りそうじゃね?」
「一度戻るか。錦、此処の電源は」
「つけっぱなしでも変わらないと思う。なんなら小屋姉妹呼べば?」
「そうするか」
「一応家使えるようにしたんだけどなー」
そう言っていた小屋妹も稼働状態にある工場を見て目を見開き、そのまま残っていたウィスキー樽に口をあんぐりと開け、仕込み棟から漂う激臭に全てを閉じた。鼻までつまんで匂いを防いでいる。千聖と小屋姉は早い段階で気付いたからか既にビジターセンターに戻っている。
「お酒有るのかあ。アレ売ってもいいの?」
「売れんのか? 探られるのも面倒なんだが」
「樽の状態だと間違いなく足がつくね。ここが疑われるのは時間の問題かな?」
「手を付けない方がいいか?」
「うーん……じゃあこういうのはどう?」
小屋妹の考えは防衛圏内にある隠れ家に可能な限りを運び込む作戦だった。
「襲撃されるだろ」
「別に良くない? 襲撃させる用の拠点作ってさ。前も二人にやったんでしょ? 偽装工作」
ふむ。どうなるか考えてみる。市内にある拠点に酒樽を貯め荒稼ぎする。いずれ拠点に溜め込んでいるのもバレるだろう。で、襲撃を受ける。
「襲撃は?」
「どうにかしてくれるんでしょ? というかそう簡単にバレるかな?」
「俺たち以外で信用できる筋に卸すことが出来ると?」
「難しいでしょうね。どこかから必ず漏れるし、最後にはこちらの仕業だとバレるでしょ」
まあ急に襲撃、という事にはならないだろう。先ほど印東と話したが品物と人材の両取りをすればいいだけなのだから。
ああ、いや、そういうことか。
「襲撃前に交渉が挟まるだろうからそれから用意しても問題ないって考えか。相手の襲撃は成功させて、俺たちは証拠を消す、と」
「できるでしょ?」
「まあ出来るが」
出来るがそれには魔法を使う必要がある。襲撃を最小限の被害で凌ぐこと。遺体を偽装すること。誰にも知られないように脱出すること。
取引相手としての小屋姉妹を潰せば後は得体のしれない存在が蒸留所で活動しているという事実だけが残る。酒も手に入らない。手に入れるためには自力で運ばせる必要があるが、その得体の知れない組織の人間が蒸留所に来る人間を無差別に害しているとなれば、どうなるか。危険度高めに判定されるなら町に来ないように電力の供給をカットはしないと思う。
あーいっそ一度酒を横流しさせてこちらに人を呼んで分かりやすくバラ撒くとかする? 昔見たモニュメントを自分が作る側になりそうだと考えると気が滅入るな。
「なあ、町に小悪党とかいないか?」
「何で小悪党? ああ、そいつらで実験するの?」
「高値で吹っ掛ける。取り戻すなら好事家な富裕層への転売だ。それが軌道に乗ればそいつらが勝手に間に挟まりたがるだろ」
「でもどうやったって抜け駆けしようとするやつらは出てくるはずよ?」
「お前たちにか?」
「こっちに直接来るより私の方に来るのが先かなあ」
「それでさっきの策か。複数カ所あればなおそれっぽくなると思うが」
「ね? いい感じじゃない? あ、私達の愛車亡くならない?」
「高確率で無くなると思う」
脱出するときに足を潰せば確実だと思うだろうからな。で、相手の把握していない車両で逃げるというのはある意味当然の対処であり、魔法で隠蔽すれば尚良い。
「キャンピングカーかぁ」
「一度きりならBDF屋騙せるんじゃないか? 少なくとも次の拠点につくまでの間は」
「できるだろうけど、その後繋がらないでしょ?」
やはり燃料問題か。引っ越し用キャンピングカーと活動用電気自動車はやはり必要になるか。
ビジターセンターは見学者などの受付となるメインホールに展示資料と窓際のベンチなどがあり、奥にはまさかのシアターホールがあった。置かれていたソファーを繋げて大きなベッドをつくっていたのは小屋姉と中谷里だ。
「他の二人は?」
「ゲストホールあさり中」
「酒持ってこられても困るぞ」
「お湯だけ持って来るって」
彼女たちが持ってきていた非常食を並べていた。食器類もキャンプ道具などを利用し持ってきているようで見慣れないパウチのような容器に入っている。
「何を湯煎するんだ?」
「なんだろ? これ何?」
「レーション。何味かは知らない」
「だって」
小屋姉と中谷里って意思疎通してんのか? ふわふわなやり取りはなんという毒気を抜かれる。
「お酒どうするって?」
「どうするべきだと思う?」
「これだけあるんだから何かに利用したいよね」
「飲む?」
「別にいいけどこんなに要らないでしょ」
「一生飲む分になるかもしれない」
「BDFと1:1交換できるかな?」
「あの親父なら即行チクりそうだけどね。うちらを潰して酒の利権掴ませて。損しないじゃん。酒飲まなければ」
「じゃあやっぱ売りかな?」
「いっそビール工場に売りに行くか?」
「はい?」
「酒類の利権を侵さず海側の工場に伝手を持つって方法。情報の洩れ方は時間がかかるものになるはず」
「でも酒類の利権だよ? 小売り通さずに自分で市街地上層部に売り込んだ方が両属で上手く立ち回れるんじゃない?」
「街側が直接取りに来ねーか? ビール工場っていう海側の伝手切れそうだが」
「そうなると慎重に動くから時間は稼げる、かあ」
「普通に売るのはダメなの?」
「街側の動きであれば情報は得られやすいから、いつ裏切るのかとかいつ襲撃が来るのかとかがわかるくらいかなあ」
「ビール工場まで距離あるけどそもそも持ち込めるの?」
「軍の検問があれば賄賂で通れるはず」
「問題は情報が漏れることだよなあ」
なかなかまとまらない。話は錦と千聖が合流してからも続くがなかなか結論が出ない。
俺としては後回しにしてもいい話だ。とりあえず今晩は仕込み棟で使われている発酵槽を洗浄し、蒸留所入り口に人避け、それから国道沿いから工場が見える範囲に結界という名の壁をつくる。魔法による偽装だが遮音と古臭い姿を見せる幻影を仕掛ける。空からの目は少し様子見。光学センサー、温度センサー、遮音などを傘にして複合的重ねて様子を見たい。
今日もやることがいっぱいあるが、一つずつクリアする必要がある。話しながらも食事を終えた者から眠りにつく。シアターホールでは空調もあり暖かなぬくもりの中、仲間が次々横になるのを見届けて俺は瞼を降ろした。
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