第十三話 魔王軍地下牢の憂鬱
「へっへっへ、こんな地下牢に一人で何の用――ま、魔王様がこんな所にいらっしゃるとは」
俺は椅子から立ち上がる看守を手で制した。
「ヤツは?」
「へぇ、例の場所に」
男が頭を低くして答える。目の部分だけくり抜いた頭巾をかぶり、はち切れんばかりの肉体に革のブーツとブーメランパンツ。どこに出しても恥ずかしくない、怪しさ百点満点の男だ。
一部の者にしか踏み入ることが許されない、魔王城の地下深く。重要犯罪者専用の牢獄へ続く道は暗く、冷え切っていた。
「こちらが地下牢です」
看守は鍵束から二本の鍵を取り出すと同時に差し込んで回し、階下への扉を開けた。どこから取り出したのかは考えないことにした。石段を降りる男の、左右に揺れるケツがぷりぷりと眩しかった。
「なんというか、凄い格好だな……」
とつい漏れ出た感想に、看守は照れて頭をかいた。魔王城の地下牢に、これほど相応しい格好はないだろう。うん、一般的な魔王城ってなんでこんな露出狂を看守にしてるの?
「へえ、あっしは真面目で頑丈なのが取り柄なだけの、そのへんにいる男だったんです。そこが評価されて、看守のお仕事を頂きました。ですが看守の仕事なんて正直良く分らねぇですから、とりあえず形から入ろうかと」
看守は言いながら迷うこともなく一本の鍵を選び、次の扉を開けた。
「拷問器具の使い方も一通り勉強しましたけど、なんせ魔王城が平和すぎてだーれも牢屋になんて入ってこないもんで。暇すぎるんで体を鍛えて、それでも時間が余るんで看守っぽい振る舞いを、と笑い方なんかも練習して」
「ほう、見事だ」
この看守、なるほど真面目過ぎる。
隠し通路とかあったら嫌だし……と近年新設されたこの地下牢だったが、たしかに開店閉業状態だ。基本的には現場の下士官判断による肉体的制裁で罰が下ってお終いだし(これは改善点だろう)、上層部の常習犯(これは改善を諦めた)は特製の懲罰房に送られるからだ。
「ヘッヘッヘ、もったいないお言葉で。しかし囚人番号が小さい順というのはよくありませんぜ、入ってきた順番や時期を推察されてしまいやす」
「……議題に上げておこう」
適材適所は間違いないが、この人材をここで使い潰すのはもったいな過ぎる気がしてきたな……。俺は配置転換を真剣に考えた。
「おい、起きろ。囚人番号0001号!」
独房の床に横たわっていた囚人は、看守の言葉に耳をぴくぴく動かして反応すると面倒くさそうに寝返りをうち――俺の顔を見るなり鉄格子に飛びつくと、ふかふかの手でがしゃがしゃと揺らした。
「まっ、魔王様、いいところに来たね! さあ、早く僕をここから出すんだ!!」
栄えある魔王城新生地下牢の入居者第一号は、栄えある魔王軍大幹部、七天七星の第五星『魔導』アリオトその人であった。この事実、魔王軍の恥部過ぎるな、隠滅したら怒られるかな……。
アリオトのような何かがいる、との通報を受けて大変遺憾ながら仕事を切り上げ急行した現場にうずくまっていたのは、確かにアリオトのような何かだった。こいつの実験室から爆発音がして、まーたいつものかと確認に向かった兵士が焼け跡の中から発見したらしい。本人かどうか確認が取れなかったので、懲罰房ではなく監獄に送られたそうだ。
アリオトは外見だけなら背の低い、普通の人間の少女である。その強大な魔力や鋭利すぎる知性とはほど遠い、触れれば壊れてしまいそうな弱々しい姿。そのまま人間領に放り込んでも、違和感なく混入できるだろう。あれ、混入じゃないな、埋没、溶け込む……やっぱ混入でいいか。
むしろ魔王軍にあってこそ異物感が凄いんだけど、七天七星はうち三人が見目の良い少女だからなあ。ただでさえタリタがいるのに、これで将軍の中身も女子だったら過半数だぞ。おかげで魔王様ロリコン説がまことしやかに囁かれ、年端も行かぬ娘を差し出すものまで現れる始末。いや、違うんだよ。そうだけどそうじゃねーんだよ。最近は彼女らに憧れて知性派を目指す若い子も増え大変結構なんだが、悪影響が出る前にこいつだけは地下牢に隔離しておくべきかもしれない。
そう、アリオトの姿形は標準的な人間族だ。こんな耳やらしっぽやらのついた、獣人のような外見ではなかったはずだ。これはよく似た別人の可能性が――あ、でもこの自分がやらかしたにも関わらず罪の意識が欠片もない自信まみれの顔は本人だな。俺は天を仰いだ。
「ど、どうしたんだい? ほら、早くしなよ」
魔王軍魔術技術省長官にして自称天才美少女発明家のアリオトさんのことなので、正直獣耳が生えるくらい日常茶飯事なのだが、下手な変装で魔王城に侵入してきた他勢力の間者という線もなくはない。安全のため、嫌疑が晴れるまでは牢に閉じ込めておこうという判断は正解だし、実際のところはそこで頭を冷やせという担当者の熱いメッセージだろう。
そしてこれは多分、俺の責任だ。
先日酔っ払って寝てしまったのを安全保障的な意味で問題視され、魔王様の酒の許容量を把握していないとまずい、との理由をでっち上げられ昨日また飲み会に強制参加させられたのだ。
そこでまたうっかり「最近は書類仕事が忙しすぎて猫の手も借りたい」などと口走ってしまったため、その表現を面白がられてしまった。「猫の手、猫の手ねぇ」と繰り返すアリオトに、あそこで釘を差しておくべきだったのだ。
「一体何をやってるんだ、お前は」
「こ、これはなんというか、その……」
「……猫の手にしたかったのか?」
その言葉に、アリオトは気まずそうに俯いた。
「あ、あの言葉が、その、興味深いなって……それで、最初はみや子さんを魔王様のとこに連れて行こうと思ったんだけど、それより僕の手が猫の手になったら面白いかなってひらめいて……」
ひらめくなや。
「お前、まさかみや子さんの手を……」
みや子さんとは魔王城の食料庫を荒らし回って捕まり、そのまま鍋にされるところをかわいそう、魔王様の人でなし、なんだか変な力を感じるので解剖していい? と七天七星の女性陣からの嘆願によって救われ(鍋にしようとしていたのは男性陣だ)、罪を償うため食料庫でネズミを捕る仕事を与えられたが特にやる気もなく毎日中庭の長椅子で日なたぼっこしたり魔王城の立入禁止区域を我が物顔で闊歩したりしてる、ただの元野良猫である。
「そ、そんなことしてないよ!」
「どうだか」
「本当だよ! みや子さんの生体データを僕の体表に照射展開するだけの、ごく普通の変身魔術だよ!」
「我が軍の技術省長官様が、そんな初歩的な魔術を失敗なさると?」
アリオトは言葉に詰まると、観念したかのように白状した。
「ち、ちょっとね、猫の手になる実験に、猫の手を借りたら楽しいんじゃないかって思ってね。その、みや子さんにもご協力願ったんだ……と言ってもだね! ただ魔道具のスイッチをポンと叩いてオンにするだけだったんだよ!」
アリオトがまくしたてる。
「だから倫理規定を守れっていってるだろ!」
「書類は出したよ! 報酬の魚も用意してあったんだ!」
「おい、それ俺が昨日持ち込んだ刺し身じゃないだろうな」
アリオトは露骨に視線をそらした。
「そ、そもそも魚を生で食べるなんてどうかしてるよ。科学の徒たるこの僕に、奇妙な蛮習を押し付けないでくれないかな」
その『科学』とかいう単語、奇妙で野蛮なうちの国から持ってきたんだけどな。
「ちょっと手が毛に覆われて、爪が少し伸びるだけのはずだったんだよ! どうして耳や尻尾が生えたのか、見当もつかないね。というわけで原因を検討するために研究室に戻らないといけないんだ、早く出したまえ! こんな何も無い所、さ、三時間もいたら頭がおかしくなってしまう!」
「七天七星アリオト、職権乱用と倫理規程違反により三日間の独房入りと一ヶ月の清掃奉仕の罰を与える」
「そんな! ありえないよ! この人でなし!!」
魔族ですから。
アリオトは真に絶望したようで、口を大きく開けプルプルと涙目で震えている。
「清掃するのはお前の部屋だ、いい加減片付けろ。どうせ一ヶ月くらいかかるだろ」
「何を言ってるんだい! 天啓とは混沌から生まれるもの、あの猥雑さが僕には必要なんだ。メグレズの部屋を見なよ、あんな書類の角まで揃えてるような部屋、人間が住むとこじゃないよ!!」
「魔族ですから」
俺と看守の影に隠れていたメグレズが踵を鳴らして進み出た。アリオトは鼻水も流し始めた。
「ち、ちっ違うんだよメグレズ! 今のは言葉のあやというか、その……」
「書類整理は魔法で全自動です、なかなか便利ですよ。アリオトさんの提出書類は抜けがあったり関係ないメモが挟まっていたりと文官に大変不評ですから、いい加減憶えてください。今度時間を作りましょう」
「じゃあそれも追加で」
「専断だ! 人治主義だ!」
独裁だから、魔族だから。
「メグレズ、急用か?」
「はい。宝物庫が荒らされた、という報告が入りました。扉の鍵は魔王様がお持ちなので、一緒に向かっていただけないかと」
「宝物庫が? でも警報は鳴ってないぞ、どうなってるんだ」
俺が
「ふっふっふ、どうやらお困りのようだね。結界も警報も、扉の鍵も無効化されたなんてただ事じゃない。こういった事件はまさに、この僕の科学的思考が必要だろうね!」
「アリオト……」
俺はその目を真っ直ぐに見据えた。
「さすがに宝物庫はまずいぞ」
「酷いよ!」
アリオトは髪を振り乱して抗議した。
「僕なら証拠を残すようなヘマはしない!!」
「侵入未遂で併合罪にしとくか」
「例え! 想像! 仮定の話だよ!!」
予備罪か……。
「そういえば、当のみや子さんは?」
「ボタンを押した姿を見たのが最後だね」
「昨夜、お魚を差し上げてからはお見かけしていませんね」
メグレズ、お前もか!!
「……まあいい、宝物庫に向かおう。お前は天井のシミについてのレポートでも書いてろ」
◇◇◇◇ ◇◇◇◇
結界付きの転移門を抜け、俺たちは宝物庫へと足を踏み入れた。
部屋の隅に雑然と置いてある、小さな彫像の台座に手を当てる。魔力を送り込んで認証を済ませると、入退室のログを引き出した。
「……確かに見覚えのない転移記録があるな、しかも定期的にだ。完全に油断してたが、これは大問題だぞ……」
ログは残っているが警告は出てない、つまり合法的な入室扱いだ。俺は思わず顔をしかめた。
「メグレズは収納品をリストと突き合わせてくれ」
メグレズが情報魔法を展開する。俺は魔道具の精査を続けた。
うーん、もっと詳細なログを取るようにするべきだったか? 小さくまとめて美術品の中に隠す、というコンセプト自体見直すべきかもなあ。
この小さい結界箱、基本的なコンセプトは俺が出したし、バックドアが仕込まれてないかのチェックもしたが、実作はアリオトだ。魔術構造は理解しているつもりだが、改ざん調査となると自信はない。
ここの結界も扉の認証機構も、全部アリオトの仕事だ。本人が主張する通り一番必要な存在なんだが……今牢屋から出すのはあいつにとって良くないだろう。反省の機会を失い、成長のチャンスを逃してしまう。あとなんか悔しいし。
だが、初動の遅れは一番の致命傷だしなあ……よし、折衷案だ。一時間、いや三十分粘って駄目なら地下牢に行こう。
今回の侵入が発覚したのは、結界の挙動がおかしかったからだ。小さな穴が空いている、と風の流れを感じたメラク先生から通報があったのだ。さすがというか、どういう感覚してるのというか……先生がたまたま宝物庫に足を運んでなかったら、当分は発覚しなかっただろう。
俺はうんうん唸りながら必死で開発時の記憶を掘り起こし、回路の流れを追った。ええと、ここが……なるほど、確かにおかしいな。ごく小さな迂回路が後付けされている。このセキュリティを抜けて改造を施すなんて、かなりの手腕だ。
さて、俺に分かりそうなのはここまでだろう。宝物庫をメグレズに任せ、俺は聞き込みを開始した。
「みや子? そう言えば今日は中庭におらんかったのう」
「あのクソ猫か!? あのヤロウ俺が育ててた砂肝咥えてどっかいきやがった! 魔王様も見つけたら捕まえといてくれよ、お礼なしでは済まさねえ」
「みや子さんですか? なるほど……くんくん、いつもはこの道を散歩してるはずですが、匂いが薄い。今日は通ってないみたいですね、何かあったのでしょうか」
捜査はあっという間に暗礁に乗り上げた。素直にアリオトに聞くかあ……腹立たしいが、捜査が優先第一だ。
「宝物庫の方は?」
「リストの品は全て揃っていました。すり替え等の追加調査は必要かと思います」
途中の階段でメグレズと合流し、地下牢へ向かう。
鉄格子の向こうでは、反省感ゼロの囚人がドヤ顔で待ち構えていた。
「ふっふっふ、やはりこの僕の力が必要だったようだね!」
「残念ながらな」
「実にいいね。現場から離れた場所で、情報だけで推理する。ええと、何て名前だっけ? 以前魔王様が言ってた……」
「『座敷牢探偵』だな」
「そうそう、座敷牢探て――いや、もっと別の言葉じゃなかったかい? 椅子がどうとか……」
「いや、座敷牢探偵だ。それよりこの結界装置なんだが」
と魔道具を手渡そうとして、俺は気付いてしまった。
「……危なかった、証拠を消されるところだった」
伸ばしかけた手を、寸前で跳ね上げる。
「これに細工をしたのは、お前だな」
「なっなっ、何を言ってるんだい!?」
「魔王様もお気づきでしたか」
「メグレズもか? ああ、それで地下牢に」
みや子さんには何かを感じる、とアリオトは以前より主張していた。俺は助命嘆願の口実だと思っていたが、こいつはその何かを本当に見つけやがったんだ。いや、彼女を解剖して何らかの魔術的な改造を施し、それを何かと言い張っていたのかもしれない。
目立たないみや子を試作品にして宝物庫のセキュリティを突破。何度も出入りしていたのは実験だろう。そしてデータを積み重ね、いよいよ本番だ。俺の与太話がいい迷彩になると思ったんだろうな。みや子の魔術的な力を自分に移植し、宝物庫に侵入する。見事な計画だ。
だが、みや子の抵抗に遭い、実験は思わぬ結果を生んだ。みや子の魔術的特徴のみならず、身体的な特徴までが移植されてしまったのだ。さすがに隠しきれぬと踏んだこいつは、記憶が無い、などと飲みすぎた酔っぱらいのような言い訳で乗り切ろうとした。そして……実験以降、みや子さんの姿を見たものはいない。彼女はもう――。
「魔王様がお気づきなのです、もはや観念するしか無いのではないのですか?」
メグレズが冷え切った声で最後通告する。
そうだぞ。おらっ、さっさと吐けアリオト!
「みや子さん?」
…………ん?
その言葉に逃げ切れぬと悟ったのか、アリオトの身体からするりとみや子さんが抜け出し、牢の床へと音もなく降り立った。
「みや子さんには特別な力を感じる、とアリオトさんはかねてより主張していました。今なら私にも分かります。彼女は私と同じく、情報魔法の適正がある。そして、それを隠すだけの能力も」
メグレズは静かに語りだした。
「アリオトさんの実験を見て、みや子さんは考えました。これなら、回路に細工をすればアリオトさんの身体を乗っ取れるのではないか、と」
「『先っちょだけ、先っちょだけだから!』と事あるごとに解剖を迫って来たアリオトさんに対してなら、罪悪感が湧かなかったのかもしれません。先っちょだけなら改造してもいいと思ったのでしょう。そして投射実験に介入し、彼女の精神へ入り込みます」
「アリオトさんに気付かれぬよう、乗っ取りは時間をかけてじっくりと行う予定だったんでしょうね。事態が落ち着くまでは、大人しく過ごします。アリオトさんの人格が変わってしまってもいつものこと、自己の不在と結びつける人はいないでしょう。長い時間をかけ、アリオトさん本人すら気づかないうちに入れ替わる。見事な計画でした――魔王様のお力を侮った以外は」
「結界装置の調査も担当するのは自分です。問題なしと結論付けても、疑う人間はいないはずでした。ですが、魔王様が装置の細工を発見された。そして魔王城の結界装置を全て調査した結果、手を加えられたものが幾つも見つかりました。それらは、北側に集中していた」
「そうそう、不自然な入退室が記録され始めたのは、アリオトさんが行方不明になっていた時期からです。完全に彼女の不在を狙っていますね、確かにまたと無い機会だったでしょう」
「アリオトさんも、あとでお話しましょうね」
「さて、これらの結界に片手も通らないような小さい穴を空け、誰にどのような利益があるのでしょうか?」
「魔王城には結界が張り巡らされていますから、ネズミ一匹入り込む余地はありません。みや子さんは、焦りました。命を助けてもらい、餌まで与えてもらっているのに、これでは何のお返しもできない。ただの穀潰しです。以前の獲物は北の森ででも狩ってきたのでしょう? しかし、それも限界がある」
「ですから結界の魔道具に細工をし、小さなネズミくらいなら入れるように穴を開けた。与えられた仕事を全うしよう、そう考えたのですね」
「そもそもがおかしかったのです。魔王城には結界のおかげで、ネズミが入り込む隙間すらありません。勿論、猫も」
「ただの野良猫が魔王城にふらっと迷い込んで食料庫を荒らす、その想定がありえなかったのです」
「みや子さんにはネズミを取りやすいよう、魔王様から自由な移動の権利を与えられていました。宝物庫に入ることも容易かったでしょう、そして一番目立たない結界装置で実験を進めた」
「実験は順調に進み――しかしメラク老というきまぐれにより全てが露見してしまった」
「アリオトさんの実験に介入したのは、あれだけの魔力を秘めた体があればもっと魔王様に貢献できると思ったからですね? 確かに、アリオトさんの身体に健全な精神が宿れば――いえ、これはいいでしょう」
「誠に残念です。魔王様のお役に立ちたい、その意気や大変結構。しかし、手段を間違えましたね……」
みや子さんは力なくうなだれている。その姿はまるで判決を待つ罪人のようだった。
罪状は出揃った。介錯は、俺の役目だろう。
「みや子、お前の食料庫特別警備員の任を解任する」
「魔王様っ!!」
猫耳の取れたアリオトがみや子さんを抱き上げて叫んだ。
「合わせて、情報部への配属を命じる。とりあえずはタリタの下につき、仕事を学べ」
俺は言葉を続けた。
「今回はご苦労だったな。魔王城のセキュリティの穴、よく指摘してくれた。こんな力があるのに遊ばせておくのは勿体ない、お前にはこれからもっと働いてもらうぞ」
「ま、魔王様……」
俺はきびすを返すと、地下牢を後にした。
全く、こんな立て込んでる時期におかしな事件を起こさないで欲しいものだ。おかげで仕事の予定が滅茶苦茶じゃないか、これじゃ今日も残業だよ。こちとら猫の手も借りたいほど忙しいんだ、有能な人材を遊ばせておく余裕なんて無い。せいぜいこき使ってやるさ。
翌日、情報部に新たな人員が配属された。見事な毛並みを誇る、とても可愛らしい新人だったという。あと半裸のマッチョ。
さらに翌日、メラク先生が奉納した宝物庫の大変ありがたい木神像に爪研ぎの跡が発見され、魔王軍幹部女性陣から救命嘆願書が提出された。
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