第24話 メアリー視点――私の婚約者――
私はメアリー・ラクソニール。
ノーリス・ラクソニール伯爵の長女で、バトラウス王国の第三王子マルクス様に仕える侍女をしています。
まだ幼いマルクス様はとても可愛くて優しい、私の大切な王子様。
でも、何か秘密があるようで、何故か十歳離れた私が婚約者となりました。
そんなマルクス様と私の出会いは、五年ほど前。あれはまだマルクス様が生まれて三か月くらいたった頃だと覚えています。
ようやく首も座り、安心して抱っこができるようになった頃、国王陛下に私は呼び出されました。
「おおメアリー、よく来てくれた。この子が我が息子マルクスじゃ。どうだ、抱いてみんか」
そう言われても困るというか、もし何かあったらどんな罰を受けることかとヒヤヒヤします。
けれど、何故か私は殿下と目が合ってしまい、ジッと見つめられていました。
かわいい。
もう、その破壊力は抜群。私は一瞬で心を奪われ、恐る恐る手を伸ばし……。
「あら、メアリー。そんなに怖がっては、かえって危ないわ。大丈夫だから、優しく抱っこしてあげて」
「はい、ソフィア様」
どうやら私の怖がっている感情が読まれていたようで、
でも、そのあと丁寧に教えてもらい、私は無事にマルクス様を抱っこすることができました。
「私のことをずっと見つめて、すっごく可愛いです」
「そうね、たぶんわかっているのではないかしら」
私がマルクス様を初めて抱っこした感想を口にすると、ソフィア様は不思議なことを言いました。
わかっているって、どういうことでしょう。
そう思っていると、国王陛下と王妃様からまさかの発言が飛び出しました。
「うむ、どうやらマルクスも懐いておる様子。では、決まりだな」
「はい?」
何が決まりなのでしょう……。
「ふふふ、メアリーちゃん。あなたにはマルちゃんの婚約者になってもらうわ」
「えええええーっ」
でも、そんな私の驚きなど気にする様子もなく、王妃様であるソフィア様はこう言いました。
「あら、今からあなた好みの旦那様に育てられるのよ。全く知らない子と婚約させられるより、よっぽど意義があるのではないかしら」
もう、その一言で決まりです。
こうして私はその日のうちにマルクス様の婚約者として、内定致しました。
私も貴族の令嬢なので、政略結婚くらいの覚悟は決めていましたが、まさか十歳年下の生まれたばかりの殿下とは、誰が想像できるでしょう。
この後は三年ほど侍女としての教育を受け、学園を卒業する十五歳を過ぎた頃、正式に採用されることになりました。
そして、殿下が十歳を迎えた時、婚約者として公表されるようです。
でも、その頃には私、二十歳です。大丈夫なのでしょうか……。
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